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26、須田ふみ子の事情

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私は須田ふみ子。オセロットの創立メンバーである。おふみって一部では呼ばれているけど私はこの愛称が好きではない。でも応援してくれているんだからそれに乗っかかるのも悪くはない。みゆきちゃんのことを私はミユーって呼んだりすると彼女は優しく答えてくれる。これがライブ開始の風物詩みたいになった。私の無駄な動きの多いダンス。一部では評価が高いけどでも本物のダンサーから見るとまがい物なんだろう。というよりまがい物だ。どこに行くのか予測不能なので滅茶苦茶ダンスなどという人もいる。もっと私のことをだれでもいいから誉めてほしい。私のファンって少し奥ゆかしいのよ。自分で言うのも変の極みだとは思うんだけど。自慢するわけじゃないけど私のファンって日本のみならず中国とかタイ、シンガポール、フィンランド、ノルウェーにまでいるみたいなの。ローカルアイドルグループにしてはいろんなところにわたっていると思う。でもこれは決して私の実績じゃない。フォロワーの多い外国のタレントが私に注目してくれたからなのね。それはうれしい事ではあるが私としては自分で少しずつ開拓していくことが目的だった。自分なりに自分の目標を少しずつ達成していくことが自分の夢だったの。みゆきちゃんが予測不能な売れ方、本人ですらこういう役者として自分の場所を作り出せると予感していたんだろうか、多分していなかったと思うけど。普通の人ならアップアップになりそうなところをみゆきちゃんは何とかやってきている。とても信じられない。彼女は生まれついてのタレントなのだろうかと思った。でも私はこんな展開は決して悪くないと思う。人生は一度きりだし売れて悪いことなど何もないのだ。私たちも何かいいことがきっとあると思う。リーダーも民放の朝ドラレギュラーが決まったし。さっきと言ってることが少し変わった気がするけど気にしないで。大阪公演の前の日、松山から大阪まで電車で来た。オセロットメンバーでみゆきちゃんを応援というか冷やかしというかそういう態で見に行くのだ。私以外は全員応援だけどね。私も応援はするけど何割かちょっと冷めた目で見ようかなと思ってた。何かメンバーで学べるものがあるのか、それが興味があることだった。恭ちゃんはこういう舞台に慣れているようだ。いろんな経験を持っているので劇場の一つ一つにたじろがない。「ここはこうなっているのか」いちいち驚いたりしない。照明の光の加減を注意深く見ている。というか裏方になるつもりなんでしょうか。ここは動きやすそうだな、とか思っているんじゃないかと思う。こうしてみると動きやすい舞台というのは確かにあるんだなと思った。もっと役者に躍動できる場所を与えるべきではないかと、って発想が飛躍しがちだな。この舞台は見てる感じだと楽しそうに役者が動いている。観客の中に結構有名なスポーツ選手がいたようだ。名前を聞いても私はわからないけれど。

こういうバトルものっていうのか、違うな。史劇だとある程度の枠というものがあるんだと思ってた。結構チャンバラに徹しているようだ。それをこなしているみゆきちゃんもすごい。凄いばかりだと芸がないけれど嫉妬のお化けみたいな私もさすがに脱帽してしまう。
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