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期末テスト
第十一話
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放課後のチャイムと共に楓が鞄を背負って私の前に現れた。
教室はガヤガヤとうるさく、テスト期間にもかかわらず今日はどうする?と言う声が聞こえてくる。私も人のこと言えないのだが。
「ちょっとまってね」
鞄に筆箱等を詰めていく。学校指定の鞄はわりとシンプルで黒に近い青色にグレーの紐がついている。横にポケットがあればいいのにと思ってしまったりする。
鞄に荷物を詰め終えるまではそうかからなかった。鞄のチャックを閉めてから席を立つ。
「早く行こう」
私たちは共に教室を後にした。
昇降口にはまだ多くの人が残っていた。ファミレスとか、私たちと同じようにマックに行く話が聞こえてきた。
グランドや校舎からはいつもより小さい掛け声が聞こえる。大会が近い部活がテスト期間でも練習しているようだ。
「野球部とか大変だね」
校門に向かって歩いていると楓がグランドでボールパスをする野球部を見ながら呟いた。
「しょうがないよ、甲子園があるんだから」
どこの学校もこの時期は甲子園に向けて野球部が奮起している時期だろう。高校生最後の大きな大会だから。
そのためにわざわざ応援に行かないといけないのは正直めんどい。それと同時に理不尽さを感じる。なぜ野球だけ学校全体で応援に行かないといけないのだろう?サッカーやテニスも試合はある。言ってしまえばテニスやサッカーの方が功績を挙げている。
野球部の響きわたる大声を背中で受けながら校門を抜けた。
「ねぇ、遥華?」
マックに行く道中に楓がさっきまでと違う雰囲気で私を呼んだ。
「なに?」
「・・・手」
「手?」
自分の右手を見る。ノートを写す時に着いたシャー芯の汚れやペンで書いた落書きなどは見当たらない。虫などが付いている様子もない。それはもう片方も同様だった。
「手がどうしたの?」
「・・・」
楓は無言で俯いた。楓はおろした私の右手に左手の甲を当ててくる。
「・・・」
楓がなにがしたいのか私には見当が付かず、お互い黙り込んでしまった。
しばらくしてから楓が足を止めて俯いたまま声を出した。車のエンジン音や周りの人の声にかき消されそうな弱々しい声で。
「手・・・繋ぎたい」
最後の方に行くにつれて声が徐々に小さくなっていった。それでも私は楓の声を確実に聴き取った。
付き合って一週間はたったんだし、それぐらいはいっか。
「ふん」
なにも言わずに右手を前に出す。楓はその行動をすぐに理解して飛びつくように私の右手に左手を重ねた。私の想像とは違い、楓は私の指と指の間に指を絡めてくる。これはいわゆる恋人結びを言うものだろう。
楓は結ばれた手を隠すかのように距離を詰めた。お互いの肩が今にも当たりそうなぐらいに。
人通りが多い場所でこんなに近づいて歩いていたら周りからどんな目で見られるのだろう?顔を動かさず目だけで周囲を見渡す。スーツを着た男性や子連れのお母さんなどが私たちを横切る。だけで私たちに目もくれずに過ぎて行く。周りの人は自分が思っているより見ていないようだった。
「遥華の手、暖かい」
外気温とは明らかに違う温もりが手に宿っている。マンガなどでよく見るこの繋ぎ方、想像以上に恥ずかしかった。
店に入るまでの間、楓とずっと握りあっていた。手には変な汗をかいていたような気がする。
店に入るといつも通り混んでいた。レジに並ぶ列も長い。私たちはいつも通りの行動をとることにした。
楓の鞄を預かってから空いている席を探す。四人席や八人席は他校の学生によって埋め尽くされている。うちの学校も例外ではなかった。店内をうろちょろしてようやく見つけたのは二つ空いたカウンター席だった。ほかの人達も動く気配がないのでここに荷物を置いて、レジに並んでいる楓と合流した。
「今日も前と一緒でいいかな」
レジ上のメニューボードを見ながら楓が呟いた。私も前と対して変えるつもりはない。パイがなくなるぐらいかな。
「ご注文をどうぞ」
並んで数分で私たちの番が来た。
「ポテトのMとドリンクで」
楓が注文を終えて私もメニュー表を見る。
「ポテトのMと・・・」
メニュー表を閲覧していると隅の方に新商品と書かれたものが目に入った。しかも期間限定とも書かれている。どうやら私は新作や期間限定の言葉に弱いらしい。店にとってのいい鴨だ。
「マックシェイクの四種のベリーで」
私の注文に楓が目を見開いている。四種のベリー?なにそれって感じの顔。多分気づかなかったのだろう。
店員さんは楓のドリンクを聞いた。楓はファンタのグレープを頼んだ。
今回は私が奢った。前回に比べたら料金は安いが、楓ばかりにしてもらうのも気が引けたのだ。
