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俺と食べ物談議
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さて、料理をすると言っても何を作ろうか正直迷ってしまう。一口に料理といってもサラダやスープといった付け合わせのものからメインディッシュとなる食べ物だったりそれこそ女性が好きなもので言えばデザートだったり。
料理とは大まかなくくりであってジャンルの中の細かい部分は料理自体とは厳密には異なる。
自分で作るときとかなら別にサラダという名の野菜を乱雑に切って皿に盛っただけの粗雑なもので十分付け合わせは事足りるのだが、育ちの良いお嬢様たちにそれらを口にさせるのは些か良心が傷む。
男友達とかはいいんだよ量求めてるから。
「…そもそも女性って何が好きなんだ」
根本的な問題はそこにあった。残念ながら彼女がいた経歴は無い。告白されたことは何回かあるのだが、友人に話を聞く限り、彼女とは付き合っている間は実に良いものらしいが後から考えるとそうでも無いらしい。
本当にお互いの事が好きなら問題ないのかもしれないけども、そういった話を聞いていると生半可な気持ちで恋愛感情を結ぶ気にもなれない。
当然料理をふるまう相手は男ということに加え、俺自身の性別も男だということもあって女性の料理に対する価値観というものが全く以て理解できない。単に知識不足なだけなのだが。
ともかく、憶測だけで物事を考えることほど危険なものは無い。ここは先輩辺りに意見を仰ぐべきか。
「先輩はどういう食べ物が好きですか?」
「ん…?ボクはまぁ鶏肉とかが好きだが」
「あぁ…すみません、俺の伝え方が悪かったです。どんな料理が好きかって聞きたかったんです」
我ながら日本語力がない。今改めてその事実と向き合うことになってしまった。
先輩に無駄な手間を取らせてしまった。
「そういうことか。いやすまない。ボク自身もそのあたりの意図を組み切れていなかった。
…だがそういうことを聞く相手はお嬢様のほうが良いのではないか?口にするのはお嬢様たちなのだから」
「何言ってるのあなたも食べるのよ。今日は人数が少ないからお姉さまと二人っきりになるじゃない。別にお姉さまが嫌いだとかそういうわけじゃあないんだけど、会話が持たないのよ。お父様たちもいないし今日くらいは一緒に食卓を囲みましょう」
そういうものなのか執事って。もっときっちりした主従関係があると思っていたのだが。
主によってこの辺の距離感は違うんだろうということは容易に想像がつくが…その中でもとりわけフレンドリーな方だろう。お嬢様は。
まぁ聞いている限りでは日乃本先輩とも仲が良いようだし付き合いが長いとみて間違いない。
俺も俺で小さい頃からお嬢様とは遊んでいたことがあったし、気心の知れた間柄といっても差し支えないので、俺たちだからこそこういうことを言いだしているのかもしれないと思った。
「でもそうねぇ、私は基本的に食べ物の選り好みはしないわ。よほど美味しくなかったり毒物が入っていたりでなければ食べるもの。レーズン以外は」
「レーズンというと干しブドウですか。苦手な方多いですよね。俺は結構好きなんですけど友人にはあんまり好き好んで食べるような奴はいないです」
「ボクもあまり得意ではないな。食べようと思えば食べられなくもないが…如何せんあの食感が苦手で」
食感というとあのぐにっとした感じだろうか。
あれも美味しさの一つなのに…とは思うものの確かに苦手な人は苦手そうだ。確かに少し癖が強いから好みがわかれるのかもしれない。パクチーほどではないにしろ好き嫌いがはっきり分かれるものと言っていい。良くスイーツなどにも使われるほどなので人気はそれなりにはあると思う。その好みの別れ具合が激しいというだけで。
もしかしたら俺の周りだけでそういうことが起こっているのかもしれないが。
「んで、結局お嬢様たちはどういう料理が好きなんですか。盛大に話が逸れちゃってますよ」
このままではいけないと思い、話題に軌道修正を加えるのも思考しながらとはいえ忘れない。
