うつしよの波 ~波およぎ兼光異伝~

春疾風

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小早川秀秋の章

第七話 岡山籐四郎

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 伏見城下、小早川屋敷。秀秋は結局伏見城を退く事になり、徳川家康に連れられ屋敷へと戻っていた。
「お気遣い痛み入りまする」
 その来客用の座敷にて、秀秋は深々と辞儀をした。
「顔をお上げくだされ。儂はまだ礼をされる事など何もしておらぬ」
 座敷には秀秋と家康、二人だけである。
「私は……豊家には要らぬのでしょうか」
 表面上は平静を装っていたが、その心中は荒れに荒れていたのだろう。平生他人には決して漏らさぬような言が秀秋の口をいて出た。
「殿下も本心ではござらぬ。少なくとも、儂から見れば秀秋殿は豊家のかなめにござる」
 家康が間合いをつめ、秀秋の上体を起こす様に肩に手を置いた。
「そうでしょうか」
 上体を起こした秀秋が家康に問うと、家康は大きく頷く。
「秀頼公がお育ちなされるまで、真に豊家を支えられるのは親族にして後継であらせられた秀秋殿のみでござろう」
 親族にして後継。その言葉が秀秋の胸中深く、錨の様に沈む。秀秋にとって、その言葉が示す人物は己では無かった。
「では、秀次義兄上は何故……」
 無意識のうちにその名が漏れ出していたのだろう。秀秋ははたと気付き、かぶりを振った。
「いや、忘れて下さい」
 家康は秀秋の言を聞いてか聞かずか、脈絡なく話し出した。
「儂には、信康と言う息子がおった」
 松平信康。家康の長男であり、結城秀康、徳川秀忠らの異母兄にあたる人物である。
「聡明で、優しい子でな。秀康が生まれた時なぞ儂がなかなか会おうとせなんだ故、面会せよと求めてきたものだ」
 そう話す家康の姿は、子煩悩な世俗の父親の姿とまるで変わらないものであった。だが。
「そう、聡明であった」
 家康がそこまで話すと、静寂が訪れた。この先は、家康も出来るならば忘れたいのであろう。
「……その先をお聞きしても?」
 沈黙に堪りかね、秀秋が家康の言を促す。
「すまぬ。秀秋殿に聞いて頂きたい故話しておったのだ。続けよう」
 家康は大きく息を吸い、一息に話し出した。
「だからこそ儂は、信康が謀叛を企んでいると疑った。いや、今となっては疑っていたのかすらも分からぬ。気付いた時には、徳川は儂と信康派に二分しかかっていた……少なくとも儂はそう考えた」
 秀秋の目を射抜くように見つめたまま、家康が続ける。その眼差しに、秀秋は息をすることすら出来なかった。
「儂は、主君である信長様に事態の収束を図って貰うべく諮詢しじゅんした。信長様の答えは、『お主の思う通りにせよ』であった。そう言われては、儂は『信長様の望む通りの』答えを出すより他に無かった。家臣の統制も出来ぬ者に、織田家での居場所など無いのだから」
 まるでぽっかりと穴の開いているかのような漆黒の眼で、家康は最後の言を吐きだした。
「その日付は忘れもせぬ。天正七年九月十五日。信康は儂の命で切腹して果てた。そして儂は信康の母、己の正室をも殺せと命じたのだ」
 そう言って家康はしばし瞑目し、また目を開いた。そこには先程の様な穴は無かった。
「故に、儂は殿下のお考えも少しではあるが分かる気がするのだ」
 秀秋は家康から僅か目を逸らし、畳の縁を見ていた。
 殿下のお考え……家康殿に信康殿と御正室を殺させた「何か」が――殿下にもあったのだろうか。
「秀秋様、家康殿、宜しいでしょうか」
 不意に、障子の向こうから声がした。稲葉正成の声である。
「何だ、正成」
「は……」
 秀秋が返答すると、正成が恭しく障子を空け入室する。正成は座ったまま頭を垂れた。
「秀秋様への御沙汰は……越前北ノ庄への転封との事です」
 秀秋の息が止まる。家康と話している内に、己の処分についての煩慮をふつに忘れていたのである。
「越前、北ノ庄? 筑前はどうなる」
 秀秋の声が、僅かに震える。隆景より受け継いだ筑前が、己の物ではなくなる。その事実を認識出来ず、否、認識を拒否するが故か秀秋は正成に問い返していた。
「大変申し上げにくいのですが……」
「構わん、申せ」
 正成は些かたどたどしい口調で続けた。
「殿下は、石田三成殿に拝領させると」
 三成。また、あの男が――。秀秋は暫し言葉を失う。何故、あの男はここまで私を追いつめるのだ。其程までに私はあの男から憎まれていると言うのか?
 秀秋の逡巡を裂いたのは、家康の声であった。
「秀秋殿の旧領は、必ず儂が復領させ申す」
 その家康の言に、秀秋は思わず聞き返す。
「なにゆえ、家康殿はそこまでして私を救おうとなさるのです」
 家康は暫しの沈黙の後、口を開いた。
「秀秋殿が、そなたが……少しばかり信康に見えたが故」

