彼を好きな理由

神木カロ

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17、解決しそうな予感 三月side

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朝、母さんのいない家で目が覚める。

なぜかその朝は快適で、俺は自分が最低な奴に思えて小さくため息をついた。

母さんがいなくなった次の日の朝、目が覚めた時にまず最初に母さんの様子を見に行かなければと思った。

いや、そういえばどっか行っちまったんだったな。

そう思いつつ部屋を覗くと、なぜかそこにいた。

「は!?母さん!?いつ帰ってきたんだよ!」

「昨日ね、三月の誕生日ケーキ買いに行ったんだけど道に迷っちゃってねぇ」

「俺の誕生日ケーキ?今六月だけど....」

首をかしげてにっこり笑う母さんに、俺はもうなにも言えなくて「ありがとう」と言った。

警察に母さんが自分で家に帰ってきたと連絡して、兄ちゃんに話すべきだと考える。

ひとりじゃ結局何も出来ないのに、つまらない意地張って母さんになにかあったら俺は責任取れないだろ。


『母さんのことで話がある。今日、仕事が終わったら俺たちの家に来て欲しい』


そう兄ちゃんにも連絡して朝ごはんを作った。

「昔はよく手伝うって言って、ピーラーで指を切ってたのに」

「.....もう切らないよ」

空元気の俺に母さんは気づかないまま「そうよねぇ、私の子供だものねぇ」と嬉しそうにする。

母さん、俺は料理の手伝いはしたことないよ。

俺の担当は洗濯の手伝いだよ。

よく指を切ってたのは兄ちゃんだよ。



「でも洗濯は相変わらず上手くできないわねぇ」

母さんは嬉しそうに笑ったまま、俺の作った目玉焼きを食べた。

俺も少し嬉しくなって、自分の口角が上がったのが分かった。

「今日、兄ちゃんが家に来るからどこにも行かずにに待ってなよ。お願いだから」

「陽が?楽しみねぇ」









さて、あいつが俺を好きになるにはどうすればいいか。

俺は母さんや兄ちゃんのことはすっかり頭から抜け落ちていた。


「....それでね、急に抱きしめられて!」

「え!?急に!?」

「そう!友達としか思ってなかったのに、意識しちゃってさ」


クラスで騒ぐ女子の声が耳に入って、ちらりと目をやると顔を赤く染めていた。

これか。

「なぁ、俺が急にキスしたら、俺のこと以外考えられなくなるか?」

あいつを落とすための単純な問いに、女子達は黄色い声をあげた。

「え?...え!?」

「俺のこと好きになる?」

「う、うん!」

色めき立つ女子を見て、これしかないなと思った。

このクラスの女子の幾人かは俺を好きになったような気がする。

『1年5組、横田六花。至急職員室の水谷まで来なさい』

突然の放送に、兄ちゃんは神様なんじゃないかなと思った。
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