ずっと食べ物談議になってしまっていたら料理を作るのが本格的に遅くなってしまう。それは避けなければならない。体脂肪というのは夜遅くなればなるほど付きやすくなるらしく、お嬢様は勿論、メイドではなく執事としてすらっとした体形を保っている日乃本先輩だって体重には非常に気を使っているだろう。
俺の料理のせいで体重が増えたと怒られるのも不本意だし悲しまれるのもうれしくない。
「そうね…パスタがちょっとだけ残ってしまったとこの間食事の係が言っていたわね。ちょっとといっても具体的な量はわからないけれど」
「パスタですか…一応確認しておきますけど一般庶民が親しめる系のパスタですよね。本場イタリアの名前すら聞いたことのないような異次元のパスタは処理できませんよ?」
俺が知っていて料理したことがあるのはスパゲッティやフィットチーネ、マカロニくらいのものだ。
フィットチーネはその名前を冠したお菓子もあるのでそれなりに知名度はあると思うし、マカロニもよくグラタンなんかに入っている。スパゲッティは言わずもがな。むしろ知らない人の方が珍しいと思います。
「あぁ問題ないわ。たまにお土産でもらったりすることは在るけれど、うちで料理として出るのは普通の一般的に知られているものという認識で構わないわ」
「そうそう折弥クン。パスタならその上の棚の中に入っているからな」
「ありがとうございます。…みなさんっていっつもどれくらいの量なのでしょうか。どれくらい作ったらいいのかわからないのですが」
一口に女性といっても油断は禁物である。この世には三人前や五人前を平気でぺろりと平らげてしまう女性もいるらしい。いっぱい食べてくれる方が作る方としては嬉しいのだが、あまり食べられない人に無理に作って残しましたとかなら作らない方が幾分もましだ。
女性の立場としてはたくさん食べたくてもすこし少なめに申告されるかもしれないが少なめな分にはまたゆでればいいだけだ。多めに申告する人間は…いないよな?
「ふむ。私は一人分くらいかしら。穂丸は二倍くらい食べるわ」
「お、お嬢様!はしたない先輩だと思われるじゃないですか!」
「いえ結構です。もう既に若干思いつつあるので」
そう言ってパスタを探しながらお湯を沸かし始めるのだった。
料理とは大まかなくくりであってジャンルの中の細かい部分は料理自体とは厳密には異なる。
自分で作るときとかなら別にサラダという名の野菜を乱雑に切って皿に盛っただけの粗雑なもので十分付け合わせは事足りるのだが、育ちの良いお嬢様たちにそれらを口にさせるのは些か良心が傷む。
男友達とかはいいんだよ量求めてるから。
「…そもそも女性って何が好きなんだ」
根本的な問題はそこにあった。残念ながら彼女がいた経歴は無い。告白されたことは何回かあるのだが、友人に話を聞く限り、彼女とは付き合っている間は実に良いものらしいが後から考えるとそうでも無いらしい。
本当にお互いの事が好きなら問題ないのかもしれないけども、そういった話を聞いていると生半可な気持ちで恋愛感情を結ぶ気にもなれない。
当然料理をふるまう相手は男ということに加え、俺自身の性別も男だということもあって女性の料理に対する価値観というものが全く以て理解できない。単に知識不足なだけなのだが。
ともかく、憶測だけで物事を考えることほど危険なものは無い。ここは先輩辺りに意見を仰ぐべきか。
「先輩はどういう食べ物が好きですか?」
「ん…?ボクはまぁ鶏肉とかが好きだが」
「あぁ…すみません、俺の伝え方が悪かったです。どんな料理が好きかって聞きたかったんです」
我ながら日本語力がない。今改めてその事実と向き合うことになってしまった。
先輩に無駄な手間を取らせてしまった。
「そういうことか。いやすまない。ボク自身もそのあたりの意図を組み切れていなかった。
…だがそういうことを聞く相手はお嬢様のほうが良いのではないか?口にするのはお嬢様たちなのだから」
「何言ってるのあなたも食べるのよ。今日は人数が少ないからお姉さまと二人っきりになるじゃない。別にお姉さまが嫌いだとかそういうわけじゃあないんだけど、会話が持たないのよ。お父様たちもいないし今日くらいは一緒に食卓を囲みましょう」
