3 / 32
二人の関係
第三話
しおりを挟む
「はぁ・・・」
昼休み、持ってきた弁当を持って屋上に着ていた。一人で昼食は久しぶりだ。
いつもは楓と一緒に食べるけど、今日はまだ、一度も楓と言葉を交わしていない。
授業中に斜め前にいる楓と目が会うことはあった。だけど楓の顔を見ると告白の事を思い出して目を逸らしてしまう。
移動教室の時も一緒に移動するのに、今日は一人で先に移動した。
「・・・はぁ」
ここに来てからの何度目かのため息が口から出る。誰もいない屋上は暖かい日差しと風で昨日より涼しい。
膝においている弁当に箸を向ける。お母さんのいつもの味なのにいつもと違うような気がした。一人だからだろうか。
空では雲が西から東に流れて行く。その雲を見上げながら目で追う。
その時、ガチャッと屋上のドアノブが回される音がした。ドアは金属音を鳴らしながら開いて行く。
私の体はドアの方を見ながらこわばった。クラスの人に問わず、女の子の集団にでも鉢合わせしたらなにを言われるかわからない。
だけどその心配はドアから現れた人物を見た途端風に流されるように消えていった。
「遥華ここに居たんだ!?」
現れたのは誰でもない楓本人だった。私のこわばっていた体が少しだけ脱力していく。
「探したんだよ」
楓はそう言いながらドアを閉めて歩み寄って来る。手にはビニール袋を携えていた。ビニール袋には絵柄や模様すらない。購買で売っているパンを購入した時にもらえる袋だった。
「みんなで購買に行って帰って来たら遥華居ないじゃん。だから遥華の居そうな場所全部回ったんだよ!ま、二箇所しかないけど」
よいしょっと、と年寄りみたいに声を出しながら私の横に腰を下ろした。すぐさま袋を開けるとビニールに入ったクリームパンを口に運んだ。
私はそんな普段通りの楓を見つめてしまっていた。
昨日の告白はまるで嘘だったのだろうかとも思ってしまう。あれは夢、そう夢だったんだ!ラブレターも私の妄想だったんだよ。と思えてくる。
だけど私の頭には楓の言葉が何回も再生される。夢ではないと自分に言い聞かせるように。
いろんな思考を巡らせていたから、じっと見ていたはずの楓が頬を赤くしながら俯いたのに気づくのが遅れた。
「遥華どうしたの?私の顔ばっかり見て」
「・・・え!?、いやごめん。考えごとしてた」
恥ずかしがる楓を見ているとこっちまで恥ずかしくなった。楓からすぐに目を逸らす。楓はそうなんだ、と言って両手に持ったクリームパンをかじった。
今は楓と二人っきり。午前中は楓を避けてしまったけど、昨日から気になっていた事を聞くなら今しかないだろう。
「楓はさ」
急に名前を呼ばれた楓はキョトンとした顔で私を見る。そんな楓に真正面から向かい合う。大事な話だから、しっかりと楓と目を合わせる。
「私のどこを好きになったの?」
「全部」
楓は私の質問を即答で返した。
「・・・全部?」
楓はうん、と頷くと青い空を見上げた。
「全部って言われてもわからないよね。例えば・・・、頑張り屋なとこ、何事にも真面目なとこ、みんなは知らないけど人に優しいところ、あげると色々あるよ。そのぐらい私は遥華を見てたし、そばにいた。だから好きになった」
視線を私に向けるとえへへ、と苦笑いしながら頬を人差し指でかいた。
「ごめん、でもこれが私の気持ち・・・だから」
楓はこれまで告白して来た人達とは違う。これまでは一目惚れですとか付き合いたいと思ったからとか、みんな私の外見しか見ていなかった。人と関わりが少ない私がモテる要素はそこしかないのだと思っていた。だから全ての男子を断った。
みんな私のことをほとんど知らない。知っている人もほとんどいない。
楓はそんな人達とは違う。私を見てくれていた。私の外見ではなく、しっかり内側を知って好きになってくれたんだ。
なんだか嬉しいなぁ。
「あのさ!」
空を見ていた楓が私と顔を合わせる。告白の時と同じ真剣な眼差しで。
「私は遥華に断られても親友でいるから」
楓はまだ食べ終えていないクリームパンを袋に入れると、顔を真っ赤にしたままドアの方に走って行った。
私は数秒間だけ雲がなくなっていた快晴の空を見つめていた。
「私は楓にいい返事が出来るのだろうか?」
昼休み、持ってきた弁当を持って屋上に着ていた。一人で昼食は久しぶりだ。
いつもは楓と一緒に食べるけど、今日はまだ、一度も楓と言葉を交わしていない。
授業中に斜め前にいる楓と目が会うことはあった。だけど楓の顔を見ると告白の事を思い出して目を逸らしてしまう。
移動教室の時も一緒に移動するのに、今日は一人で先に移動した。
「・・・はぁ」
ここに来てからの何度目かのため息が口から出る。誰もいない屋上は暖かい日差しと風で昨日より涼しい。
