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19、公演初日
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大阪公演 初日公演
「東京と違うなあ」正野さんが廊下でぼやく。
トゥーレル砦のセットが恐ろしく良くできている。演出家先生がダメだししなくなった。「下手をするとアトラクション施設だな」ケチのつけ方も無茶苦茶になった。「どうだ?これを遊園地に売り込むとかさ」下らねえというつぶやき(多分中岡さんだと思う)に反応しない池崎さん。集中している。演出家としては一線級だが俳優としては三級だと評される池崎さんは砦のセットを叩いたり、よじ登ろうとする。「ゆかり、スタントやってくれないか」西村さんが砦のセットに登ろうとする。無茶してる。「ラ・ピュセル。俺もファンになりそうだぜ」安井君、こいつは俺の大学の後輩の役者。
大阪初日は無事にすぎた。無事と言っていいのか。2人ぐらい疲労困憊状態になる。それでも役者たちはレストランに食事に出かけた。1週間続く大阪公演。今更だがこの舞台に出演している役者たちはネームバリューよりも舞台俳優としての能力を重視した顔ぶれになっているが安井だけはあまり経験を積んでいない感じだ。ドローン役の佐々井は若手でドラマにも準主演役でいろいろ出ているクラスの俳優だ。「岡田ジャンヌだったらコンパーニェで捕まらなそうですね」「どういう意味ですか」半笑いで岡田さんが言う。少しうれしそうだ。「いや、勢いでパリも攻略して、北仏完全制覇。早すぎたダンケルク。もう明治維新の西郷状態ですよ。そのあとは戦場にかける橋の斎藤状態」正野さんが横槍を入れる「ちょっと、女の子だよ」どっちのことだろうか。「いいんですよ。」それにしてもこの時はダンケルク、どういう状態だったんだろ。「捕まっても脱出するかも」「またー。でも・・・」嫌がっているのか喜んでいるのか、よくわからない。「脱出しても土地勘ありますかね」「そこは天使に教えてもらってさ」妙な爆笑が起きる。岡田さんが笑いをこらえているのがおかしい。「オセロットのメンバーの子、劇場に来てたね」「わかりましたか」「なかなかいい表情する子だったよ。岡田さんが梯子から落ちた時にびっくりしてた。」「フランスの歴史を知らないんですよ。この物語もフィクションだと思っているみたいです」「現実感がないからね」
「フィクションに徹した方がいいのかもな」安井が言う。「思ったんだけどさ、フランス軍が国土を回復したらジャンヌはイギリス侵攻を主張したんだろうか。」考え込む岡田さん。「ちょい、学校の授業じゃないんだぞ」考えている岡田さんは面白い。でも、そんな状況でも天使は出てくるのかな。「彼女は悩むと思いますがイングランドには攻め込まないと思います」異論がないわけではないがよくできました、と言いたくなった。
「あっ、タバコ吸ってる人はもっと遠くへ」この後カラオケ大会があるそうだ。岡田さんも参加するらしいがマネージャーの他に事務所の人が参加するようなので多分大丈夫だろう。俺は音痴なのでこのあと定食屋でかつ丼を食べる。何でもいいから自作のヒントになりそうなものを探す。
3日目の公演。彼女、岡田さんの調子が上がってきた。今まではアクションはよかったがせりふ回しがそれほど良くない感じがしていた(失礼な表現だが)。オルレアン攻城の時仏軍部隊が勝手に動いてジャンヌが激高しかけているシーンがうまくなった。神がどうこうというより作戦的に全軍が統一されていないと駄目なのだと諭すシーン。どこから来たのかもわからない少女の行動としては何でそんなことを知っているのか、不自然極まりないのだが部隊司令官としては理にかなっている。今までは結構てにをはを間違えているのではないかと思ったが俺も間違えている可能性はあるので確認できなかった。今日は神がかり的なところをうまく表現している。いきり立ったところと穏やかなところの両立が良く出ている。自分なりに咀嚼しているのだろうなと思った。
それにしてもこの舞台、謎のキャラクターが多すぎる。ビザンツ帝国の軍人とかね。
僕は吉永隆彦。高校3年。岡田みゆきのファンをしているけどここまで俳優業に乗り出すとは思ってもみなかった。
俺もここで力を入れないと一生後悔すると思い、試験シーズンだというのに活動に邁進している。友人の笹山は別メンバーのファンだが意見が会うことは多い。藤沢オタというのは岡田さんを応援していることが多い(個人の感想)。正直岡田みゆきの役者活動には不安もあった。それは彼女がドジだと思ってたからだ。バレー部出身というのは知ってたけどMCも結構ミスってたし、でもそこから盛り上がるのが好きなんだけど。ツッコミの藤沢、スルーの篠井。横道にそれたが単発ドラマから人気に火が付くとは思わなかった。俺自身、絶賛書き込みをしていたのにかかわらず。自然発生的な盛り上がりにびっくりした。そのあと単発ドラマの仕事が続き、連続ドラマ初リス主演、映画出演、そしてこの舞台。このあとには水泳部員たちがライフセーバーを補助する訓練に挑んだ映画「シーフロッグス」主演が控えている。群像劇なのに主演と打つのはいかがなものかと思ったがまあ、これでよいと思う。この後にもドラマが続きそうだがライブは減るんだろうな。教室でみゆきの話を布教していたら「どうせ知らないスポーツ選手とくっつくんだろ」というようなことをクラスメイトが言ったので頭にきた。いいか、岡田みゆきはお前が驚くほど光り輝いて頑張るから見てろ。
