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20、引き継がれる思い
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岡田みゆき 王太子妃を演じている西村さんとレストランで一緒に食べた。西村さんはもともと池崎さんと舞台でジャンヌ・ダルクをやる予定があったことをおっしゃった。いろいろ他の予定があってその企画は流れてしまったけれども小規模な舞台で1日だけ上映した。それは処刑前のジャンヌと看守の会話劇だったそうだ。その時はうれしかったが本当はジャンヌの戦場における奮闘を演じたかったということだった。西村さんは本当は言うつもりがなかったことを不意に言ってしまったように見えた。「私ね、どうしてもジャンヌを演じたかったの。それは池崎もわかっていたの。でもまあ、いろいろあって場所とかね、期間とかね。実力はあってもホームグラウンドのある劇団じゃなかったから。できなくてね。でも準備してくれた時はうれしかったの」西村さんは私の手をつかんで「頼んだよ、ジャンヌ」とだけ言った。
演出助手の坂内
池崎さんがとめどもなくこれからのプランを述べている。「同級生の負傷をめぐるミステリーに岡田さんを出したいな」それもいいが今作に集中してほしいものだ。だが、こういうネタからどういう気が生まれるかわからないのも事実。「あの女優でいるじゃない、大屋彩さん。あの人も運動部にいたしアクション出来るんじゃないかな。声もいいし岡田さんと契約できなかったら」移り気なところもある人なのだ。「わが劇団は大屋さんとはつながりがまったくありませんしねえ」
3日目公演終了後、公爵役の正野が役者たちの食事会を開いた。「どうも、アランソン公爵です」拍手。「オルレアン大勝利、おっ。イギリスの方ごめんなさい。」「首相退陣」「意味不明なヤジが出たところで次に移りたいと思います。」「アイネバーフォーゴットジョナサン」「ヤジはそろそろ罰金をもらおうかと」「罰金?バー○ヤンで食事会が開けるだけ払おうか」ファミレスでの食事会で出された食事が安いものだっとことがネタになっている。岡野が何気なく言った。「岡田さん、ハタ坊って呼んでいいですか」酒の力が何かの引き金を引いたようだ。超えてはいけない一線をふいと踏み外してしまうからこの男はいいチャンスをもらえないのだろうな。
やばいぞ、という雰囲気が一同のあいだに出た。ちょっと手洗いにとばかり誰かが立ち上がった。少し間があった後「ふふふ」と岡田さんの笑い。いい表情だ。「ふふふ、ふはっ、ふははは。どうぞー」このハタ坊というのは岡田さんのいないところであだ名として使われていた。控室でも旗を持っている岡田さん。私服でも旗を持っていた岡田さん。記者会見、テレビ出演、特集番組でも旗を側に置いていた岡田さん。「応援団の女の子」というニックネームが使われていたが東京公演の前日から安井あたりが「ハタ坊さん」と言い出した。でも安井はそれなりに役になりきろうと努力している岡田さんに敬意は払っていると思う、あくまで俺の想像だが。それにしても今の顔撮っておきたかったな。鎧を着た岡田さんのことを陰で「ラピュセリオン」などと戦闘ロボットのような綽名をつけていた奴もいた。もちろん奴も彼女が嫌いなわけじゃなく、少しでも愛着を表現しようとしているのだろうが傷つけてはいけないのも事実。タルボットの副官を演じた藤野さんが単発ドラマに岡田さんが出た時に印象に残ったことを語った。「本当に出演者の家族じゃないかと思うぐらいしっくりきていて。その時、誰なんだろうって思ってさ。アイドルグループのメンバーで、本職の役者でなかったと知って驚いたよ」真剣な目をしている岡田さん。感動しているようだ。「私、あの時何が何だかわからない状況で、周りのほとんどが初めてあった人ばかりで。バレーボールで言うとボールの投げ方も知らない感じだったんです」「バレーはよく知らないけど。見たらあの時演技経験もゼロだったんだね。すごいよ」「いろんなスタッフの方に助けてもらいました」「MHKのディレクターもほめてたよ」「そうでしたか」いちいち目を輝かせるのでもっといろいろ褒めたくなるがこのぐらいにしておこう。「よっ、ラプンツェル。」「ラ・ピュセルです!」ベタだが定番になりそうだ。「岡田さん、『金環蝕』に出ていたんですか」正野が言う。『金環蝕』といっても山本薩夫監督の名作ではなく、リメイク作だった。といってもリメイクと言っていいのか、なぜか逃亡者とカプリコン1を混ぜたような展開になるトンデモ作品だった。正野はあの映画に若手議員の役で出ていた。神谷議員を焚きつけて彼が丸め込まれた後は同志10人以上で離党して新党を結成する役回りだった。現実的に考えて神谷抜きでビジョンも国対も資金面もうまくいくはずがないが世の中何がどうなるかわかったもんじゃないからな。きれいな女性議員がいたしあの人が鍵になるかもしれない。「岡田さん、出てたの?」「出てましたよ。でも正野さんと絡みはなかったし。髪型も違ってましたから」「どの役だったかな」安井が悩む。「ほう。俺も出てたよ。名無しだけど検事役で」藤野さんが言った。「あ、私も名前がない役です」「だけど、重要な場面だったじゃない」「あ、気づいてくれましたか」岡田さんの万人を幸せにしそうな笑顔。自分ではわからないが俺は複雑な表情をしていたと思う。
