《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

文字の大きさ
47 / 61
第一章 田中悠斗

帰り道

しおりを挟む
 ベルフォードへの帰路、僕らは疲れ果てながらも、高揚感に包まれていた。ワイバーンを倒した達成感と、仲間たちの笑顔が、葵の不在による心の隙間を少しだけ埋めてくれる。
  
 夕暮れの山道は、戦いの熱を洗い流すように涼しい風が吹き抜ける。
 遠くの地平線では太陽が沈みかけ、赤と橙のグラデーションが空を染めていた。
 
 あの地獄のような火山洞窟が嘘みたいだ。
 硫黄の匂いももう薄れ、空気がどこか甘く感じる。
 肩に担いだ袋の中では、ドラゴンの鱗が金属のようにカチャカチャと鳴っていた。
 重い。でも、心地いい重さだ。

「ユート、今回の冒険も最高だったニャ!」  

 ウミャウが僕の左手を握りながら、尻尾をピョンピョン揺らして歩く。
 全然疲れてない……いつもの猫らしい軽快な動きに、この子の体力ゲージどうなってるんだと疑問が湧く。

「ヒョウ! サーラも楽しかったヒョウ! 次はもっと強いの倒すヒョウ!」

 サーラが後ろから僕の背中にスリスリしながら言う。
 ……いや、ほんと、いつからそんなキャラになったんだよ。
 森でのウミャウとの遊びが、彼女の野生(?)を呼び覚ましたとしか思えない。
 前はもっとクールなツン豹だったのに、今じゃ完全に陽キャ豹だ。

「ドラゴンの鱗と爪と心臓……いくらになるでしょう? うふふふふ」

 エリルが魔獣図鑑をしまいながら、上機嫌に笑っている。
 自分の腕を僕の右手に絡ませながら、柔らかい胸を僕の腕に押し付けてくる。いや、困るうう。それ反則。
「エ、エリル、前見て歩こう! 危ないって!」
「わかります? 当ててますよ……うふふふふ」
 酔ってるの? ねえ、酔ってるの??

「ふふ、悠斗の活躍、部下たちに見せたかったな……でも、私だけの悠斗でいいよね……ボソッ」
 セレナが鎧の肩を僕に押しつけながら囁く。鎧、硬いって! 顔に当たると痛いんだから! 

「グスッ……悠斗さん、わたしも、もっと活躍したかった……」  

 リネットが後ろでぽつりと呟いた。
 杖を抱え、肩を落としてトボトボ歩く姿がいじらしい。
 彼女のMPが尽きたせいで後半は少し出番が減ったけど――
 熱風防御と回復魔法がなかったら、全滅してたかもしれない。
 僕は振り返って、笑いながら声をかけた。

「リネット、あれだけの魔法を使ってくれたんだ。助かったよ。本当にありがとうな」

 リネットの顔がパッと明るくなり、涙で潤んだ瞳がキラキラと輝いた。
 「悠斗さん……! うぅ、嬉しいですっ!」
 
 そのまま抱きついてこようとするから、慌てて手を振って制止する。
「ま、待ってリネット! 歩きづらいから! 本気で!」
「えー……グスッ……」

 ウミャウがその様子を見てニヤニヤ笑う。
「ヒョウ! 次は誰がユートに抱きつくヒョウ?」
「順番待ちやめろー!!」

 皆の笑い声が夕暮れの山に響き渡る。

「それにしても、みんな、ほんとよくやったよ。」  

 燃えるような夕日が山の稜線を包み、金色の光が仲間たちの髪を照らした。
 戦いの熱とは違う、心の温かさが胸に広がる。

 その光の中で――ふと、葵の背中を思い出す。
 いつも冷静で、僕より前を歩いていたあの姿。
 彼女がいなくなっても、こうして歩き続けられているのは、きっと仲間たちがいるからだ。
 
 ……葵、どうだ? 僕はやったぞ!

 心の中で小さく呟いた。
 誰にも聞こえないように。
 風が優しく頬を撫で、遠くで鳥の声が響いた。
 その音がまるで、葵の返事のように思えた。

 ――ベルフォードまで、もう少しだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい

広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」 「え?」 「は?」 「いせかい……?」 異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。 ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。 そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!? 異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。 時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。 目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』 半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。 そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。 伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。 信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。 少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。 ==== ※お気に入り、感想がありましたら励みになります ※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。 ※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります ※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...