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第十二章 獣人の平原 Anthro's Meadow
第12-2話「被食者」
しおりを挟む「救世主様の子供が欲しいなぁ♡」
と言われた早苗は、頭を抱えていた。
どう国を発展させるか、獣人たちに質問していたのだが……
「こら、ラム!」
ラルクが、獣人の女子を下がらせる。
「真面目に話しなさい!」
「だって村長。私、人間でいえばもう14歳だし、イケメンの子供が欲しい!」
「はぁ……申し訳無いです、閣下……」
「……いや。出産時に母体が死ぬ話は見過ごせない。医療体制を整えよう」
すると必要なのは、科学研究所と化学合成だった。
「……大丈夫、早苗さま?」
「ああ。全員の意見が一致しているのは、五つだね」
まとめると、こんな感じだった。
① 冬の食料
② 衣類不足
③ 固定の住処
④ 武器や軍隊がない
⑤ 医療設備がない
「工業化と製造業の発展で、なんとかなりそうだ」
「……か、閣下?」
ラルクは顔を引きつらせていた。
「こ、このうちの一つでも解決したら、歌になるレベルですが……」
「どれも致命的な問題だから、なんとかする」
そしてもう一点あった。
「……活動時間は、僕が君たちに合わせる。これからは夜に活動しよう」
「その必要はありません」
キッパリと断るラルク。
「時間はかかりますが、我々が昼に適応します。ドワーフやエルフは夜行性ではありません。我々が適応するべきです」
「わかった」
◇
その後……
獣人たちを休ませ、すぐにでも定住する土地を探すことになった。
首都を建設する開拓地――
(……心菜が処刑されるまで、あと27日か)
時間を無駄にできない
時刻は、午前9時あたり。獣人たちは眠りについている。
(ララも、寝ている……)
髪を撫でて、起こさないように住居から出た。
刹那、パチリと音。
枝が踏まれた?
「………!」
振り向くと、弓を構えた兵たちが何人も顔を出した。
『動くな。誰だお前は? 獣人ではないな』
王国語だった。
ぞろぞろと、兵士たちが6人。
(……誰だ、こいつらは)
背後の森には、さらに10人以上隠れている気配が。
ゆっくりと立ち上がり、ハッタリをかました。
『あんたたち、同業者か?』
『……お前が? 何故、武器を携帯していない』
『Bランクだからな』
全て嘘だった。
頼む、弓を引かないでくれ――そう思いながら、背中で隠すように、置いていた連弩を拾った。
リーダー格の男は、疑いの目を向けている。
『どこの兵だ? モグリか? この集落には、何人いる?』
(……兵? 集落?)
恐らく、獣人たちを狩りに本土から来た、盗賊まがいの兵士たちだ。
それなら……
『……今、仲間が総出で周囲を捜索している』
『なに?』
『この集落にヤツラはいない』
少し歩き、真顔で続ける早苗。
『ドアの淵を見れば、ヤツラが移動してから、時間が経っていないのがわかる』
ドアを自然に開き、住処の中を見る。
中のラルクは……起きていた。
こちらを見て、静かに武器に手を伸ばしている。
「……王国兵、16人以上。引き付けるから撃退の準備を」
背後の兵士たちには聞こえない大きさで言い、ドアを閉める。
だが、不審だったのだろう――
『リーダー! こいつ、こんな軽装で、亜人狩りをするわけがねぇ!』
リーダー格の男は「ああ」と頷く。
『そのクロスボウも見たことがねぇ。アクセントも妙だ』
『……何を言っても、ここは僕たちが先に押さえた』
集落から離れるよう、歩き出す。
『だが取り分が欲しいのなら、リーダーに会わせてやる。50人以上を束ねてるやつだ。ついてこい』
もちろん、全部嘘だった。
とにかく今は、集落から離れ、ラルクたちに時間を与えるしかない。
(……ここで失敗すれば、ララを含め全員が、皆殺しになる)
一切のミスは許されなかった。
慎重に。慎重に。
『待ってくれ、リーダー』
兵士のひとりが声を荒らげる。
その男は、あろうことか……
獣人の住処の一つから出てきた。
「いやあああああ!! 助けて!!!」
ケモミミの少女が、悲鳴を上げていた。
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