 五月二十二日。伏見城、謁見の間。
「筑前への転封、お受けできかねまする」
 石田三成は明瞭に、秀吉へと答えた。
「なにゆえじゃ、佐吉」
 秀吉は落ち着いた面持ちで三成へ問う。三成は命に背いていたが、秀吉に咎める様子は無い。
 まるで、三成がこれから何を言わんとするか理解しているかの様であった。
「私は、この身が果てるまで殿下の御側にお仕え致したいのです」
 三成は床に付くほどに深々と辞儀をした。彼の最上級の敬意である。いや、彼がその敬意を示す相手は秀吉以外には有り得無かった。
「佐吉、おみゃあ……分かって言っとるんか」
 秀吉の言は、思いのほか穏やかであった。三成は頭を上げ、しかと秀吉を見た。
「全て承知しておりまする」
 例えこの言で己の生き様が全て決まろうとも、三成に後悔など微塵も有りはしなかった。否、秀吉に仕え始めた時より、彼は――。
「この佐吉、殿下より他に御奉公申し上げる心算は御座いませぬ」
 彼にとっては、それが全てであった。ふと、三成の脳裏に盟友の顔が浮かぶ。
 やはり、お前は俺を阿呆だと言うのだろうな、吉継。
「分かった。筑前は豊臣の蔵入地としよう。じゃが、蔵入地の代官として暫し下向して貰いたい。頼めるか」
「愚問にございまする」
 そう言って三成は頷いた。
 確かに俺は阿呆なのだろう。ならば、阿呆なら阿呆なりに踊ってやろう。
 三成はただその思いを胸に、謁見の間を後にした。

 三成が去った謁見の間で、秀吉は座していた。本日はもう一名、客人があった。
「殿下に御目通り叶いまして、恐悦至極に存じます」
「なにを他人行儀なことを言うとる。こっちゃ来い、家康」
 徳川家康である。家康は辞儀をすると秀吉の正面に坐した。
「さっきまで佐吉が来ておっての。あやつ、筑前はいらぬと言うてきたわ」
 痩せた頬肉を上げて秀吉がにっかと笑う。能面の翁の様なその笑顔に、家康は往年の羽柴藤吉郎の面影を見た。
「三成殿は真に得難き忠臣で御座いますな」
 福々とした頬肉を上げて家康がにまりと笑う。絵草子の狸の様な、どこか愛嬌のある笑顔であった。
「それで、何用じゃ? まさか、秀秋の事か」
 不意に眉間に皺を寄せ、秀吉が家康に問う。
「いいえ、たまには茶を飲みながら昔語りでもどうかと思いましてな」
 先程の満面の笑みでは無かったが、依然として笑顔のまま家康は答えた。
「昔話り、か……。おう、茶席を用意させよう」
 その茶室はこじんまりとしており、素朴と豪奢が不思議と調和していた。外交の手段として茶席を利用する際、秀吉は己の権力を誇示するかの如く金色の茶室を使っていたが、気心の知れた間柄ではその様な茶室を使う必要もない。故に、秀吉はもう一つ茶室を作らせていたのである。
「家康にもその様な事がのう」
 そう言って一息に茶を飲み干し、秀吉がまた口を開く。
「信康殿の事、儂ぁ信長様が命じたと思うておった」
「全てはこの家康の独断でござった。命と言うのであれば、己自身の命であったのでしょうなあ」
 手にした器を撫でながら、家康は独り言のようにそう呟いた。
「……子を手にかけるというのは、辛いものじゃなぁ」
 ふと。秀吉は空になった器を取り落とし、ぽつりと漏らした。側で茶を点てていた黒衣の僧がその手を止めて器を拾い上げる。
「家康。儂は、間違っていたのじゃろうか」
 秀吉の指が、小刻みに震えている。家康は手にした器を脇に置き、秀吉の掌を包むように握った。
「何を仰っておられます。この日本ひのもとで誰が殿下を誤っておられると判ずる事が出来ましょう。この日本は殿下であり、殿下はこの日本なのですから」
 秀吉の震えは、家康の言葉にも止む事が無い。縋る様な目で、傍らの僧に問いかけた。
「のう、江雪。儂は……」
 岡野江雪斎。かつて板部岡江雪斎の名で北条家に仕えていた外交僧である。北条家が滅亡して後は、御伽衆として秀吉に仕えていた。かつては茶人・山上宗二との親交もあり、茶道の造詣が深い人物でもあった。
「世には、北条は過ちを犯したと申す者もおります」
 江雪斎は手にした器を眺めたまま、しずかな声で語り出した。
「殿下と、いいえ、天下と戦をし滅んだと。ですが、拙僧はそれが過ちであったとは思っておりませぬ」
 そこまで言うと江雪斎は秀吉に向き直り、続けた。
「氏政様も、決して過ちだとは思っておられなかったでしょう。抗って名を残すか、恭順して家を残すか。どちらが正しく、どちらが過ちか。世にあまねく事々の正誤は、各々が判ずるより他に無いのだと……拙僧は愚考致します」
 秀吉は家康の手に握られた己の掌へ視線を落とし、暫し沈黙した後口を開いた。
「家康、秀秋との席を整えてくれるか」
 家康は目を丸くし、秀吉へ問いかける。
「殿下、それはもしや」
 秀吉は無言で力強く頷く。それはまるで、空にやっていた気が秀吉のその身に戻ってきたかの様であった。
「殿下っ、殿下……有難き上意に御座いまする……!」
 家康は秀吉の手を固く握りしめ、その丸い眼からただ涙を零していた。