膝においている弁当に箸を向ける。お母さんのいつもの味なのにいつもと違うような気がした。一人だからだろうか。
空では雲が西から東に流れて行く。その雲を見上げながら目で追う。
その時、ガチャッと屋上のドアノブが回される音がした。ドアは金属音を鳴らしながら開いて行く。
私の体はドアの方を見ながらこわばった。クラスの人に問わず、女の子の集団にでも鉢合わせしたらなにを言われるかわからない。
だけどその心配はドアから現れた人物を見た途端風に流されるように消えていった。
「遥華ここに居たんだ!?」
現れたのは誰でもない楓本人だった。私のこわばっていた体が少しだけ脱力していく。
「探したんだよ」
楓はそう言いながらドアを閉めて歩み寄って来る。手にはビニール袋を携えていた。ビニール袋には絵柄や模様すらない。購買で売っているパンを購入した時にもらえる袋だった。
「みんなで購買に行って帰って来たら遥華居ないじゃん。だから遥華の居そうな場所全部回ったんだよ!ま、二箇所しかないけど」
よいしょっと、と年寄りみたいに声を出しながら私の横に腰を下ろした。すぐさま袋を開けるとビニールに入ったクリームパンを口に運んだ。
私はそんな普段通りの楓を見つめてしまっていた。
昨日の告白はまるで嘘だったのだろうかとも思ってしまう。あれは夢、そう夢だったんだ!ラブレターも私の妄想だったんだよ。と思えてくる。
だけど私の頭には楓の言葉が何回も再生される。夢ではないと自分に言い聞かせるように。
いろんな思考を巡らせていたから、じっと見ていたはずの楓が頬を赤くしながら俯いたのに気づくのが遅れた。
「遥華どうしたの?私の顔ばっかり見て」
「・・・え!?、いやごめん。考えごとしてた」
恥ずかしがる楓を見ているとこっちまで恥ずかしくなった。楓からすぐに目を逸らす。楓はそうなんだ、と言って両手に持ったクリームパンをかじった。
今は楓と二人っきり。午前中は楓を避けてしまったけど、昨日から気になっていた事を聞くなら今しかないだろう。
「楓はさ」
急に名前を呼ばれた楓はキョトンとした顔で私を見る。そんな楓に真正面から向かい合う。大事な話だから、しっかりと楓と目を合わせる。
「私のどこを好きになったの?」
「全部」
楓は私の質問を即答で返した。
「・・・全部?」
楓はうん、と頷くと青い空を見上げた。
「全部って言われてもわからないよね。例えば・・・、頑張り屋なとこ、何事にも真面目なとこ、みんなは知らないけど人に優しいところ、あげると色々あるよ。そのぐらい私は遥華を見てたし、そばにいた。だから好きになった」
視線を私に向けるとえへへ、と苦笑いしながら頬を人差し指でかいた。
「ごめん、でもこれが私の気持ち・・・だから」
楓はこれまで告白して来た人達とは違う。これまでは一目惚れですとか付き合いたいと思ったからとか、みんな私の外見しか見ていなかった。人と関わりが少ない私がモテる要素はそこしかないのだと思っていた。だから全ての男子を断った。
みんな私のことをほとんど知らない。知っている人もほとんどいない。
楓はそんな人達とは違う。私を見てくれていた。私の外見ではなく、しっかり内側を知って好きになってくれたんだ。
なんだか嬉しいなぁ。
「あのさ!」
空を見ていた楓が私と顔を合わせる。告白の時と同じ真剣な眼差しで。
「私は遥華に断られても親友でいるから」
楓はまだ食べ終えていないクリームパンを袋に入れると、顔を真っ赤にしたままドアの方に走って行った。
私は数秒間だけ雲がなくなっていた快晴の空を見つめていた。
「私は楓にいい返事が出来るのだろうか?」
0
あなたにおすすめの小説
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて
千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。
そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。
夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。
それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。
ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。
ハッピーエンドになるのでご安心ください。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる