Lily connect

加藤 忍

文字の大きさ
4 / 32
二人の関係

第四話

しおりを挟む
 楓から私の好きなところを聞いてから一日が経った。楓は私に答えを急がせることはなく、いつも通りそばにいてくれる。それに甘えているのだろうか、体操座りで抱えた足をより近づける。




 六時間目の体育、今日は男女ともにバスケをしている。コートは二つあり、入り口側が男子、ステージ側が女子。私は体育館の隅で空いている扉のそばで涼んでいた。




 バスケ中にも関わらず楓のことで悩んでいた。最近はそのことで授業に身が入っていない。




「四条さん危ない!」




「へ?」




 だからバックボードに跳ね返ったボールが私の顔面に当たる直前までボールに気がつかなかった。




「四条さん!!」




 ボールに当たった衝撃で頭がくらっとして床に倒れた。




 休憩をしていた男子の何人かが近づいてくれたけど、それを見た女子がまた影口をこぼす。わざとでしょ、悲劇のヒロインのつもり?って。私が当たりに行ったわけじゃないのに。




 そんな人達を分入って駆けつけて来る足音がした。プレイ中の試合の足音より遥かに力強い踏み込みで。




「遥華大丈夫!?」




 バスケのゲーム中だった楓が荒い息のまま来てくれた。




「大丈夫」




 と言っておきながら鼻を擦ると手に赤いものがついた。




「遥華鼻血出てる、先生!遥華を保健室に連れて行きます」




 楓から少し遅れて別のコートを見ていた先生が駆けつけた。




「本当!西野さんお願いしてもいい?先生も授業が終わったら行くから」




「わかりました。遥華行こう?」




 私は鼻をつまんだまま頷く。頭がクラクラしているわけではないのですんなりと立ち上がる。楓が私の背中に手を当て、付き添われながら保健室に向かった。





「失礼しまーす、先生居ますか?」




 保健室に着くと先生はどこにもいなかった。ひとまず近くにあった椅子に腰掛け、テーブルの上に置かれたティッシュで両方の穴に鼻栓をする。




 鼻で呼吸できない以上、口を開けてするしかない。そんな私を見て楓が笑う。




「遥華不細工だよ、それ」




「しょうがないじゃない、こうしないと血止まんないし。手で押さえておくのも疲れた」




 前屈みになりながら私の前に立つ楓に言い訳じみたことを言う。




「最近ボートしてること多いよ、どうしたの?」




 何にも知らないみたいな顔で聞いてくる楓に少しイラッとした。分かって聞いているのか、それとも本当にわからないのか、私は楓ではないのでわからない。だから少し拗ねたような口調で言ってしまった。




「楓が告白なんかしたからいけないんだよ」




「・・・え!?」




 楓は本当にわかっていない驚いた顔をした。だけどそれはほんの少しの間だけ。その顔はすぐに笑顔に変わった。




「ちゃんと考えてくれてるんだ、嬉しいな」




 細めた目が、少しつり上がった口が、赤く染まっていく頬が、私の鼓動を早くさせる。可愛いと思った。いつも見せる笑顔とどこか違う顔、今まで見たことない顔にキュンとしてしまった。




 そのことを隠すかのように楓から目を逸らす。




「じゃあ先生呼んで来る。大人しくしているんだよ」




 楓はそう言って保健室を出て行った。




 一人になった私は一度鼻栓を外した。血に染まったティッシュを綺麗なティッシュにくるみ、まるでバスケでもしているかのようにダストシュートをした。




 綺麗な放物線を描いていくティッシュは、やがてゴミ箱の周りの囲いに当たって弾かれた。




 いつもなら入るのに、と愚痴りながら入らなかったティッシュをつまんで確実に入れる。




 入らなかった理由はなんとなくわかっている。今までに感じたことのない、モヤモヤして表現できない感情のせいだ。




「この気持ちってなんだろう?」




 私はこの気持ちに検討がつかなかった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...