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33、指切りげんまん
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「辻井ってやつ、そんなにかっこよくないよな」
ボソッと口に出された言葉は健太の辻井君に対する嫉妬の言葉だった。
「そうだね」
「そうだねって...」
いつになく反応の薄い私に、オドオドしたようにのぞき込む健太。
私は朝の件で怒っているし、健太の友達の七海くんにも正直ムカついているんだと言ってしまいたかった。
ただ、人間の心というものは厄介なもので理由が分からず困ったようにしているのを見ると、突き放せなくなる。
「朝のことだけど」
私が切り出すと、健太は頬を緩めてどうぞ話してというように笑った。
「誰と仲良くしようととやかく言うつもりは無いよ。でも、私がいるときに仲間はずれみたいにされるのは腹が立つ。嫉妬とかじゃない。友達に無視されて腹が立つのと同じ」
「うん、そうだね。ごめん」
相変わらずニコニコして、分かってるのか分かってないのか。
「ほんとにごめん!もうやらないから!」
まだなんとなく納得はいかないけど、これ以上喧嘩したくないから「許す」と言った。
嬉しそうに笑うのが可愛くて、私も少し笑ってしまった。
それを見て健太は私の手を握ると楽しげにぶんぶん大きく振って駅まで歩いた。
次の日は揉め事も無く平凡な日々を過ごして、あの存在をすっかり忘れてしまっていた。
「いい加減にして」
背後霊のように後ろから現れて低い声で話しかけてきたのは、間違いなく七海くんだった。
「本は、俺の本」
「持ってるけど」
「返して」
七海くんは怒っているようで食い気味に言って手を差し出した。
「じゃあ約束して」
「は?なにを?」
「私が不快になるようなこと言わないで。ばかにしないで。鼻で笑わないで」
一息で言い切って背の高い七海くんを睨むと、「分かったから」と面倒くさそうにため息をついた。
「本当に?約束だからね?」
「分かったって」
「指切りげんまん」
小指を立てて出した手を見て、七海くんは驚いたように目を見開いた。
「.....高校生にもなって、指切りげんまん?」
「いいでしょ、小さい時から指切りげんまんが好きだったの」
「おかしな趣味だね」
「私と仲良くなったら絶対にしなくちゃいけない行事なの」
七海くんはまた時が止まったように固まって顔をひきつらせた。
「悪いけど、指切りげんまんはしない派なんだ」
「私がする派なの!嫌なら本は返さないから!」
本を受け取るために差し出されていた彼の手をぺいっとはねて教室まで走る。
その日から彼は隙あらば私の鞄を漁るようになって、私は常に持って行動しなくてはいけなくなってしまった。
ボソッと口に出された言葉は健太の辻井君に対する嫉妬の言葉だった。
「そうだね」
「そうだねって...」
いつになく反応の薄い私に、オドオドしたようにのぞき込む健太。
私は朝の件で怒っているし、健太の友達の七海くんにも正直ムカついているんだと言ってしまいたかった。
ただ、人間の心というものは厄介なもので理由が分からず困ったようにしているのを見ると、突き放せなくなる。
「朝のことだけど」
私が切り出すと、健太は頬を緩めてどうぞ話してというように笑った。
「誰と仲良くしようととやかく言うつもりは無いよ。でも、私がいるときに仲間はずれみたいにされるのは腹が立つ。嫉妬とかじゃない。友達に無視されて腹が立つのと同じ」
「うん、そうだね。ごめん」
相変わらずニコニコして、分かってるのか分かってないのか。
「ほんとにごめん!もうやらないから!」
まだなんとなく納得はいかないけど、これ以上喧嘩したくないから「許す」と言った。
嬉しそうに笑うのが可愛くて、私も少し笑ってしまった。
それを見て健太は私の手を握ると楽しげにぶんぶん大きく振って駅まで歩いた。
次の日は揉め事も無く平凡な日々を過ごして、あの存在をすっかり忘れてしまっていた。
「いい加減にして」
背後霊のように後ろから現れて低い声で話しかけてきたのは、間違いなく七海くんだった。
「本は、俺の本」
「持ってるけど」
「返して」
七海くんは怒っているようで食い気味に言って手を差し出した。
「じゃあ約束して」
「は?なにを?」
「私が不快になるようなこと言わないで。ばかにしないで。鼻で笑わないで」
一息で言い切って背の高い七海くんを睨むと、「分かったから」と面倒くさそうにため息をついた。
「本当に?約束だからね?」
「分かったって」
「指切りげんまん」
小指を立てて出した手を見て、七海くんは驚いたように目を見開いた。
「.....高校生にもなって、指切りげんまん?」
「いいでしょ、小さい時から指切りげんまんが好きだったの」
「おかしな趣味だね」
「私と仲良くなったら絶対にしなくちゃいけない行事なの」
七海くんはまた時が止まったように固まって顔をひきつらせた。
「悪いけど、指切りげんまんはしない派なんだ」
「私がする派なの!嫌なら本は返さないから!」
本を受け取るために差し出されていた彼の手をぺいっとはねて教室まで走る。
その日から彼は隙あらば私の鞄を漁るようになって、私は常に持って行動しなくてはいけなくなってしまった。
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