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14、夕方のコンビニ 七海side

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「おい!朝!」

背中に衝撃を感じて、目を開ける。

「いつまで寝てんの?」

背中に当たったのは高反発のクッション。

投げたのは短いスカートを履いた妹。

「あんた今日終業式でしょ」

食パンをかじって、俺の部屋の床にパン粉をこぼしながら睨みつける妹に、なんでそんなに俺が嫌いなんだと言いたくなる。

「今日は体調不良で休むからもうほっとけ」

「はぁ?こっちだって起こしたくて起こしてんじゃないの!一生寝てろ!」

妹は中1から絶賛反抗期で、中3になった今も続行中。

俺のことをお兄ちゃんと決して呼ばなくなった。

健太の前以外では。

「萌も卒業式くらい、だらしないからスカートのばしてけよ」と渾身の嫌味を発した。

ドアを思いっきり閉めて出ていったから、聞こえたかどうかは分からないが。

そして、一日中死んだように眠り気がついた時にはもう夕方だった。

「あら、起きたの?」

母さんはにっこりと笑って「今起こそうと思ってたの」と言った。

家事を済ませた母さんは完全にくつろぎモードでソファに深く腰掛けている。

「俺、ちょっと出かけてくるわ」

外の空気を吸いたい気分だった。







「ねえ、七海くんだよね!?」

コンビニを出た途端、声をかけられて心臓が鼓動を早くした。

あ、聞いたことあるこの声。

「よかった、七海くんだ!」

健太の彼女が安堵したように笑うのを見て、コンビニに来たのは間違いだったと思った。

「七海くん?」

うんともすんとも言わない俺の顔を不思議そうにのぞき込む。

「な、なに」

声が裏返った。

自分でもありえないほどに緊張して、膝が笑ってる。

「ふふ。健太の家って分かる?」

俺、今、全然ちゃんとした格好してないな。

寝起きだから髪の毛もちゃんとしてない。

「七海くん?大丈夫?」

あれ、そういえば、マスクしてるのになんで俺のこと分かったんだ?

この前会ったばかりなのになんで俺のこと覚えてるん....

「七海くんってば!」

大きい声を出されて、頭の中で何かがパンッと弾けるような感じがした。

「あっ、ごめん。で...なんだっけ」

どぎまぎしながら聞き返して、もうちょっと緊張しないで話せないのかよ!俺!と手のひらに力がこもった。

「あ、健太の家に行きたいんだけど、道わからないかな?えっと...忘れ物しちゃったんだけど、道がわからなくって」

「健太に連絡すればいいんじゃないの?」

「それが、忘れ物ってスマホでさ。本当に私ってばかだよね!」

「はあ...」

話しながら、少しずつ心臓が落ち着いてきた。

よく考えたら、健太の彼女にどう思われたってどうでもいいな。

服とか髪とか、そんなのこいつだって見てやしないのに。

俺は無言で健太の家の方向に歩き始めた。




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