そういうものなのか執事って。もっときっちりした主従関係があると思っていたのだが。
主によってこの辺の距離感は違うんだろうということは容易に想像がつくが…その中でもとりわけフレンドリーな方だろう。お嬢様は。
まぁ聞いている限りでは日乃本先輩とも仲が良いようだし付き合いが長いとみて間違いない。
俺も俺で小さい頃からお嬢様とは遊んでいたことがあったし、気心の知れた間柄といっても差し支えないので、俺たちだからこそこういうことを言いだしているのかもしれないと思った。
「でもそうねぇ、私は基本的に食べ物の選り好みはしないわ。よほど美味しくなかったり毒物が入っていたりでなければ食べるもの。レーズン以外は」
「レーズンというと干しブドウですか。苦手な方多いですよね。俺は結構好きなんですけど友人にはあんまり好き好んで食べるような奴はいないです」
「ボクもあまり得意ではないな。食べようと思えば食べられなくもないが…如何せんあの食感が苦手で」
食感というとあのぐにっとした感じだろうか。
あれも美味しさの一つなのに…とは思うものの確かに苦手な人は苦手そうだ。確かに少し癖が強いから好みがわかれるのかもしれない。パクチーほどではないにしろ好き嫌いがはっきり分かれるものと言っていい。良くスイーツなどにも使われるほどなので人気はそれなりにはあると思う。その好みの別れ具合が激しいというだけで。
もしかしたら俺の周りだけでそういうことが起こっているのかもしれないが。
「んで、結局お嬢様たちはどういう料理が好きなんですか。盛大に話が逸れちゃってますよ」
このままではいけないと思い、話題に軌道修正を加えるのも思考しながらとはいえ忘れない。
ずっと食べ物談議になってしまっていたら料理を作るのが本格的に遅くなってしまう。それは避けなければならない。体脂肪というのは夜遅くなればなるほど付きやすくなるらしく、お嬢様は勿論、メイドではなく執事としてすらっとした体形を保っている日乃本先輩だって体重には非常に気を使っているだろう。
俺の料理のせいで体重が増えたと怒られるのも不本意だし悲しまれるのもうれしくない。
「そうね…パスタがちょっとだけ残ってしまったとこの間食事の係が言っていたわね。ちょっとといっても具体的な量はわからないけれど」
「パスタですか…一応確認しておきますけど一般庶民が親しめる系のパスタですよね。本場イタリアの名前すら聞いたことのないような異次元のパスタは処理できませんよ?」
俺が知っていて料理したことがあるのはスパゲッティやフィットチーネ、マカロニくらいのものだ。
フィットチーネはその名前を冠したお菓子もあるのでそれなりに知名度はあると思うし、マカロニもよくグラタンなんかに入っている。スパゲッティは言わずもがな。むしろ知らない人の方が珍しいと思います。
「あぁ問題ないわ。たまにお土産でもらったりすることは在るけれど、うちで料理として出るのは普通の一般的に知られているものという認識で構わないわ」
「そうそう折弥クン。パスタならその上の棚の中に入っているからな」
「ありがとうございます。…みなさんっていっつもどれくらいの量なのでしょうか。どれくらい作ったらいいのかわからないのですが」
一口に女性といっても油断は禁物である。この世には三人前や五人前を平気でぺろりと平らげてしまう女性もいるらしい。いっぱい食べてくれる方が作る方としては嬉しいのだが、あまり食べられない人に無理に作って残しましたとかなら作らない方が幾分もましだ。
女性の立場としてはたくさん食べたくてもすこし少なめに申告されるかもしれないが少なめな分にはまたゆでればいいだけだ。多めに申告する人間は…いないよな?
「ふむ。私は一人分くらいかしら。穂丸は二倍くらい食べるわ」
「お、お嬢様!はしたない先輩だと思われるじゃないですか!」
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そう言ってパスタを探しながらお湯を沸かし始めるのだった。
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