プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~

阿津沼一成

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第1章 スプリング×ビギニング

第21話 ベンキョウカイ ノ アト

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園崎に案内されて着いた店は個人経営と思われる甘味処だった

上品な佇まいの落ち着いた雰囲気の店だ
園崎に続いて暖簾をくぐり中に入る
中の店員は皆、和服
客層も心無しか上品な女性客が多い

「あら、ゆずはちゃん。いらっしゃい」
おっとりした雰囲気の女性店員が園崎に声をかけてきた
年の頃は20代半ば、というところか

「こんにちは、やよいさん。奥の部屋、空いてる?」
「ええ、空いてるからどうぞ」
返事を聞いた園崎が慣れた足取りで店の奥へと歩いていく
俺は慌てて後に続いた

やよいさんと呼ばれた店員さんは俺を見ると目を丸くしたあと意味ありげな微笑みを浮かべる
俺は軽く会釈したあと園崎が向かった奥へと歩を進めた

奥には襖があり、個室と思われるその部屋には靴を脱いで上がるらしい
園崎はサンダルを脱いで襖を開け、さっさと入ってしまう

俺も続いて上がると、そこは4畳半くらいの大きさの畳敷きの和室だった
真ん中には唐木と思われる木製の座卓
園崎は既に座布団の上に座っている
俺も向かい側へと腰を下ろした

「お茶をお持ちしました」
襖が開いて先程のやよいさんという名の店員さんが現れる
俺と園崎の前にそれぞれ緑茶の入った湯呑みを置いてくれた

「こちらお品書きになります」
そう言ってメニュー表を差し出してくるが園崎はそれを見ずに、

「あんみつをひとつ・・・そ、双月を」
と、上擦った声で注文した

「双月・・・ですね、承りました」
やよいさんが注文を繰り返すと、園崎は少し頬を赤らめながら無言でメニューを突き返した

どうやら俺には注文させてくれないらしい
まあ、これは俺が自分の行いを詫びる場だ
甘んじて堪えるしかない
とりあえずお茶があるだけ有り難いと思おう

「ゆずはちゃん、・・・何本お付けしますか?」
「・・・い、一本で・・・いい」

なんかの暗号だろうか?
まあ、俺には知るすべもないが

「んふふぅ・・・承りました。失礼します」
園崎の返答に意味ありげな笑いで応えたやよいさんが襖を閉めて出て行った

静かになった室内に上品なお茶の香りが漂う
湯呑みをかたむけて一口、口に含むと、なんともいえない上品な味わいが口の中に満ちた
前に園崎の家で飲んだものに似ている
もしかしたら同じ銘柄なのかもしれない

二人でしばらく無言でお茶をすする
園崎は注文してから、ずっとそわそわして落ち着かない感じだ
俺も気まずくなり部屋の中に視線をさ迷わせる

顔を横に向けたまま目だけで園崎を盗み見ると、ぼおっとした顔で口元を緩ませていた
視線の先には自分の右手があった
俺が弄んだその右手が

◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

「失礼します。ご注文の品をお持ちしました」

運ばれてきたそれは通常のあんみつより遥かに大きなものだった
・・・なんか二人前くらいはありそうだぞ
たぶん値段も倍だ

バニラアイスが二つ乗っている
いわゆる『クリームあんみつ』ってやつだ
これを月に見立てて〈双月〉と名付けたのかもしれない

やよいさんは俺と園崎の湯呑みにそれぞれお茶のお代わりを注ぐと、園崎に意味ありげな視線を送る
赤面してそっぽを向く園崎

そんな園崎の反応にくすくすと笑うと
「ごゆっくりぃ」
と言って出ていった

再び二人きりになると園崎は俺に向き直り、こふんこふんと咳ばらいする
そしてスプーンを取ってその柄をこちらに向けて差し出してきた

「どうすればいいか・・・わかるよな?」

つまり食べさせろってことね・・・
「はあ・・・」
俺はひとつ溜息をついてスプーンを受け取る

この場は俺の謝罪会場だ
最悪、土下座までしようと思ってたんだ
このくらいどうということはない
この奴隷的仕打ちも受け入れようじゃないか

あんみつの器から一口分をすくい園崎の口元へと運ぶ
園崎がその愛らしい唇を開ける
口のまわりにつかないように、慎重にその唇の隙間にスプーンを差し入れた
園崎が唇を閉じスプーンのあんみつを含んだのを確認して引き抜く
もくもくと咀嚼し飲み込むと顔をほころばせて微笑んだ

