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その十八 やりやがったなあのブタ面!
しおりを挟むニーナと買い物にいった後さらに数日が経った。
ここ最近はソニアのヤツがクレアにちょっかいをかける回数が増えだしていた、ちょっとしたイジメのような内容である。
見かけたなら諫めるが頻度が増えてきているのが困りものだ、クレアも気丈に振舞ってはいるが内心はキツイと思う。
クレアは日に日に表情が暗くなっていった、これにはクラスメイト全員が心配していたが、腐ってるけど相手は侯爵令嬢しかも水の巫女候補、これは王族でも迂闊に触れる事が出来ない。そして更に少し経った頃事件は起こった。
しかも最悪の事件が……
「クレア・アージュさん、よろしいですか?」
授業中に先生の一人がクレアを呼びに来た、フラっと立ち上がったクレアが返事をして先生の所へと向かった。
「カナード王子、クレアさんどうにかできないんですの? ソニアさんはカナード王子の許嫁なのでしょ?」
「やれるなら国外追放でもやってやるよ……」
ユリアーナが話しかけてくる、ユリアーナの家は伯爵だが辺境伯なので侯爵家にも影響力はあるが面倒なのは水の巫女候補ってとこだな。この国では政にも影響があるので並みの貴族では介入が出来ないのだ、これがなければ王族なら介入できるのだが……
「王子、クレア君は大丈夫なんだろうか?」
「わからない」
ライネスも心配しているようだ、皆の心配もよそに授業は進んでいった。
――
――――
授業が終わったと同時にクレアが戻ってきた、しかしその顔には生気は無く虚ろな目で席に着いた。クレアの様子が気になるが遠巻きに見ているクラスメイト。
しかし、僕とユリアーナ、ライネスにニーナはクレアの所に駆け付ける。
「ク、クレアさんどうなさったの?」
ユリアーナが声をかけるとユリアーナに顔を向けるクレア、少しするとその顔は泣き顔に変わっていく。
「う、うぐ、うわあああああ」
クレアは耐えられなくなったのかユリアーナに抱き着くと、わんわんと泣き出した。
「王子、クレアさん泣いちゃってますね」
「ああ、これはただ事じゃないな」
「お、おどうざまが……おどうざまが」
クレアの様子に皆が困惑した。
「クレア何があった? 言いにくいなら無理にとは言わないが」
僕はクレアに声をかけた、少し落ち着いたのかクレアは口を開く。
「お父様が……逮捕されたそうです」
クレアがそう言った。そして再び口を開いた。
「騎士団の資金を横領した罪で捕まったそうです」
「な?」「え?」
クレアの口からとんでもない言葉が飛び出した、横領罪に逮捕。当然騎士団追放になるし牢屋の中って事か、ソニアのヤツやっちゃいけないことやったな。
ニーナまでもが不安な顔で僕をみている。
「王子、本当にクレアさんのお父様は……」
「そんなわけあるか、ソニアのヤツだよ。最悪な権力の使い方だ、セイラさんの時と同じだよ」
「むぅ、許せないですね」
「あぁ、許せるわけがない」
そう、ニーナというより、ニーナの母親のセイラさんもソニアの理不尽の犠牲者なのだ。
僕に出来る事でクレアを助けよう、もはや水の巫女候補とかどうだっていい、このクレアだって水の巫女候補なんだ、ソニアが巫女になってみろこの国に未来なんてない。
「クレアの父親の無実を調べるように掛け合ってみよう」
僕がそう言うとユリアーナとライネスも頷いた。簡単に尻尾は掴ませないだろうが何もしないよりはマシだと僕たちは考えた。
「皆さま、ありがとうございます……」
僕たちの言葉を聞いたクレアは、顔をくしゃくしゃにしながらお礼を言った。
おそらくこのクラスにはクレアに悪感情を持つ者はいない、しかしソニアの影響力は強く、僕たちくらいでないとソニアに逆らえるものはいないだろう。
それほどまでにエレンツ侯爵家の影響力は強く、また水の巫女の力は凄まじいのである。
「ただ慎重にいかないといけないな、ソニアのヤツが気付いてしまったら次は何をしでかすか分からない」
「カナード王子の婚約者は、その失礼だが爆弾のような女性だね」
「いや、ライネスの言う通りだよ。アレは爆弾だ、しかもとびきり危険なね」
しかし、クレアのためとは言うがやれることは少ない、僕たちは物語に出てくるような英雄たちではない。だがソニアの暴挙を許すわけにもいかない。
「まずはどうにかして、クレアの父親の無実を証明しないとね」
「クレア君の父君の所属する騎士団はどこなんだい?」
ライネスがクレアに尋ねるとクレアは答える。
「確か王国騎士団第八師団だったと思います」
王国騎士団は一から十までの師団に分かれていて一つ一つが独立した組織になっている。第八となると割と地方だなぁ。
「あら? 第八ですと私の所領の方ですわね」
「辺境伯なら影響力は強いんじゃないか?」
「そうですわね、第八ならなんらかのアクションができると思いますわ」
「僕の方でもかけあってみよう」
この展開はもはや完全にゲームではなくなった証拠だね、ならば自由に動かせてもらおう。まずはクレアを助けるとしよう。
「僕の方も父上経由で何かできないか探ってみよう」
ライネスもユリアーナも自分で出来る範囲で行動を起こそうとしていた。
「王子、何もできないのが悔しいです……」
自分に出来る事が無いとニーナだけは悔しそうにしていた、しかし本当にそうだろうか?
「ニーナにも出来る事はあるさ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
「本当ですか?」
うーん、信用されて無いなあ。
「皆さんのそのお心遣いだけでも嬉しいです」
「くー! 私も頑張ってクレアさんをお助けします! 私は強いので何かあったら言ってくださいね!」
「ありがとうございます」
実際にニーナはこの学園での戦闘訓練授業でもトップの成績だったりする……つーか、むしろこの学園でニーナに勝てる奴ってどれだけいるの? そんなレベルで強かったりする。
さて、それは置いといて、行動を開始しよう。
「それじゃあ、行動を開始しよう」
「わかったよ」
「了解ですわ」
ライネス、ユリアーナが返事をした、僕もニーナとともに城に戻りなんとかしようと思う。
「クレアの父親の無実はなんとしても証明して見せるからね」
「はい、王子に皆さん本当にありがとうございます」
僕たちは頷くと教室を後にした。
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