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36、俺は好きだよ
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「みなって子、かわいいけどムカつくよね」
トイレの個室に入っている時、ふいに聞こえた声にびくっとした。
え、私?と耳をすまして唾を飲む。
「あー、あの子ね」
「分かる?なんか嫌な感じだよね」
「健太と一緒に電車乗った日、やばかったよね?あれはまじでひいた」
「あれはやばかったわ、不機嫌さ全開」
「健太とうちらが仲いいの嫉妬してんでしょ?」
あの日のことを言われていると気がついて、よりいっそう息を潜めた。
「健太人気者なんだし、そんくらい理解しろって」
「独占欲強い女子無理だわー」
「あんな子より他にもっといい子いるのにねぇ」
「早く別れてほしいわー」
続々と耳に入る悪口に、胸が苦しくなった。
そんなふうに思われてたんだ。
やっぱり、私と健太はあってないのかな。
言い返せないことが悔しくて、でもなんとなく納得してしまっているようで私は静かに存在を消し続けることを選んだ。
落ち込んだ気持ちで教室に戻って、自分の席をふと見ると夏帆ちゃんがうつ伏せていた。
顔を窓側に向けていて、綺麗な茶髪が太陽を浴びて光っている。
しばらく見惚れてから席に近づく。
「ねえ、無視ー?」
夏帆ちゃんが拗ねたような声を出しているのが聞こえて、寝てないのだと気がつく。
話しかけている相手は恐らく七海くんだ。
今朝返した本を黙々と読み進めつつ、ちらりと夏帆ちゃんを見て、また本に目線を戻す。
「人のこと無視するくらい面白いんだ、その本」
つい嫌味ったらしく出た言葉はしっかりと聞こえたらしく、「話しかけないでくれる?」と睨まれた。
「みなちゃんには返事するんだね」
夏帆ちゃんも不満げに言って自分の席に戻って行く。
私はやっと席に座って、机の上に夏帆ちゃんの髪の毛が落ちているのを見つけた。
そっとつまんで太陽にかざす。
「夏帆ちゃんって髪の毛すっごく綺麗」
「そう?茶髪って不良だと思われて嫌だけどな」
嬉しそうに言って笑う夏帆ちゃんに「俺は好きだよ、明るい髪」と突然会話に入ってきた七海くんに二人ともすっかり驚いた。
夏帆ちゃんは顔を赤く染めて照れながら「ありがとう」と言う。
七海くんはそれを見てため息をついて「あんたじゃなくて、明るい髪を褒めたんだよ」とまた一人の世界に入っていった。
私は認めようと思う。
「俺は好きだよ」と言った、いつもより口角の上がった七海くんは、惚れ惚れするほどかっこよかったと。
トイレの個室に入っている時、ふいに聞こえた声にびくっとした。
え、私?と耳をすまして唾を飲む。
「あー、あの子ね」
「分かる?なんか嫌な感じだよね」
「健太と一緒に電車乗った日、やばかったよね?あれはまじでひいた」
「あれはやばかったわ、不機嫌さ全開」
「健太とうちらが仲いいの嫉妬してんでしょ?」
あの日のことを言われていると気がついて、よりいっそう息を潜めた。
「健太人気者なんだし、そんくらい理解しろって」
「独占欲強い女子無理だわー」
「あんな子より他にもっといい子いるのにねぇ」
「早く別れてほしいわー」
続々と耳に入る悪口に、胸が苦しくなった。
そんなふうに思われてたんだ。
やっぱり、私と健太はあってないのかな。
言い返せないことが悔しくて、でもなんとなく納得してしまっているようで私は静かに存在を消し続けることを選んだ。
落ち込んだ気持ちで教室に戻って、自分の席をふと見ると夏帆ちゃんがうつ伏せていた。
顔を窓側に向けていて、綺麗な茶髪が太陽を浴びて光っている。
しばらく見惚れてから席に近づく。
「ねえ、無視ー?」
夏帆ちゃんが拗ねたような声を出しているのが聞こえて、寝てないのだと気がつく。
話しかけている相手は恐らく七海くんだ。
今朝返した本を黙々と読み進めつつ、ちらりと夏帆ちゃんを見て、また本に目線を戻す。
「人のこと無視するくらい面白いんだ、その本」
つい嫌味ったらしく出た言葉はしっかりと聞こえたらしく、「話しかけないでくれる?」と睨まれた。
「みなちゃんには返事するんだね」
夏帆ちゃんも不満げに言って自分の席に戻って行く。
私はやっと席に座って、机の上に夏帆ちゃんの髪の毛が落ちているのを見つけた。
そっとつまんで太陽にかざす。
「夏帆ちゃんって髪の毛すっごく綺麗」
「そう?茶髪って不良だと思われて嫌だけどな」
嬉しそうに言って笑う夏帆ちゃんに「俺は好きだよ、明るい髪」と突然会話に入ってきた七海くんに二人ともすっかり驚いた。
夏帆ちゃんは顔を赤く染めて照れながら「ありがとう」と言う。
七海くんはそれを見てため息をついて「あんたじゃなくて、明るい髪を褒めたんだよ」とまた一人の世界に入っていった。
私は認めようと思う。
「俺は好きだよ」と言った、いつもより口角の上がった七海くんは、惚れ惚れするほどかっこよかったと。
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