「東京と違うなあ」正野さんが廊下でぼやく。
トゥーレル砦のセットが恐ろしく良くできている。演出家先生がダメだししなくなった。「下手をするとアトラクション施設だな」ケチのつけ方も無茶苦茶になった。「どうだ?これを遊園地に売り込むとかさ」下らねえというつぶやき(多分中岡さんだと思う)に反応しない池崎さん。集中している。演出家としては一線級だが俳優としては三級だと評される池崎さんは砦のセットを叩いたり、よじ登ろうとする。「ゆかり、スタントやってくれないか」西村さんが砦のセットに登ろうとする。無茶してる。「ラ・ピュセル。俺もファンになりそうだぜ」安井君、こいつは俺の大学の後輩の役者。
大阪初日は無事にすぎた。無事と言っていいのか。2人ぐらい疲労困憊状態になる。それでも役者たちはレストランに食事に出かけた。1週間続く大阪公演。今更だがこの舞台に出演している役者たちはネームバリューよりも舞台俳優としての能力を重視した顔ぶれになっているが安井だけはあまり経験を積んでいない感じだ。ドローン役の佐々井は若手でドラマにも準主演役でいろいろ出ているクラスの俳優だ。「岡田ジャンヌだったらコンパーニェで捕まらなそうですね」「どういう意味ですか」半笑いで岡田さんが言う。少しうれしそうだ。「いや、勢いでパリも攻略して、北仏完全制覇。早すぎたダンケルク。もう明治維新の西郷状態ですよ。そのあとは戦場にかける橋の斎藤状態」正野さんが横槍を入れる「ちょっと、女の子だよ」どっちのことだろうか。「いいんですよ。」それにしてもこの時はダンケルク、どういう状態だったんだろ。「捕まっても脱出するかも」「またー。でも・・・」嫌がっているのか喜んでいるのか、よくわからない。「脱出しても土地勘ありますかね」「そこは天使に教えてもらってさ」妙な爆笑が起きる。岡田さんが笑いをこらえているのがおかしい。「オセロットのメンバーの子、劇場に来てたね」「わかりましたか」「なかなかいい表情する子だったよ。岡田さんが梯子から落ちた時にびっくりしてた。」「フランスの歴史を知らないんですよ。この物語もフィクションだと思っているみたいです」「現実感がないからね」
「フィクションに徹した方がいいのかもな」安井が言う。「思ったんだけどさ、フランス軍が国土を回復したらジャンヌはイギリス侵攻を主張したんだろうか。」考え込む岡田さん。「ちょい、学校の授業じゃないんだぞ」考えている岡田さんは面白い。でも、そんな状況でも天使は出てくるのかな。「彼女は悩むと思いますがイングランドには攻め込まないと思います」異論がないわけではないがよくできました、と言いたくなった。
「あっ、タバコ吸ってる人はもっと遠くへ」この後カラオケ大会があるそうだ。岡田さんも参加するらしいがマネージャーの他に事務所の人が参加するようなので多分大丈夫だろう。俺は音痴なのでこのあと定食屋でかつ丼を食べる。何でもいいから自作のヒントになりそうなものを探す。
3日目の公演。彼女、岡田さんの調子が上がってきた。今まではアクションはよかったがせりふ回しがそれほど良くない感じがしていた(失礼な表現だが)。オルレアン攻城の時仏軍部隊が勝手に動いてジャンヌが激高しかけているシーンがうまくなった。神がどうこうというより作戦的に全軍が統一されていないと駄目なのだと諭すシーン。どこから来たのかもわからない少女の行動としては何でそんなことを知っているのか、不自然極まりないのだが部隊司令官としては理にかなっている。今までは結構てにをはを間違えているのではないかと思ったが俺も間違えている可能性はあるので確認できなかった。今日は神がかり的なところをうまく表現している。いきり立ったところと穏やかなところの両立が良く出ている。自分なりに咀嚼しているのだろうなと思った。
それにしてもこの舞台、謎のキャラクターが多すぎる。ビザンツ帝国の軍人とかね。
僕は吉永隆彦。高校3年。岡田みゆきのファンをしているけどここまで俳優業に乗り出すとは思ってもみなかった。
俺もここで力を入れないと一生後悔すると思い、試験シーズンだというのに活動に邁進している。友人の笹山は別メンバーのファンだが意見が会うことは多い。藤沢オタというのは岡田さんを応援していることが多い(個人の感想)。正直岡田みゆきの役者活動には不安もあった。それは彼女がドジだと思ってたからだ。バレー部出身というのは知ってたけどMCも結構ミスってたし、でもそこから盛り上がるのが好きなんだけど。ツッコミの藤沢、スルーの篠井。横道にそれたが単発ドラマから人気に火が付くとは思わなかった。俺自身、絶賛書き込みをしていたのにかかわらず。自然発生的な盛り上がりにびっくりした。そのあと単発ドラマの仕事が続き、連続ドラマ初リス主演、映画出演、そしてこの舞台。このあとには水泳部員たちがライフセーバーを補助する訓練に挑んだ映画「シーフロッグス」主演が控えている。群像劇なのに主演と打つのはいかがなものかと思ったがまあ、これでよいと思う。この後にもドラマが続きそうだがライブは減るんだろうな。教室でみゆきの話を布教していたら「どうせ知らないスポーツ選手とくっつくんだろ」というようなことをクラスメイトが言ったので頭にきた。いいか、岡田みゆきはお前が驚くほど光り輝いて頑張るから見てろ。
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