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47、間違えた道 健太side

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肺が潰れそうなほど息が苦しかった。

どうしてバレてしまったんだろう。

「え?なに?なんで?」

「友達が見たって」

卑怯な考え方の俺は、友達に見られただけなら嘘をつきとおせると思った。

俺は絶対にみなと別れられない。

浮気はしても、本気なのはみなだけだから。

「なにそれー!してないけど!」

みなが安心するように、信じてくれるように笑顔で言った。

「....え?でも、友達が見たって」

みなは目を見開いて唇を少し震わせていた。

大丈夫、畳み掛ければみなは信じる。

きっと、みなはやさしいから、きっと。

「見間違いでしょ!俺がみな以外の子とするわけなくない?信じてくれないの?」

「ほんとうに?」

「なんでそんなの信じちゃうの?俺はみなのこと信じてるよ?」

この調子ならいける。

絶対に、みなと別れたりなんかしない。

考えるのをやめたようにじっと俺から目を離さないみなに、チャンスだと思って顔を近づけた。

みなは、意外にもふいっと顔を背けた。

強引に顔に手を添えてキスをした。


ドアがガラッと音を立てて開いて、七海が教室に入ってくる。

「先生来るよ、帰らないと」

難を逃れたいがために「先に下駄箱で待ってるから!すぐ来いよ!」とみなに行ってすぐに教室を出た。

今頃はきっと、七海がみなを説得してくれているはずだ。

あいつは俺に不利なことはしない、絶対に。

小さいころのことがトラウマで、俺には逆らえないし波風立てずに平穏に過ごしていくことをベストとして生きている。

今まではそんな七海がいじらしかったけど、今は良かったと思ってる。

七海の話し方は妙に説得力があって、なんだか正しいような気がするから。

それで、みなが流されればいい。









それからしばらくみなが来るのを待っていると、うつむいたように歩いてくるみなが見えた。

「遅かったじゃん!先生に見つかった?」

できる限り潔白を装って話かけた。

みなは、思っていたよりしっかりとした目付きで俺を見て一呼吸すると決意したように口を開いた。

その瞬間、すごく嫌な予感がしたんだ。

「話があるの」

思ったとおり、これは別れ話の可能性がある。

「ん?さっきもしたのに?」

「ごめんね、さっきの話の続き。どうしても納得出来ない」

「どうして?俺のこと信じられない?」

「私が見てたの、キスしてるところ」

喉が言い訳するのを拒否しているように一瞬言葉に詰まった。

「どこから見てたか知らないけど、間近で見ていたわけじゃないんでしょ?見間違えてる可能性もあるよ」

苦しくなってきた。
これはもう、俺が完全に悪いのに。
どうしてこうも俺は身勝手になってしまったんだろう。

それでも俺はみなと別れたくなかった。

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