「美味しい。アリガト、経吾」
その笑顔に頬が熱くなる

「ど、どういたしまして。ほ、ほら・・・」
二口目をすくい、また口の中へ

俺はしばらくその作業を続けた
ふむ、園崎の歯並びは悪くないみたいだ
整然と並んだ白い歯が綺麗だ

その奥にある舌が時折、唇を舐める為に顔を見せる
小さくて可愛らしい舌だな

って、なに観察してんだよ俺
でもしょうがないだろ、そこしか見れない状況なんだから

ひとしきりその作業を続けて四分の一ほど無くなったあたり
園崎が
「そ、それじゃそろそろ交代だ。け、経吾、スプーンを貸せ」
と言ってきた

「え・・・交代?」
「そうだ、僕が一人でこんなに食べられるわけないだろ」

そう言うと俺から奪うようにスプーンを取り上げ、器から一口分すくい取って俺の目の前に突き出す

「ほ、ほら、あーん、しろ」

ええっと、これは間せ・・・って、もう図書館の中庭でやっちゃったろ!
いまさら2回も3回も同じだ

ぱく
もぐもぐ・・・

「どうだ美味いだろ?」
園崎が微笑む

「はい、ありがとうございます。とても美味しいです」
「くふふふふ、また敬語になってる。可笑しいな経吾は」

園崎、俺の事をサディスティックだなんて言ってたけど、お前の方がずっと素質あると思うぞ
女王様的な
アメとムチのバランスが絶妙すぎる

「くふふ、この店のあんみつは絶品なんだ」
そう言うと一口分すくって、自分の口へ
「黒蜜の風味はここ以上のは食べたことがないな、ほら」
と今度は俺の口へ

そうやってしばらく園崎の手により互いの口の間をスプーンが往復する

ああ、なんかこれって、まるでスプーンを介して行うディープキ・・・ごふんごふん何考えてる俺、卑猥な連想はやめろ

しかし、まあ、あれだな
園崎ばかりにさせといちゃいけないよな
これは俺の詫びなんだから

「そ、園崎、そろそろ代わるよ。ほらスプーン」
俺が手を差し出すと園崎は素直に手渡してくる
スプーンを受け取り、再び園崎の口へ運ぶ作業へと戻る

愛らしい形の唇が開閉する様を眺めながらのその行為に俺は妙な興奮を覚えていた
「経吾もちゃんと食べてくれよ、僕にばかり食べさせないで」
「え、あ、うん」

自分でそれをするのはためらいを感じて園崎の口にだけ運んでた

園崎の愛らしい口から引き抜いたスプーンを自らの口にくわえる
「経吾?それ何もすくってないぞ」
「・・・・え?・・・うわ!」

ぼおっとしてて園崎の口からダイレクトに自分の口へ入れてしまった

「いや、これは、その」
慌てて弁解しようとする俺に園崎が楽しそうに笑う
「何やってるんだ?面白いな経吾は」

俺は改めて器からすくったものを自分の口へ
またすくって今度は園崎の口へ
ちょっと慌ててたのもあって口の端に少し付けてしまった

「ん、もう・・・経吾」
園崎がちょっと責めるような声を出す

「す、すまん、でもお前ももっと口を大きく開けてくれよ」
弁解しつつそう言い訳をした

俺の言葉に園崎が微かに肩をぴくんと動かし顔を伏せた

「そ、園崎?」
口をちゃんと開けない園崎が悪い、みたいに言ったから怒った?

