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28、最低
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「なに、その顔」
三月は息を吐くようにつぶやく。
私は、彼の話を聞いて後悔した。
三月がどんな辛くて苦しくて重い話をしても、私は気にしないつもりだった。
好かれているから、好いているから、他の誰よりも彼の心を慰められるといつも読む小説の中の主人公のように、と信じきっていた。
何を話しても優しく聞いてくれるのは君だけだよ、と言われるに違いない。
きっと彼にとって唯一無二の人だと、運命の人だと。
私はとてもとてもうぬぼれていた。
そして、私には耐えきれない重みを彼から受け取った時、最低な人間になってしまったような気分だった。
優しく頷きながら彼の話を静かに聞いているはずだった私の心は、ひどく歪んでいた。
落ち着いて聞けると思っていた私には、三月がお母さんを見殺しにしたように見えてしまった。
私のせいにされているのでは、と。
三月の母親が亡くなったのは三月のせいで、その責任は私にあるのだと言われているように感じて私は強ばっていた。
もちろん、三月はそんな意味で言ったわけじゃない。
最初に嫌いにならないでと前置きをして、誰にも言えなかった話を吐き出しただけ。
そんな心細い彼に向かって、私は今どんなことを思っているのか。
好きだなんだと家まで言って、自分が聖母かのように勘違いして、彼に言わせた結果がこれか。
ひどすぎる。
死にたくなるほど胸が痛い。
そんな私の顔を見て傷つきまくった三月は涙を一筋流してフラフラと部屋に戻る。
ベランダの鍵を閉め、カーテンを閉め、最後に部屋の鍵を閉めた。
再び閉められたドアに、今度は投げかける言葉が何も無い。
私も彼を傷つけた。
みんながよってたかって斧を入れて今にも倒れそうにぐらつく木に、最後のひと振りをいれたのは私だった。
こんなことになるなら来なければよかった。
話の途中、後悔しながら三月がどれだけ泣いていたか見ていたはずなのに。
もう二度と開かないようなドアを見つめて、涙があふれてきた。
隣の部屋は三月の部屋のようで、脱ぎ捨てられた服が床に落ちている。
少しだけ覗いてみたい気持ちになって遠くから部屋を観察した。
そして、大切にハンガーに掛けられてカバーまで被せられているものを見つけた。
近づいてよく見ると、それは私が彼を初めて見た時に置いていってしまったブレザーだった。
三月は息を吐くようにつぶやく。
私は、彼の話を聞いて後悔した。
三月がどんな辛くて苦しくて重い話をしても、私は気にしないつもりだった。
好かれているから、好いているから、他の誰よりも彼の心を慰められるといつも読む小説の中の主人公のように、と信じきっていた。
何を話しても優しく聞いてくれるのは君だけだよ、と言われるに違いない。
きっと彼にとって唯一無二の人だと、運命の人だと。
私はとてもとてもうぬぼれていた。
そして、私には耐えきれない重みを彼から受け取った時、最低な人間になってしまったような気分だった。
優しく頷きながら彼の話を静かに聞いているはずだった私の心は、ひどく歪んでいた。
落ち着いて聞けると思っていた私には、三月がお母さんを見殺しにしたように見えてしまった。
私のせいにされているのでは、と。
三月の母親が亡くなったのは三月のせいで、その責任は私にあるのだと言われているように感じて私は強ばっていた。
もちろん、三月はそんな意味で言ったわけじゃない。
最初に嫌いにならないでと前置きをして、誰にも言えなかった話を吐き出しただけ。
そんな心細い彼に向かって、私は今どんなことを思っているのか。
好きだなんだと家まで言って、自分が聖母かのように勘違いして、彼に言わせた結果がこれか。
ひどすぎる。
死にたくなるほど胸が痛い。
そんな私の顔を見て傷つきまくった三月は涙を一筋流してフラフラと部屋に戻る。
ベランダの鍵を閉め、カーテンを閉め、最後に部屋の鍵を閉めた。
再び閉められたドアに、今度は投げかける言葉が何も無い。
私も彼を傷つけた。
みんながよってたかって斧を入れて今にも倒れそうにぐらつく木に、最後のひと振りをいれたのは私だった。
こんなことになるなら来なければよかった。
話の途中、後悔しながら三月がどれだけ泣いていたか見ていたはずなのに。
もう二度と開かないようなドアを見つめて、涙があふれてきた。
隣の部屋は三月の部屋のようで、脱ぎ捨てられた服が床に落ちている。
少しだけ覗いてみたい気持ちになって遠くから部屋を観察した。
そして、大切にハンガーに掛けられてカバーまで被せられているものを見つけた。
近づいてよく見ると、それは私が彼を初めて見た時に置いていってしまったブレザーだった。
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