 斯くして六月二日。秀秋は家康に連れられ、伏見城へと登城した。
「よう来てくれた、秀秋! 家康も苦労を掛けたな」
 謁見の間ではなくある一室に通された秀秋と家康を迎えたのは、秀吉その人であった。手を大仰に広げ満面の笑みで二人を迎える秀吉に、秀秋は部屋の入り口で立ちすくむ。
 その足を止めたのは、驚嘆ではなく恐怖であった。今日、私は何を命じられるのか。
 家康と連れ立っていた際は、家康の様子から悪しき事ではないと思っていたが、いざ秀吉を眼前にすると、その笑顔すら空恐ろしい物に感じられた。
 思い返せば、私は随分昔から殿下の笑顔を見ていなかった様な気がする。
「すまんが、家康は少し外して貰えるか」
「承知仕りました」
 家康は深々と辞儀をしその場から去っていく。秀秋は未だ動けず、部屋の前で立ち尽くしていた。
「秀秋、こっちゃ来て座るとええ」
「はい」
 秀吉の声に、漸く秀秋の足が動く。恐怖によって止まった足を動かすのもまた恐怖であった。
 殿下の命は、この日本では絶対なのだ。
 蔚山城の一件で秀吉に反論した際、秀秋はある種の興奮状態にあり我を忘れていた。しかし、こうして平生の冷静な状態にある今、秀吉の命に逆らう気など起こらなかった。例えそれが、秀吉としては命令の心算など毛頭無かったのだとしても。
「なんじゃ、固いのお」
「申し訳ございません、殿下」
 秀秋が秀吉に対面して座る。その動きはどこかぎこちない。
「……いや、儂の所為じゃな」
 その秀吉の声で、秀秋は気付いた。秀吉の後ろに幾つかの櫃や木箱が置かれている事に。そして、三方に乗せられた短刀と刀が置かれている事に。
「お前から大事な『兄』を奪っておいて、お前にああまで言っておいて、今更と思うじゃろう」
 そう言うと、秀吉は頭を下げながら二振りの刀の乗った三方を差し出した。
「豊家を存続させる為などと言っても、お前は儂を許さないじゃろう。だが、それでも、これは、これだけは、受け取って欲しい」
「殿下……?」
 三方を持つ秀吉の手が震えている。秀秋は、三方に腕を伸ばす事も出来ずただ困惑していた。
「籐四郎吉光の短刀と、相州貞宗の刀・安宅貞宗」
 籐四郎吉光。その名を聞いた時、秀秋の脳裏に遥か遠い日の光景が蘇った。桜の中、義兄が優しく語ってくれた、その言葉を。
 ――籐四郎吉光の刀は、持ち主に腹を切らせないと言われているんだよ。
 秀秋の目から一滴ひとしずく、涙が落ちる。
 殿下は、いや、叔父上は、私を――。
「謹んで拝領致します」
 秀秋は頭を下げながら三方を受け取った。秀秋が三方を置き顔を上げると、そこには秀吉の微笑みがあった。
 あるいは、眼前のこの人もまた犠牲者なのかも知れない。家康殿に、息子である信康殿を殺せと命じたものと同じ「何か」の。
「それと、年が明けたら筑前に復領させるよう家康に頼んでおる」
 夏の陽光が室内に差す。秀吉の顔が鮮やかに、くっきりと秀秋の目に映し出される。
「あ、有難き上意に御座います!」
 秀秋は深々と、床に額が付くほどに辞儀をした。
「頭を上げてくれ、秀秋。元はと言えば儂の我儘じゃ。佐吉……三成からも否と言われたわ」
 そう言いながら、秀吉は秀秋の肩に手を置いた。秀吉本人としてはその手に力を込め、秀秋を起こしたかったのであろう。しかし、その手にどれほど力を込めても秀秋の小柄な身体を持ちあげる力すら最早無かった。
 秀秋が自ら身体を起こしたのを確認し、秀吉は静かに息を吐き出した。
「儂はもう長くない」
 微笑みを浮かべたまま、唐突に切り出した秀吉に秀秋の息が止まる。
「何を、仰います」
「自分が一番よう分かっとる。この夏は越えられん」
 途切れ途切れにようやく息を吐きだした秀秋に、秀吉は淡々と言葉を返す。その微笑みはどこか寂しげに見えた。
「本当に、本当に虫の良い願いだとは分かっとる」
 僅か、時が止まる。遠くで蝉の声が響いている。
「豊家を、秀頼を……」
 そこまで言うと、秀吉は息を詰まらせた。実の兄以上に慕っていた秀次を奪っておきながら、この期に及んでその原因を守れと言う。その酷さにそれ以上の言葉を紡げなくなったのやも知れない。
 秀秋もまた、その事に思い至っていた。
 この人は、憎い。それでも。私に、憎んでいた私に、籐四郎吉光を与えてくれた。
 秀秋が、秀吉へ手を伸ばす。そして、真っ直ぐに秀吉を見据えながら言った。
「必ず、お守りいたします」
 秀秋が、秀吉の掌を包み込むように握る。それは、秀秋の心からの言葉であった。
「本当に……本当に苦労を掛けたな」
 秀秋の預かり知らぬ所ではあるが、この秀秋が拝領した籐四郎吉光の短刀は後の世で籐四郎吉光の最高傑作の一つ「岡山藤四郎」として「不知代だいしらず 」、即ち値段の付けようもないほど価値のある刀として評されることになる。同様に、安宅貞宗も「無代」として値段の付られない程の高価な刀として評されることになる。
 その後も、部屋にあった秀秋への進物の披露が続けられた。大般若捨子の壺二つ、茶道具、黄金千枚、部屋には居なかったが二羽の鷹に二頭の馬――何れも名品・名物揃いであった。

