困ったことにあなたが好きみたい。

神木カロ

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32、天使のような彼女 健太Side

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「七海ー!!」

無事入学出来た俺は休み時間のたびに七海のところに言って、あの子のことを話した。

「みなちゃんね、教室覗くといっつも寝てんだ!その寝顔がもう天使みたいでさ!」

「ちょっと、本読めないから上半身起こしてくれる?」

「あ、ああ、ごめん。でさ!」

七海は永遠と話し続ける俺を邪険にしながら話は聞いてくれる。




そうやって七海に話すことしか出来なかった俺に転機が訪れた。

放課後、いつもより長く学校に残っていた俺は窓際でスヤスヤ眠る天使を見つけた。

教室には誰もおらず、少しの出来心で前の席に座った。

寝息が聞こえてくる。

なんとも言えない気持ちになって、胸が苦しくなった。

夕日が強く彼女の顔を照らすので、窓際に立って日差しを防ぐ。

そのせいか彼女はパッと目を開けて俺を見つけると、へらっと笑った。

逆光で顔はよく見えていなかったはずだけれど、恥ずかしくて俺は走って教室から出てそのまま帰ってしまった。



次の日も、彼女はぐっすり寝ていた。

夜寝ているのか心配になるほどよく寝る子だった。

「また夕日が」

俺は耐えきれずまた壁になって日差しを防いだ。

なのに今度は目を開けず、恥ずかしくて逃げてしまうくせに目を開けてほしいと願った。

その次の日も彼女は寝ていた。

本当に大丈夫なのか?と心配になりつつ、壁になろうと窓際に立つと、彼女は目を開けていた。

「一昨日と昨日と夕日を遮ってくれてありがとう」

「え!?起きてたの?」

俺の驚く声にくすくすと笑って、「会うたびに面白い反応するね」と言った。

会うたびに......?

もしかして、鼻血のこと覚えてくれてる?

「俺のこと覚えてくれてたんだ!」

自分でもびっくりするほどハイトーンで、彼女も眉をはの字にして笑った。

それが一瞬困ったようにも見えて、でも「うん」と言った。

やっぱり覚えてくれてたんだ。

「あ、あの!」

俺は手のひらの汗をズボンで拭って彼女に差し出した。

「初めて会った時からずっと好きでした!付き合ってください!」

寝起きの少しだけ乱れた髪の毛を手で整えながら、「え!?」と目を見開いて、そのまま動かなくなってしまった。

「絶対に大事にするし、好きな気持ちは誰にも負けないから!俺のことまだよく知らないと思うけど、それでも知ってもらえるように努力するから!」

差し出した手が寂しくて、恥ずかしくて、引っ込めそうになった時、おずおずと手が握られた。

俺は、天使のような彼女が出来てしまった。



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