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46、夏帆ちゃんのいとこ

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健太は一向に自分の非を認めない。

信じてくれの一点張りで、私の気持ちを考えようともしなかった。

それは、いらないものまで理由をつけて捨てたがらない人のように。

部屋を片付けられない人のようで言い訳がましく、私の心を傷つけた。

「どうしても私と別れたくないの?」

「あたりまえだろ!」

「私もう健太のこと全く好きじゃなくなっちゃったんだけど、それでも?」

「それは、みなが誤解してるから....」

「誤解じゃない、絶対に」

「誤解だよ!」

意地でも引かないつもりの健太に、私はほとほと嫌気がさして唇を震わせた。

「分かった、そこまで言うなら考える」

健太の安心して嬉しそうに笑った顔は私の好きな顔で、それで私はよけいに胸が痛くなった。















「夏帆ちゃん、聞きたいことがあるんだけど」

最近やけに興味津々の夏帆ちゃんに協力してもらうことにした。

「この先輩、誰か知ってる?夏帆ちゃん顔が広いから知ってるかと思って」

「あ!知ってるよ!」

「なんて名前の先輩?」

「教えるけど、その前に事情を聞かせてもらってもいい?」

仕方なく七海くんのことは伏せて今までの事をすべて話した。

「...そっか。その先輩、私のいとこ」

「え!?」

「人の彼氏取るのが大好きな変人だよ、私と同じで」

「夏帆ちゃんと同じって?」

「私も健太のこと、狙ってたの。でも、みなちゃんのものじゃなくなるならもう興味無いや」

「....え?どういう意味?」

私の真剣な顔を見て、緊張が溶けるようにプッと笑って夏帆ちゃんは悪びれる様子もなく「まあまあ」と私の肩に手を置いた。

「世の中には、自分の手に入らなさそうな人を好きになる人だっているってこと。私、みなちゃん好きだしもう狙うのやめようかなって思ってきてたし」

ニコニコと笑って話す夏帆ちゃんはあっけらかんとして、どうしてそんな顔しているの、と言っているようだった。

それを見て、何か言いづらいような気がして口が開かなかった。

「とにかく、追い討ちかけるようで悪いんだけど、健太は確実に浮気したと思うよ」

「やっぱり」

「健太って、欲深いかもしくは、よっぽどみなちゃんが好きなのかもね」

「どうして?」

「今までの男は彼女に浮気したでしょって言われたら素直に認めてたもん。彼女より、うちのいとこを取ってたから。でも、健太は違ったよね。なにがなんでも自分から離れて行かないようにもがいてる」

心なしか楽しそうな夏帆ちゃんは、天使のような笑顔で「あんなやつ、早く別れちゃいな」と言った。


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