お姉ちゃんと仲良くしような

武 働丁

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甲摩忍

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 武は会社に辞表を出してきた。
 「あんたの上司の女さ、あんたが鬱病にかかったって言ってゲラゲラ笑ってたよ」
  総務課のおばさんがニタニタ笑いんがら教えてくれた。
  武にとってはどうでもよかった。もうこんな職場とはおさらばだ。
 どんな辛い仕事でも努力してやる。でも、精神的な事には耐えられない。
 無理に仕事を続けて心を壊してしまうなら、さっさと辞めてしまおう。
 虐めた連中に復讐したいとは思わない。
 そいつらがどうなろうと、辞めてしまえば関係ない。
 いつまでも虐めた奴を呪って自分の人生を狭めるよりも、
 新しい人生を切り開こうと武は思った。
 そんな、もう二度と会わない連中の事なんてどうでもいいんだ、
 それより、勇名と信頼関係のある有意義な生活がしたい。
 辛い仕事でもいい、人間関係が良好ならどんな辛い仕事でも耐えられると思った。
 
 武は勇名と一緒に秋葉原の見回りに出た。
 すると、早速、秋葉原の裏通りに黒ずくめの忍者が居た。
 むっちゃ目立つ。何で忍びなのに、こんなムッチャ目立つ格好をするのか。
 「正義の忍者黒影くろかげ参上!」
 黒づくめの衣装で黒い仮面を付けた忍者は腕組みしながら言った。
 「あんただれ?」
 無表情に勇名が問う。
 「私は忍者丙団序列第一位、仮面の忍者黒影だ!」
 黒影は忍者衣装の懐に右手を入れる。
 「むっ!」
 勇名は身構える。
 黒影は懐からエチケット灰皿を取り出す。
 そして勇名に近づく。
 「はっ!」
 警戒した勇名は後ろに飛び退く。
 黒影はスタスタと無造作に前進し、
 勇名がいた場所に落ちていた吸い殻をひろってエチケット灰皿に入れる。
 「は?」
 勇名が首をかしげる。
 「あ、いやだって街の美観を損ねますから」
 「え?あ、秋葉原の美観維持にご協力いただきありがとうございます」
 勇名が頭をさげた。
 「いえいえ、こちらこそ、私の下の者がご迷惑をおかけしまして」
  黒影も頭をさげた。
 「ところで、本日は何をしに来られたのですか?」
 「秋葉原の清掃に」
 「仲間の敵討ちとかしなくていいの?」
 「あれは勝手に関西の暴力団の仕事を受けたので。私は正義の仕事しか受けないので」
 「うわっ」
 勇名はちょっと身を引いた。
 「何か?」」
 「いえいえ、何も」
 勇名は武の方を見る。
 「じゃあ、行くか」
 「いいの?」
 「いいのって、向こうさんがいいって言ってんだから 
 気が変わらないうちにさっさと行くぞ」
 
 勇名が武の手を引いて立ち去ろうとする。
 
 「待てや、腐れオタクども」
 関西弁の柄のワルそうな声が響く。
 勇名の目の前に坊ちゃん狩りの顔の四角い、
 ちょと鼻が上を向いた二〇代前半の忍者が立ちはだかる。
 「めんどくさいのキター」
 勇名がものすごい渋い顔をした。
 「え?知り合い?」
 武が勇名の顔を見る。
 「知ってるも知らないも、むっちゃ有名人だよ」
 「ウイキとかに載ってる?」
 「バカ!それは禁句だよ!」
 武の言葉を聞いて男の眉がつりあがる。
 「あ?ウイキやと?ワシみたいな有名人がウイキに載ったんを、
 クソウイキが記事にする価値がないとかぬかしよって削除したあのウイキか、ワレ!」
 「あの~どなたさんでしょうか?」
 「お前、一見忍者みたいやけど、この不死裂水鬼ふじさきみずき様を知らんとは潜りやのお。
 忍者の序列一位やぞ、ワシは!」
 不死裂は怒鳴った。
 「え?一位はこっちの黒影さんじゃないの?」
 「アホか!そいつは甲乙丙丁の下から二番目のくっさい集団の一番じゃ」
 「お前は上から二番目の集団だけどな」
 すかさず勇名が突っ込みを入れる。
 「やかましわい!序列十位のクソ女が偉そうに言うな!ワシは一位やぞ!」
 「乙忍ごときが甲摩忍に向かってクソ呼ばわりとはいい度胸だ。かかってこいや」
 「じゃかましわい!バフしか使えんヒーリング女が!
 こっちはバフとデバフ両方つかえんねんぞ!」
 「あはは、やっちまった。パラメーター均等に配ったせいで
 どの分野でも中途半端な魔法戦士タイプだ」
 勇名が鼻で笑った。
 「中途半端かどうか、その体で思い知らせたろかい!」
 不死裂がファイティングポーズを取る。
 その時、勇名の横をメガネをかけて肥ったオタクが通り過ぎた。
 食べ汚れで黄ばんだTシャツに手提げカバンを体の斜め横にかけている。
 オタクはそのまま勇名の前に進み出た。
 「タメ蔵師匠!」
 その時、黒影が大声で叫んだ。
 
 

 
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