「な、なあ経吾・・・今の言葉・・・・ちょっと命令っぽく言ってくれない?」
「・・・へ?」

俺は困惑しながらも従う
えーと・・・

「もっと口を大きく開けろよ」

園崎の肩が再びぴくんと震えた

「もっかい・・・・もっと・・・低い声で」

「・・・・もっと大きく口を開けろよ」
「ふ、ふぁい、わかりましたぁ」

そう言って顔を上げた園崎は紅潮した顔で口を大きく開く
目も微かに潤んでてなんか妙に色っぽい

俺は器からすくったものを園崎の口へと
園崎はそれを舌と唇で受け取る

エロティックなその動きに指先が震えスプーンから溶けたクリームがこぼれた

白い液体が園崎の唇の端から伝い落ちる

その事にも気付かないように恍惚とした表情を浮かべた園崎は
「あ、ありがとうございます。とても美味ひいれふ」
と、微妙にろれつの回ってない声で言って微笑んだ

なんか物凄くエロい絵面なんですけど・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・う、うわ、ちょ、ちょっと待って経吾。は、鼻血、鼻血でてきちゃった」

数秒後、我に返った園崎は突然鼻を押さえてそう言った
俺は慌てて、来る途中に駅前で貰ったポケットティッシュを差し出すのだった

◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

結局4分の1ほどあった残りは俺が食べた

俺が器を空にする頃、園崎の鼻血もおさまり店員さんを呼んでお茶のお代わりを貰う
やって来たのは先程と同じやよいさんて人だ
空になった器を見て園崎に微笑みかけると園崎は赤くなってそっぽを向いた

お茶を注ぎ終わるとやよいさんは
「ゆずはちゃん、今日はこの部屋貸し切りにしといたから好きなだけ居ていいからね」
と言った

それを聞いた園崎の頬がさらに赤くなる
「や、やよいさん!」
「うふふ、じゃあごゆっくり」
と言うと襖を閉めて出ていった

部屋の中に静寂が満ちる

「こふんこふん・・・・・・さてと、経吾」
園崎は妙な空気を払うように咳ばらいをすると急に目を細めて俺を見た

「僕に対する詫びはこれで終わりにしてやろう・・・これからは尋問の時間だ」
「じ、尋問?」
「ああ・・・経吾と、・・・さっきのあの女との事だよ。包み隠さず全て話して貰うからな」

そう言って口の端を歪めて笑う園崎に俺は心の底から恐怖した

◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆

「なるほどな、そういう顛末か」
園崎に見竦められ俺は彼女との事を洗いざらい喋った

「つまり隣同士の席になってよく話すようになった。ことあるごとに一緒に行動しているうちに相手も自分に気があるんじゃないかと思い始めてとうとう恋人としての交際を持ち掛けたがフラれた、と」
「う、まあ、そうだ」

「勘違いも甚だしいな」
「うぐっ」

「下心アリアリで告ったんだろ」
「な、何をバカな」

「おおかた、『あ、この女、俺に気があんじゃね?もしかしてヤラセてくれるかも?』とかって思ってたんじゃないのか?」
「・・・そ、そんなことは」

全然無い、と言ったら嘘になるかも知れない・・・でも性欲溢れる中学生のガキなんて大体そんなこと考えてるもんだろ?

