プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~

阿津沼一成

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第1章 スプリング×ビギニング

第12話 トウコウ ナカヘン

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えーと・・・・どこだ?ここ

俺はよくわからない場所にいた

なんかうまく思い出せない

てゆーか俺、誰だっけ?

右側にフェンス、左側に大きな建物がある

あれ?これは体育館か?

2、3歩、歩を進めると目の前に唐突に古びた小屋が現れた

体育用具をしまう倉庫・・・だったよな、これ

取り敢えず開けてみるか

錆の浮いた引き戸に手をかけてゆっくりと動かす

扉の先にあった物は・・・・・・・・・・・・・

ここは?

中はごく普通の部屋だった

てゆーか、俺の部屋?のような気がする・・・・・

・・・なっ!?

部屋の中には女の子がいた

しかもこちらにお尻を向けた格好で、四つん這いになって

裾に白のレースがあしらわれた黒いフレアスカートから伸びた脚には、白と黒のシマシマのニーソックスを履いている

そんな煽情的ともいえる格好で彼女がしていたことは・・・

ベッドの下を何やらガサガサと漁っていた

ちょ!?またお前はそんな!

慌てて止めようとしてハタとする

前も似たような事があった?

でも思い出せない・・・

俺に気付いた少女がゆっくりとこちらを向いた

振り返ったその顔は・・・とびきりの美少女だった

俺は・・・・この子のことを知ってる?

だけど思い出せない

彼女が身に纏っている服はいわゆるメイド服というものだった

腰のところにハート型の名札がついていて、そこには『ゆず』と書かれている

これがこの少女の名前だろうか?

聞き覚えがあるはずなのにやはり思い出せない

頭には前髪を纏めた十字架型の髪飾り

そして・・・猫耳がついていた

え?

困惑する俺の方に向き直った少女が上目遣いに見つめてきて、

「にゃあ」

と鳴いた

!!!!!!!!!!

あまりの愛らしさに気を失いそうになった

え?天使?

俺、実は死んだ?

くらくらする頭で必死に考える

ここは天国なのか?

そうでなければこんな愛らしい猫耳メイドな美少女が存在するはずないし・・・

いやいやいや、でも、まさか、しかし

必死で考える俺を少女はしばらくキョトンと見ていたが、やがて先程漁っていたベッド下から発見したらしいそれを転がして遊びはじめた

「にゃっにゃっ」

楽しそうに転がすそれがなんであるかを理解した俺は慌てて彼女から取り上げた

こ、こらっ!こんなので遊んじゃいけません!

俺が取り上げたそれはボール・・・

の両側に紐状のものが2本くっついた物体

いわゆる『さるぐつわ』の一種、ボールギャグだった

「にゃっにゃっ」

取り上げて高く持ち上げたのを、遊んでくれると勘違いしたのか彼女がそれにじゃれて手を伸ばす

とっ・・・わっ!?

彼女の勢いに思わずよろめいた俺は仰向けに倒れてしまった

倒れた俺の体の上に重なるように乗る彼女の体

それはまるで重さを感じないくらい軽かった

目の前に彼女の愛らしい二つの瞳がある

それが悪戯っぽく微笑むように細められ、そして湿り気を帯びてきらめく唇が動いて・・・

甘えるような声で


「ペロペロ・・・・するにゃ?」

と聞いてきた

頭が・・・・くらくらして脳が沸騰しそうだ

こんなの我慢出来るわけ・・・!

そ、園さ・・・!

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

「・・・き!・・・って、あれ?」

けたたましいベルの音に俺は意識を取り戻す

ぼうっとする頭で周りを見回す

いつもと変わらない自分の部屋だ

「あれ?えーと・・・?」

なんか凄く・・・なまめかしい夢を見ていた気がする

が、思い出せない

腕の中には愛用の抱き枕がある

なんかいつもより強い力で抱いてたみたいだ

「・・・・・・・・」

なんか物凄く・・・もったいない気分だ

あともうちょっとだったのに・・・何が?

