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4,初ライブ

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岡田みゆき
「すげえじゃん。」地元の雑誌に表紙になったオセロットのメンバーたちを見るクラスメイトの長内君。リアクションが古いように周りには思えた。「少なくとも地元のヒーローだね」にこやかな目の高井亜由美。彼女は盛り上がりさえすればなんでもよいのだ。「これで中学から続くみゆあやコンビもひとまず休止かな」間ができた。大親友の明石綾子とのコンビをみゆあやと呼んではやし立てているクラスメイトがたくさんいるのだ。私はいいけど綾子が赤くなるのを楽しむ人もいるのがムッとする。「大丈夫だよ、私はずっと登校し続けるから」「あっ、そうなんだ」それにしても私が右3番目でいいんだろうか。「とにかくインフルエンサーの俺に任せとけ」自称インフルエンサーである飯沢君が言った。彼の影響力は学年内にとどまるのが難点だ。

 谷口副社長 
本拠地とでもいうべきこぢんまりした新築の劇場で小山が安心した声で言う。「だんだん形にはなってきたな」形にはなってきた。しかしこれでいいんだろうか。俺はタレントの売り出しとか全くわからない。金は十分にかけたつもりなのだが古参芸能事務所なら1で済むところを5の予算かけていないだろうか。俺たちは本当にアイドルグループの運営として正しいのか?誰かもっと詳しい人をスタッフに加えるべきではなかったのか?

 初ライブの日。メンバー採用から3か月。「どうだい、このセットリスト」してやった感を出している小山。メンバーも頑張ったし作曲家も頑張ったおかげでいい曲が集まったが既存グループの曲を3曲使わせてもらう。「観客の期待値は高い方がいいのかな、低い方がいいのかな」「高くて悪いことは無いんじゃないかな」

 
岡田みゆき
十和子さんの即興ダンスはすごい。よくこんなアイデアがわいてくるものだ。体が疲れを知らないように見えた。私も運動部だったからタフなつもりだったんだけどもうついていけなくなってしまった。

 ライブ終了。やり切った後息が詰まりそうになった。私の芸能人生がどんな終わり方をするにせよこの日を忘れることは無いのだろう。私の歌唱パート。声は出せていたのだろうか。なんだか変な声になっている感じだ。でも、ほぼ満員のステージ会場の歓声を忘れることもないのだろう。中学時代のバレー部の友達も来ていた。私の歌にびっくりした顔をしていた。私自身も信じられない。打ち合わせの後、メンバーと祝勝会と称して食事。小山さんの経営している地方外食チェーン。あまりにも疲れていたけど何とか食べることができた。みんな楽しそう。というよりまだ力が残っていることに驚く。終了後私はうずくまってしまって立ち上がることができなかったのに。驚いたことにふみちゃんは次の日も学校の部活動があるらしい。鈴岡さんはアニメキャラの小動物の物まねをする。ちゃんと「みゆき―」とかアドリブで言っている。十八番なのだろうか。

小山社長(オセロットプロデューサー)
アイドルグループとして出発したものの、何か仕掛けが欲しい。そういうのは先に考えとけよと谷口は言う。「まあ仕方がない」そう俺は言った。アイドルグループとして成り立つかどうかもあやふやだったのだ。なんとか目星だけはついてきた。裏方の力というよりはメンバーたちの力というところが大きい。なんだか泣けてきたところもある。メンバーの中もよさそうだし怪我でもしなければこのメンバーで何年かできる見通しが出てきた。 

 それにしても岡田みゆきはすごい成長力だ。歌唱力って最初見た、いや聞いただけではわからないもんだな。谷口はフィッシュアンドチップスをだらだら食っている。それ自体がダメなわけでもないしフィッシュ(略)が体に悪い食品だというわけでもない。問題のあるのは何も考えずに食べているということなのだ。メンバー一人一人が倍速のスピードで成長しているというのに副社長がだらだらやっているということが問題なのだ。副社長が何のコンセプトも持たずにただ売れたらいいという見通ししかないのが問題なのだ。谷口は今度はコーラを飲み始めた。コーラが体に(略)。「今後は外食チェーンでのポイントを握手会等に利用できるようにしようと思う。」俺は腕組みする。「それはいいがメンバーに何か事案があったら響くぞ」谷口がすきを突かれたような表情になる。「その時はその時だよ」さらに考えるとCDの売り上げにも響くのではないかと思ったので再考することにした。それにしてもアイドル事業は拡大させるべきなのか、今のスタッフ人員ではこれ以上のメンバーは捌ききれないのではないか、早めに大手事務所と連携しないと大変だ。
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