困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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20、小島 夏帆

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「私、小島夏帆!」

きらめく笑顔で爽やかに自己紹介をする彼女に、私はとても嬉しくなった。

やった!このクラスでも友達が出来そうだ!

先ほど、仲良くなるはずの七海くんに冷たくされて、正直不安で仕方がなかったのだ。

「私は...」

「うん知ってる、市川みなちゃん!」

食い気味に私の名前を言うと、迷わず私の前の席の椅子に座ってくるっとこちらを向いた。

私は「市川」だから「小島」は私よりも後ろの席のはずだけどな。

誰かもわからない人の席に座るという行為にあまり抵抗がない人なのかも。

「去年の終わりかけに健太のクラスに転校してきたんだけど、よく健太から話は聞いてたよん!」

終わりかけに転校してきたのに、そんなに健太と仲が良かったのか。

健太は誰とでも仲良くなれる、いわゆる真ん中にいる人だから当たり前と言えば当たり前かも。

基本的に七海くんの話しか聞かなかったから、知らなくて当然なのかもしれないけれど。




「私、すっごく健太のことが好きなの!」




さすがの呑気な私も、そこ一言には体が凍りついた。

表情も固くなって、あれ私が彼女って知ってるのよね、と混乱する。

「あんなに面白くて優しい人、そうそういないもんね!彼女想いだし!」

なんの悪気もなく素直にしゃべり続ける彼女に、流石に違和感を感じる。

友達として好きだ、というような言い方ではあるものの、なんとなく浮世離れした子だなと思った。

「羨ましいなぁー!あんなにいい彼氏持って、みなちゃんってすごく可愛いし!」

「全然そんなことない!健太は、私にはもったいないくらいカッコイイと思うけど!」

はにかみながら、少しだけ対抗心で健太の自慢をしてみる。

それでも顔色を変えず「やっぱりみなちゃんもそう思うー?」と言った。

こんなことで嫌な気持ちになる私がどうかしてる、と一度心の中で整理をつけてから私も満面の笑顔に戻る。

「夏帆ちゃんは彼氏いるの?」

「ん?なんで?」

「夏帆ちゃんすごくかわいいし、モテそうだから」

本当に素直な感想を言っただけなのに、夏帆ちゃんは不愉快という感情が全面に出た表情をした。

「嫌味?」

「え!?そんなわけないじゃん!」

今の言葉の何が悪かったのだろうかと考え直してみても、全くわからない。

「みなちゃんのほうがかわいいし、モテるんだよ?」

小首を傾げて、またニコッと笑う夏帆ちゃんに、私は二面性を感じずにはいられなかった。



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