わからない・・・でも、取り敢えず・・・

そこでジリジリ言ってやがる目覚ましが何故か・・・無性に憎い

・・・まあ、いつまでも無機物に憎しみを向けていても仕方ない

そいつはただ忠実に自分の仕事をしただけだ

恨むならそいつに、いつもより10分早い時間を設定した俺自身だろう

ベッドからのそのそ這い出て立ち上がる

「・・・だからお前も少し落ち着けって」

俺は自分の意思とは別に勝手に硬化して棒状になったそれにぼやく

毎朝毎朝、このメカニズムは何とかならないものか

落ち着くまでトイレにもいけやしない・・・

そう、これは男子であれば避けて通れぬ肉体の強制的な生理現象

さっきまで見ていた夢とは無関係・・・なはずだ

◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

「・・・え?休載?マジ?」

通学途中のコンビニ店内

その雑誌コーナーで俺は失望の声を上げる

今日は、ある週間漫画雑誌の発売日だったのだ

その雑誌で読んでる作品はひとつしかなかったから、いつもコンビニでの立ち読みで済ませていた

今週もそのつもりで早く起きて家を出たのだが、雑誌に載っていたのは休載のお詫びだった

わざわざこのために目覚ましをいつもより10分早く設定したというのに・・・

何やら釈然としないものを感じながら雑誌を棚に戻す

「しゃーない、コーヒーでも買って出るか・・・」

ふと成人雑誌コーナーに目が留まる

メイド服姿の女の子が上目遣いで微笑んでいる表紙

・・・あー、ほんと惜しかったなあ・・・・だから、何がだよ!?

ったく、夢なんかにこだわりすぎだって

冷蔵庫のガラス扉を開けていつもの練乳入りコーヒーを取り出す

ふと、姉さんの好きな炭酸飲料のボトルが目に入った

週末帰ってくるって言ってたし、後で買っといてやろうか

・・・でもなんか今朝の変な夢の原因は、昨夜の姉さんとの会話のような気がするんだよな・・・

買ったコーヒーを飲みながら学校までの道を歩く

公園の遊歩道に入り池を眺めながらのんびり歩く

途中の自販機があるあたりで飲み終わり、傍らのゴミ箱へと空になった缶を入れる

そういえば、初めて園崎と帰った日、ここでコーヒーを奢ったんだっけ

『・・・初めてお前に買って貰った物だからな。きれいに洗ってとってあるんだ』

先日、園崎の部屋で聞いたセリフが脳裏に甦ってきて、頬が熱くなる

たかが缶コーヒー一本で大袈裟だって・・・


「あら、義川くん。おはよう」

公園を出たところで委員長にばったり会った

「やあ、おはよう委員長」

挨拶を交わして、一緒に歩く

「義川くん、今日はいつもより早いわね」

「ああ、たまたま早く起きたんだ」

漫画を立ち読みするためとは言いづらかったのでそう曖昧に答える

「ふうん、でも早起きは三文の得と言うし、良いことじゃない?」

「得・・・ねえ。起きた瞬間から凄く損した気分なんだけど・・・」

「え?」

「いや、なんでもない、こっちの話」

俺は慌ててごまかした

そんな事を話しながらしばらく二人で歩いていると、

「経吾!」

と背後から俺を呼ぶ声がした

振り返ると満面の笑みで園崎が走ってくる

言った通りちゃんと早く来たんだな

ちなみに今日は白黒の縞ニーソだ

それが目に入った途端に何故か条件反射的に俺の体の一部に血液が集中する

って、落ち着けよバカ!?

てか、なんだ今日の俺の体?反応速度高すぎだろ!?