 秀秋が部屋を後にした時分には、既に西日が差していた。柔らかな朱の回廊を歩く秀秋に、幼い声が届く。
「義兄上」
 当初、秀秋はその声が己を呼ぶものではないと思っていた。しかし、回廊には己とその声の主しか居ない。
 秀秋は振り返り、声の主を確認した。それは、数え六つの童であった。
「何か御用の向きが御有りでしょうか、秀頼様」
 豊臣秀頼。秀吉の実子にして次代の豊家を継ぐ者。端正な顔立ちに僅か吊り上がった眉は、天下を継ぐ者として幼き日の秀秋と同じく、厳しい教育を受けているのであろうと感じさせた。
「いえ、御用があるという訳では無いのですが……義兄上に声をお掛けしたかったのです」
「声を?」
 思えば、秀秋には秀頼とあまり言葉を交わした記憶が無かった。秀頼は上座に秀吉と共に座していた――その様な記憶しか思い出せない。
「はい。義兄上は何時も張り詰めておいででしたので、声を掛け辛かったのです」
 秀秋ははっとする。秀次が死んだあの日から、ことにこの伏見城では気を許す事など無かったのだと。
 秀秋の顔に柔らかな笑みが浮かぶ。
「気にせず、御声を掛けて頂いて良かったのですよ」
 この様な声が出せたのか、と己でも驚くような優しい声色でそう告げながら、秀秋は秀頼の頭をたおやかに撫でた。
 秀頼はその掌の温かさに、嬉しげに目を細めていた。
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