《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

文字の大きさ
19 / 61
第一章 田中悠斗

村に着いたけど④

しおりを挟む
「……カッコいいねぇ。実にカッコいいじゃねえか、お兄ちゃん」
 ――ガキからお兄ちゃんに格上げか。

「こういうの嫌いじゃない。嫌いじゃないよ、お兄ちゃん」
 舐めまわすような怪しげな視線を向けてくる。
 
 ――気持ち悪い。

「知ってるだろうが……」

 ――知りません。
 
「俺たち密猟者は、主に獣人の牙や爪を売って生活してんだよ。健康な獣人は奴隷として売っている。特にメスの獣人は奴隷市場で高く売れるわけよ」

 ――だから何でしょう?

「仲間にしてやるよ。金儲けできるぞ」

 ――え?

「さっき一緒にいた女も、お前の奴隷にするといい」

 ――悪くない、悪くないが。
 ――逆に奴隷にされそう。

「俺たちは、あの獣人のガキが欲しい。他はオマケだ」

 ――ウミャウを?

「ふざけんな、変な髭! ウミャウは絶対渡さねえ!」

 僕の声が森に響くけど、正直、めっちゃビビってる。髭男の次の一撃で死ぬかもしれない。

「……変な……?」

 髭男の動きが止まってる?逃げるなら今のうちかな?
 
「俺の……髭が……変?」

 髭男の目が一瞬キラッと光り、顔がみるみる赤くなる。

「変な髭だと!? このガキ、テメェ、俺の自慢の髭を侮辱しやがったな!」 

 完全にキレてる! 斧を握る手がブルブル震えてるけど、動きが止まってる。チャンスだ!

「悠斗、今だ! 逃げれるよ!」
 葵の声が茂みの奥から響いた。
 ウミャウを背負った葵が、木々の間を縫うように駆けていくのが見える。
 
 髭男は髭への侮辱で完全にブチ切れ、他の野盗たちは「ボス、落ち着けって!」と慌てて宥めていた。

 ――今だ、逃げるなら今しかない!

「へっ、髭男! その髭、雑草みたいでダセェぞ! 獣人狩る前に床屋行け!」

 挑発を重ねる。自分でも命知らずだと思う。

「ガアアッ! ぶっ潰すッ!!」

 怒号と共に、髭男が斧を振り回した。
 だが怒りで動きが雑になり、誤って味方の野盗を一人吹き飛ばす。

「ぎゃっ!? ボス、落ち着けって!」
「黙れッ! まずはこのクソガキの口を潰す!」

 狂気の目が僕を捉える。
 体が勝手に震えた――怖い。でも、止まれない。

 髭男が突進してくる。
 盾を構える――ガキィン!
 衝撃で腕が痺れ、HPが10減って25。

 ――速い。こいつ、まだ速い!

 もう一撃。ガキン! HP15。
 さらにガガキン! HP5。
 目の前がチカチカして、耳鳴りがする。次で終わりだ。

 ――もっと……速く動けたら……!
 ――素早さも2倍になればいいのに……

『スキル【2倍】を発動しました。素早さが2倍になります』

 ――は?

 世界が一瞬、音を失った。
 風が止まり、炎の粉が宙で静止して見える。
 体が、軽い。視界が、広がる。

「――おおおおおおおおおおおおおお!!」

 髭男の斧がゆっくりと見える。
 その刃をヒョイとかわし、足元を抜けて滑り込む。
 斧が枝に引っかかり、髭男が「ぐっ!?」と叫んだ。
 他の野盗の網も木に絡まって動きが鈍る。

「ちっ、茂みに逃げやがった!」

 構わず走る。
 茂みをジグザグに駆け抜け、木の根を踏んで宙を飛ぶ。
 素早さ40――身体が風みたいに軽い。
 髭男たちの動きが、スローモーションだ。

 ビシッ!
 小石が飛んできて、追ってきた野盗の額に命中!
 「ぐあっ!」と悲鳴。――ウミャウだ!

「ユート、がんばって!」

 茂みの奥から小さな声。
 ウミャウを背負った葵が、川の方へ走りながら叫ぶ。
「悠斗、こっち! 川の方へ!」 

 さらにウミャウの投げた石が、別の野盗の足を弾く。
 ……投擲すごい、スキルでもあるのかな?

「くそっ……!」

 髭男が舌打ちし、突進を止めた。
 その隙に、僕は葵の声の方へ全力で走り出す。
 燃えた枝を踏み越え、最後の茂みを突き抜けた――

「バカ、遅いっ!」

 振り返った葵が、僕の手を掴んで強く引いた。
 その瞬間、何かが弾けるように心臓が跳ねた。
 息が上がっているのに、不思議と笑えてくる。

 葵の掌が温かい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
 2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。  死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。  命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。  自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...