彼を好きな理由

神木カロ

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12、菜月VS暴力男

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「まだお昼食べ終わってなくて...」

なぜこの男は、怪我させたことを覚えていないのになおも私に絡んでくるのか。

それに図々しい、と言われた傷はまだ完全に塞がっていない。

今一番会いたくない人No.1の彼に連れていかれた時は、私はどうなってしまうのだろう。

「失礼します」

菜月が私を守る騎士のように颯爽と私を連れ去ってくれている。

菜月の後を追いながら、神様ありがとうこんな友達と出会わせてくれて!と感謝した。



のも、つかの間。



バァン!!

とんでもないスピードで菜月の背中と私のおでこの間に腕が入れられたかと思うと、壁がとんでもない音を立てて彼の手のひらで打ち付けられていた。

「ひっ!」

あまりの出来事に呆然とする私たちに、彼はニヤリとする。

菜月も私の手は離さないでいてくれているけれど、驚いたように後ろを向いた。

「先輩命令だから」

怯える私の顔に近づいて笑う彼に、不覚にもかっこいいと思ってしまった。

「....もしかして!」

菜月が私の手をパッと離して、急いで私の横まで回ってくると「あなた、この前!」と私の手首の薄くなったあざを彼と私の少ない距離の間に差し込んだ。

うそでしょ菜月!私はわすれたままでいて欲しいの!!

「その前にお前誰」

菜月を横目で見てズバッと言い放つ。

「私のことはどうでもいいです」

「お前みたいなタイプって男ウケ悪いんだぞー?」

「は!?そんな言い方!」

「いいよ六花。そんなのどうでもいい。この怪我を負わせたのはあなたかって聞いてるんです」

「ちょ、菜月!?」

わああああああああああ!!!!!

どうして蒸し返すの!

私的には忘れてもらったままのほうがいいんだってば!!!!

「そうだよ」

覚えてたんかい!!!!!!

私の心の中の渾身のツッコミなど聞こえないまま澄ました顔で私の手首を握った。

痛いっ、と反応したくなくて全身にぎゅっと力を入れると、「ふはっ」と笑う声がした。

うわ、バカにされた。

彼は案外優しく私の手首を握って、そのまま手のひらまで伝って無理やり手を握られた。

なぜこんな男と手を繋がないといけないわけ!?

「六花から手を離してください!」

菜月が怒っている。

彼も少し怒ったように菜月を睨んだ。

この人は怒ったら何するか分からないのに菜月までこんな怪我させられたら...。

「分かった!分かりました!2人でじっくりお話しましょう!」

私は彼の手を思いっきり握り返した。




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