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27、ごめん、兄ちゃん 三月Side
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俺のしたことを知らずにやたらと世話をやく兄ちゃんに罪悪感が押し寄せて、毎日毎日苦しかった。
元気出せよ、と沈んだ顔で言う兄ちゃんに全部話してごめんなさいと言いたかった。
そうすればこの恐怖から逃れられて楽になれるのにと。
「ちょっと怖いけど、警察署に言って母さんが死んだ時の詳しい状況を聞いてくるよ」
結婚して奥さんがいるのに、時間があけば俺の様子を見に来る兄ちゃんの、最後の俺に向けられた笑顔だった。
帰ってきた兄ちゃんは、あいも変わらずぼーっと母さんの部屋にいる俺に睨みつけた。
ひるんだ俺の襟首を絞め殺すように持って歯ぎしりをした。
「三月!お前なんで言わなかった!」
涙を溜めて俺を叱りつける。
「母さんは前にお前から1回捜索届けが出されてた!なんで俺に言わなかったんだよ!」
「なんで知って....」
「警察で聞いたんだよ!お前が母さんは認知症かもしれないって騒いでたことも!」
「ご、ごめん!兄ちゃんごめん!」
一歩遅れた俺の懸命の謝罪は、兄ちゃんには受け付けられなかった。
「親が離婚したら俺らは他人か?母さんは苗字は変えなかっただろ!俺たちがまだ兄弟でいられるように!」
「ごめん、兄ちゃん」
「お前が謝らなくちゃいけないのは母さんだ!お前しか母さんを病院に連れていけるやつはいなかったのに!認知症は初期なら薬で遅らせることもできるんだろ!?」
「....知ってたよ、ごめん。兄ちゃんごめん」
「知ってたのに行かなかったのか?」
「怖くて....」
「なんで俺に言わなかった?俺がついて行ってやったのに」
「兄ちゃんにも怖くて言えなくて.....」
「一体何が怖かったんだよ!!」
首がクッと締まって、俺は咳をした。
兄ちゃんは襟首から手を離すと、何が怖かったのか答えない俺にため息をついた。
「何も言わないなら、もう知らん」
兄ちゃんはカバンをひったくるように持って強い足取りで家を出ていった。
何が怖かったかなんて、今となってはよく分からない。
母さんが死んで、兄ちゃんが怒って失望されるより、怖いことなんてないのに。
一人になることほど怖いことなんて。
俺は母さんの病気のことなんて考えずに、ただ楽しく明るく過ごしたかった。
学校に行って好きな子に会って笑えれば。
そのために母さんのことを考えないようにしてたのに、それがこんなことになるなんて思ってなかったんだよ、母さん。
元気出せよ、と沈んだ顔で言う兄ちゃんに全部話してごめんなさいと言いたかった。
そうすればこの恐怖から逃れられて楽になれるのにと。
「ちょっと怖いけど、警察署に言って母さんが死んだ時の詳しい状況を聞いてくるよ」
結婚して奥さんがいるのに、時間があけば俺の様子を見に来る兄ちゃんの、最後の俺に向けられた笑顔だった。
帰ってきた兄ちゃんは、あいも変わらずぼーっと母さんの部屋にいる俺に睨みつけた。
ひるんだ俺の襟首を絞め殺すように持って歯ぎしりをした。
「三月!お前なんで言わなかった!」
涙を溜めて俺を叱りつける。
「母さんは前にお前から1回捜索届けが出されてた!なんで俺に言わなかったんだよ!」
「なんで知って....」
「警察で聞いたんだよ!お前が母さんは認知症かもしれないって騒いでたことも!」
「ご、ごめん!兄ちゃんごめん!」
一歩遅れた俺の懸命の謝罪は、兄ちゃんには受け付けられなかった。
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「ごめん、兄ちゃん」
「お前が謝らなくちゃいけないのは母さんだ!お前しか母さんを病院に連れていけるやつはいなかったのに!認知症は初期なら薬で遅らせることもできるんだろ!?」
「....知ってたよ、ごめん。兄ちゃんごめん」
「知ってたのに行かなかったのか?」
「怖くて....」
「なんで俺に言わなかった?俺がついて行ってやったのに」
「兄ちゃんにも怖くて言えなくて.....」
「一体何が怖かったんだよ!!」
首がクッと締まって、俺は咳をした。
兄ちゃんは襟首から手を離すと、何が怖かったのか答えない俺にため息をついた。
「何も言わないなら、もう知らん」
兄ちゃんはカバンをひったくるように持って強い足取りで家を出ていった。
何が怖かったかなんて、今となってはよく分からない。
母さんが死んで、兄ちゃんが怒って失望されるより、怖いことなんてないのに。
一人になることほど怖いことなんて。
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