注文したメニューはすぐにやってきた。ポテトは詰めるだけ、ドリンクとシェイクは注ぐだけなので当然だ。それらを受け取ると確保した椅子に向かった。
教室はガヤガヤとうるさく、テスト期間にもかかわらず今日はどうする?と言う声が聞こえてくる。私も人のこと言えないのだが。
「ちょっとまってね」
鞄に筆箱等を詰めていく。学校指定の鞄はわりとシンプルで黒に近い青色にグレーの紐がついている。横にポケットがあればいいのにと思ってしまったりする。
鞄に荷物を詰め終えるまではそうかからなかった。鞄のチャックを閉めてから席を立つ。
「早く行こう」
私たちは共に教室を後にした。
昇降口にはまだ多くの人が残っていた。ファミレスとか、私たちと同じようにマックに行く話が聞こえてきた。
グランドや校舎からはいつもより小さい掛け声が聞こえる。大会が近い部活がテスト期間でも練習しているようだ。
「野球部とか大変だね」
校門に向かって歩いていると楓がグランドでボールパスをする野球部を見ながら呟いた。
「しょうがないよ、甲子園があるんだから」
どこの学校もこの時期は甲子園に向けて野球部が奮起している時期だろう。高校生最後の大きな大会だから。
そのためにわざわざ応援に行かないといけないのは正直めんどい。それと同時に理不尽さを感じる。なぜ野球だけ学校全体で応援に行かないといけないのだろう?サッカーやテニスも試合はある。言ってしまえばテニスやサッカーの方が功績を挙げている。
野球部の響きわたる大声を背中で受けながら校門を抜けた。
「ねぇ、遥華?」
マックに行く道中に楓がさっきまでと違う雰囲気で私を呼んだ。
「なに?」
「・・・手」
「手?」
自分の右手を見る。ノートを写す時に着いたシャー芯の汚れやペンで書いた落書きなどは見当たらない。虫などが付いている様子もない。それはもう片方も同様だった。
「手がどうしたの?」
「・・・」
楓は無言で俯いた。楓はおろした私の右手に左手の甲を当ててくる。
「・・・」
楓がなにがしたいのか私には見当が付かず、お互い黙り込んでしまった。
しばらくしてから楓が足を止めて俯いたまま声を出した。車のエンジン音や周りの人の声にかき消されそうな弱々しい声で。
「手・・・繋ぎたい」
最後の方に行くにつれて声が徐々に小さくなっていった。それでも私は楓の声を確実に聴き取った。
付き合って一週間はたったんだし、それぐらいはいっか。
「ふん」
なにも言わずに右手を前に出す。楓はその行動をすぐに理解して飛びつくように私の右手に左手を重ねた。私の想像とは違い、楓は私の指と指の間に指を絡めてくる。これはいわゆる恋人結びを言うものだろう。
楓は結ばれた手を隠すかのように距離を詰めた。お互いの肩が今にも当たりそうなぐらいに。
人通りが多い場所でこんなに近づいて歩いていたら周りからどんな目で見られるのだろう?顔を動かさず目だけで周囲を見渡す。スーツを着た男性や子連れのお母さんなどが私たちを横切る。だけで私たちに目もくれずに過ぎて行く。周りの人は自分が思っているより見ていないようだった。
「遥華の手、暖かい」
外気温とは明らかに違う温もりが手に宿っている。マンガなどでよく見るこの繋ぎ方、想像以上に恥ずかしかった。
店に入るまでの間、楓とずっと握りあっていた。手には変な汗をかいていたような気がする。
店に入るといつも通り混んでいた。レジに並ぶ列も長い。私たちはいつも通りの行動をとることにした。
楓の鞄を預かってから空いている席を探す。四人席や八人席は他校の学生によって埋め尽くされている。うちの学校も例外ではなかった。店内をうろちょろしてようやく見つけたのは二つ空いたカウンター席だった。ほかの人達も動く気配がないのでここに荷物を置いて、レジに並んでいる楓と合流した。
「今日も前と一緒でいいかな」
レジ上のメニューボードを見ながら楓が呟いた。私も前と対して変えるつもりはない。パイがなくなるぐらいかな。
「ご注文をどうぞ」
並んで数分で私たちの番が来た。
「ポテトのMとドリンクで」
楓が注文を終えて私もメニュー表を見る。
「ポテトのMと・・・」
メニュー表を閲覧していると隅の方に新商品と書かれたものが目に入った。しかも期間限定とも書かれている。どうやら私は新作や期間限定の言葉に弱いらしい。店にとってのいい鴨だ。
「マックシェイクの四種のベリーで」
私の注文に楓が目を見開いている。四種のベリー?なにそれって感じの顔。多分気づかなかったのだろう。
店員さんは楓のドリンクを聞いた。楓はファンタのグレープを頼んだ。
今回は私が奢った。前回に比べたら料金は安いが、楓ばかりにしてもらうのも気が引けたのだ。
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