俺は気まずさに僅かに視線をそらす

弾むような足取りで駆け寄ってきた園崎が、数歩の距離で立ち止まった

「?」

視線を戻すと・・・・園崎はその笑顔を凍りつかせている

そして、



「・・・・・なんで・・・・お前達・・・・・いっしょにいるの?」

呟くような声でそう言うと俺と委員長を交互に見た

「え?・・・いや、なんでって、俺達さっきそこで会…」

「だから何?私達がどう登校しようと貴女には関係ないでしょう?」

俺の言葉を遮り委員長が園崎にそう言った

「・・・委員長?」

どうしたんだ?いつになくケンカ腰だな

それに比べて園崎は珍しく気弱な風に見えた

そして震える唇からは弱々しい声を漏らす

「・・・一緒に登校とか、そんな、それじゃまるで・・・・」

「まるで・・・何?」

「まるで!・・・・・・・・





恋人同士みたいじゃないか!!!!!!」

「・・・・・・・・・・は?」

と俺

「な!??、こ、恋び・・・!??」

と、委員長が絶句する

園崎・・・相変わらず極端な考え方するなあ

余りに突拍子も無い園崎の言葉にさすがの委員長も声を失い、その顔はみるみる朱に染まっていって、耳たぶまで真っ赤になった

「なになに?痴話喧嘩?」

周りを歩く生徒たちが俺達の様子に興味を向けてきた

「え?あの二人って付き合ってたの?」

「え~、もしかして修羅場ってやつですか?」

なんて囁きも漏れ聞こえてくる

・・・マズイな

色恋沙汰の噂話なんてあっという間に広がってしまう

このままじゃ俺と委員長が付き合っているって事にされかねない

それは・・・俺にとっては名誉な事だ

何しろ委員長は男女を問わず人気が高く、成績優秀、品行方正、運動神経も悪くない

そんな彼女と恋仲なんて噂になれば、男子からは羨望の目で見られることだろう

だけど委員長にしてみれば、俺とそんな噂が立ったら迷惑以外の何物でもないはずだ

俺なんて容姿も成績も体力も平均値の一般人だし・・・

委員長には一年の時から何かと世話になっているのに、そんな噂が立ったりして迷惑を掛けるのは申し訳ない

委員長の名誉の為にも、ここはきっちり誤解を解いておかないとな

「あのなあ、園崎・・・・」

俺は溜息つきつつ周りの野次馬にも聞こえるように、はっきりした声音で話し出す

こういう時、変に慌てたりすると、かえって『なんか怪しい』と思われ疑われるものだ

何でもないことのように、サラリと言うのがコツだ

「・・・一緒に登校するのなんか恋人に限った事じゃないだろ。友達なら普通の事だ。一緒に登校するのが皆がみんな恋人同士な訳あるか。そんな事言ったらあそこを歩いてく男ふたり、あいつらはホモか?今通り過ぎてった女子ふたりはレズビアンか?違うだろ?ただの友達だ。俺と委員長もそう。ただの友達、クラスメイト、だから途中で会ったら一緒に登校するのは普通。行き先同じなんだから」

よし、完璧な理屈だ。これで納得出来ないならもう知らん

「・・・そうか、ただの、友達・・・ただの」

園崎が気が抜けたような声で呟く

「ただの・・・・友達・・・・」

何故か隣の委員長も呟きを漏らしている

?・・・・・どうしたんだ?

「なら・・・・・くも、・・・・から・・・・に・・・る」

ん?園崎?なんだって?

「なら僕も!!





明日から経吾と一緒に登校する!!!!!」

園崎が・・・・・そう高らかに宣言した

◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

「はあ・・・」

その日の夜、いつもより早めに寝ようと自室に入った俺は溜息をつきつつ今日のことを思い返す

なんか妙な事になった

園崎が俺と登校する事を高らかに宣言すると、何故か周りの野次馬から、まばらな拍手が起こった

学校では担任の女教師が声をかけて来た

「よくやった義川、貴様は本当に使えるな。これで園崎の慢性的な遅刻症が改善されれば非常に助かる。全く、アイツときたら私が何度言っても聞く耳を持たんからな」

どうやら俺達のやり取りを見ていたらしい

やれやれ相変わらず俺に丸投げかよ

そして結局、園崎とは明日から途中で待ち合わせして、一緒に登校することになった

ああは言ったものの、わざわざ時間を決めて待ち合わせて登校って、それこそ恋人同士みたいじゃないか?

かと言ってそれを断る正当な理由もない

取り敢えず明日は寝過ごして待ち合わせ時間に遅れたりしないように今日は早めに寝るか

・・・あ、言っとくけど別に楽しみになんかしてないし、ワクワクしたりとかもしてないからな

(つづく)
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