「告白する前、誰かに相談したのか?」
「し、してない」

「だろうな。してれば客観的な意見としてお前が痛い勘違いをしてることを教えてくれただろう」
「くうう」

園崎の容赦無い言葉が俺の心に刺さる

向かい側から俺の隣へと移動してきた園崎が俺の顔を覗き込みながら
「どうだ?過去の失恋の痛み、思い出してきたか?」
そんな事を言って意地悪く笑う

「ああ、お蔭様でな。やっと忘れかけてきたのに。園崎は酷い奴だ」
俺は拗ねて顔をそむける

図書館で虐めた仕返しなんだろう
甘んじて堪えるしかない

突然、俺の頭に園崎の腕が絡みついてきた
驚く間もなく引き寄せられ、その胸元へと抱かれた

「な、な、な、な」
あまりのことに言葉にならない
襟元の素肌に頬が密着する
なんともいえない甘い香りが鼻腔に満ちる

「慰めてやるって言ったろ。僕の胸で泣かせてやるって・・・」
頭の上で園崎の声がする
吐息で頭頂部がくすぐったい

「な、慰めるために・・・、わざわざ思い出させたのかよ」
「そうだよ」
悪びれもせず園崎はそんなことを言う

「め、めちゃくちゃだなお前」
「くふふ、だから遠慮なく泣いていいぞ」
「だから・・・泣かねえっての」

そんな会話を交わしつつ園崎に身を任す
頭を優しく撫でてくる手の平の感触が心地好い
こんなに園崎と密着しているのに不思議といやらしい欲望は湧いてこない

やっぱり園崎はいいやつだ
彼女とはずっと友達でいたいとその時の俺は心から思っていた

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・ゴメン。
嘘ついた

一分もしないうちにエロい気分が湧いてきた
精神的肉体的共に異常の無い男子的にはむしろそれが正常だと思う

だって左肩にむにむにした柔らかいものが密着してんだもん
こんな状況でそういう気分にならないほうが異常だって

おまけにさっきから園崎がもぞもぞ動いて・・・
「って、なにやってんのお前!?」
「うん?いや、膝立ちの体勢がちょっと疲れてな・・・よいしょっと・・・うん、楽になった」

あぐらをかいて座る俺の左足の上に跨がって座ってしまった

おいおいおいおい!
スカートがめくれてフトモモが剥き出しになってるぞ

それに俺の足に伝わってくるこのあったかい温度はつまり園崎の××××からの体温てことで・・・

「じゃあ交代だ。こんどは経吾が僕のこと、慰めてくれ」
なんか図書館の時みたいなセリフを言い出した

なんだこれ?
俺、試されてる?
ここで選択肢間違えたら即バッドエンド的な?

・・・。

いや、いやいやいやいや。その表現はおかしいだろ
それじゃまるで俺が園崎の事が好きでコーリャクしようとしてるみたいじゃないか

こふん。
落ち着け、俺

これは友達を慰めるシミュレーションだ
「で、何について慰めればいいんだ?お前も失恋したこととかあるのか?」
「・・・・・。」

「園崎?」
「さ、さあな?覚醒する前の記憶は曖昧でな。覚えてない」
そんなことを言ってうそぶいた

しょうがないな

えっと・・・。

昔、よく落ち込んでた母さんにやってた方法を思い出した
フトモモに伸ばしそうになる右手を必死に軌道修正して園崎の背中へと・・・
もう片方の手で頭を抱いて優しく背中をさする

「大丈夫だ、俺がいるから・・・いつも一緒にいるから」
ゆっくりそう語りかける

園崎の身体がぴくんと震えた

「・・・・ホント?」
「ああ」

「・・・・・一緒にいてくれる?」
「ああ」

「・・・ずっと一緒?」
「ああ」

「・・・ずっと一生?」
「ああ」

・・・・あれ?

今、ずっと一緒って二回言った?
二回目のイントネーションが微妙に違ってた気がするけど

俺を挟みこんだ園崎のフトモモに力がこもる
「・・・・約束だからね?」
「あ、ああ」

「なあ経吾、人の発した言葉には魂が宿るんだぞ」
その話は前も聞いた気がする

「くふ、もし約束を違えたら、その魂をもって贖うことになるからな」
「こ、怖いぞ園崎」

「くふふ、自分でもヤンデレ入ってるなーって思うけど、どうしようもないんだ。ゴメンな経吾」

俺の肩に頬を当てたまま呟くように話す園崎

言ってることはめちゃくちゃなのに・・・

そんな園崎がどうしようもなく愛おしく感じている俺は・・・

やっぱりどこか、おかしいのかもしれない

(つづく)
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