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2、健太の好奇心

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「再来週には1年生も終わりかぁ」

嬉しそうに言う健太に、「来年、一緒のクラスかも」と小さい声で言った。

「みなと一緒のクラスだったら毎日イチャイチャできる!」

健太は無邪気に笑って繋いだ手にギュッと力を込めた。

「えっ、、、それは」

戸惑う私をよそに健太の理想のクラスについて話は続く。

「みながいたらもうそれでいいけど、欲を言うなら七海もいて欲しいなぁ」

聞きなれない名前にふと考える。
七海ちゃんなんて子いたっけ?

「今のクラス、七海がいねーとなんも楽しくなかったわ!たぶん!」

「仲いいの?」

「仲いいってもんじゃないよ!あいつ、めっちゃかわいいんだ!俺、超好き!」

さすがに彼女の前で他の女の子を惜しげも無く絶賛するのは、やましいことは何も無いと言っているようなものだから疑ってはいないけど。

どんな子か単純に気になった。

『ご乗車ありがとうございました』

私が降りる駅に電車が到着した。
健太が名残惜しそうに私の手を離さない。

「健太、また明日ね」

そう言うと、健太もなぜか立ち上がって一緒に電車を降りてしまった。

ドアが閉まって電車が発車する。

「次の電車乗るからいい。家まで送る」

少し俯いてまた耳を赤くしていた。
家から駅まで結構距離あるのにな。

「遠いけど、いいの?」

「いい!話す時間たくさんあっていい!」

ニコニコと私の手をひいて改札までずんずん進んでいく。

改札を出るなり子供みたいに周りを見渡して楽しそうな健太に、私もすこし楽しくなってきた。

「あっちのドーナツ屋さん寄ってこう!」

私の提案に完全にノリノリの健太は「食べながら帰ろう!」とご機嫌だった。



「俺、これとこれ!」

「私はこれ!」

健太は驚いたように「1個だけ?」と私に聞く。

「だって、夜ご飯入らなくなっちゃうよ」

「じゃあ俺の1口あげる!」

健太は教室に私を迎えに来た時からずっと笑顔でなんともかわいい。


「はい、あーん」

健太は自分のドーナツを受け取ってすぐ私に食べさせようとした。

手を伸ばしてニコニコと私の口元にドーナツを押し付ける。

「あむっ」

私が精一杯大きな口で1口食べると中からクリームが溢れてきた。

「んっ!」

「ほら、無茶するから!」

健太は私の顔を見て「あはっ」と笑った。

「口がクリームまるけだよ」

慌てて舌で舐めると「まだ付いてるよ」と健太が顔を近づけた。

口の端に付いていたクリームを今度は健太が舐めとった。




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