演出助手の坂内
池崎さんがとめどもなくこれからのプランを述べている。「同級生の負傷をめぐるミステリーに岡田さんを出したいな」それもいいが今作に集中してほしいものだ。だが、こういうネタからどういう気が生まれるかわからないのも事実。「あの女優でいるじゃない、大屋彩さん。あの人も運動部にいたしアクション出来るんじゃないかな。声もいいし岡田さんと契約できなかったら」移り気なところもある人なのだ。「わが劇団は大屋さんとはつながりがまったくありませんしねえ」
3日目公演終了後、公爵役の正野が役者たちの食事会を開いた。「どうも、アランソン公爵です」拍手。「オルレアン大勝利、おっ。イギリスの方ごめんなさい。」「首相退陣」「意味不明なヤジが出たところで次に移りたいと思います。」「アイネバーフォーゴットジョナサン」「ヤジはそろそろ罰金をもらおうかと」「罰金?バー○ヤンで食事会が開けるだけ払おうか」ファミレスでの食事会で出された食事が安いものだっとことがネタになっている。岡野が何気なく言った。「岡田さん、ハタ坊って呼んでいいですか」酒の力が何かの引き金を引いたようだ。超えてはいけない一線をふいと踏み外してしまうからこの男はいいチャンスをもらえないのだろうな。
やばいぞ、という雰囲気が一同のあいだに出た。ちょっと手洗いにとばかり誰かが立ち上がった。少し間があった後「ふふふ」と岡田さんの笑い。いい表情だ。「ふふふ、ふはっ、ふははは。どうぞー」このハタ坊というのは岡田さんのいないところであだ名として使われていた。控室でも旗を持っている岡田さん。私服でも旗を持っていた岡田さん。記者会見、テレビ出演、特集番組でも旗を側に置いていた岡田さん。「応援団の女の子」というニックネームが使われていたが東京公演の前日から安井あたりが「ハタ坊さん」と言い出した。でも安井はそれなりに役になりきろうと努力している岡田さんに敬意は払っていると思う、あくまで俺の想像だが。それにしても今の顔撮っておきたかったな。鎧を着た岡田さんのことを陰で「ラピュセリオン」などと戦闘ロボットのような綽名をつけていた奴もいた。もちろん奴も彼女が嫌いなわけじゃなく、少しでも愛着を表現しようとしているのだろうが傷つけてはいけないのも事実。タルボットの副官を演じた藤野さんが単発ドラマに岡田さんが出た時に印象に残ったことを語った。「本当に出演者の家族じゃないかと思うぐらいしっくりきていて。その時、誰なんだろうって思ってさ。アイドルグループのメンバーで、本職の役者でなかったと知って驚いたよ」真剣な目をしている岡田さん。感動しているようだ。「私、あの時何が何だかわからない状況で、周りのほとんどが初めてあった人ばかりで。バレーボールで言うとボールの投げ方も知らない感じだったんです」「バレーはよく知らないけど。見たらあの時演技経験もゼロだったんだね。すごいよ」「いろんなスタッフの方に助けてもらいました」「MHKのディレクターもほめてたよ」「そうでしたか」いちいち目を輝かせるのでもっといろいろ褒めたくなるがこのぐらいにしておこう。「よっ、ラプンツェル。」「ラ・ピュセルです!」ベタだが定番になりそうだ。「岡田さん、『金環蝕』に出ていたんですか」正野が言う。『金環蝕』といっても山本薩夫監督の名作ではなく、リメイク作だった。といってもリメイクと言っていいのか、なぜか逃亡者とカプリコン1を混ぜたような展開になるトンデモ作品だった。正野はあの映画に若手議員の役で出ていた。神谷議員を焚きつけて彼が丸め込まれた後は同志10人以上で離党して新党を結成する役回りだった。現実的に考えて神谷抜きでビジョンも国対も資金面もうまくいくはずがないが世の中何がどうなるかわかったもんじゃないからな。きれいな女性議員がいたしあの人が鍵になるかもしれない。「岡田さん、出てたの?」「出てましたよ。でも正野さんと絡みはなかったし。髪型も違ってましたから」「どの役だったかな」安井が悩む。「ほう。俺も出てたよ。名無しだけど検事役で」藤野さんが言った。「あ、私も名前がない役です」「だけど、重要な場面だったじゃない」「あ、気づいてくれましたか」岡田さんの万人を幸せにしそうな笑顔。自分ではわからないが俺は複雑な表情をしていたと思う。
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