Lily connect

加藤 忍

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夏休み 楓が家に

第十四話

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「ハル?時間いいの?」

 一階からママの声がして時計を見る。時刻は十二時、そろそろ行かないと行けない。

「行く」

 手に持っていた掃除機の電源を切った。コンセントから抜いて伸びたケーブルをボタン長押しで吸い込まれるように収納する。

 家の掃除機は未だに旧式で重くて面倒。テレビでルンバとかダイソンの掃除機を見ると軽そうなんて感想が出てくる。

 重い掃除機を持って一階にある物置場に直してから一度部屋に戻った。最終確認のためだ。

 部屋は見違える程に変わった。テレビ番組のビフォーアフター並みの・・・は言い過ぎかな。昔パパが好きだったリフォーム専門の番組を思い出した。あの番組まだやっているのかな?

 懐かしいことを思い出しながら勉強机に置いていた鞄を手に取る。楓と駅で合流してお昼をそこで食べる手筈になっている。近いからジョイフルになりそう。

 鞄の中の財布を確認してから部屋を出た。楓が乗って来る電車は十二時五十三分に着くやつだから、気持ち的にもまだ余裕がある。

 玄関で少し厚底のサンダルを履いてからドアノブを掴んだ。

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 リビングから顔だけ出したママにそう言ってドアを開ける。ムワッとした熱気が一瞬で家の中に入って来る。私の体が急に高温に包まれる。

 玄関の外に出るとそれは一層増した。直射日光が私をギラギラと照らす。

「あ!」

 大切なことを思い出してから再び玄関を開ける。

「ママ、日焼け止め!」

 リビングに消えていたママが露骨にため息を吐きながら出てきた。

「ママは日焼け止めじゃないよ」

 そんなことを言いながら水色の容器に入った日焼け止めを投げてくれた。

「ありがとう」

 お礼を言いながら中のクリームを手に乗せて体に塗っていく。首から手、足と露出している場所につけていく。

「行ってきます」

 つけ終わった日焼け止めを玄関に置いてから再び玄関を出た。


 家から駅までは遅くても四十分で着く。さっきまでのドタバタのせいで余裕があったはずが少し余裕がなくなった。五分前には着くだろうとは思う。

 夏場の正午は本当に暑い。太陽が真上にあるから日陰もない。玄関を出てから背中が汗ばんできはじめたのがわかる。

「暑い」

 駅に着いたのは私の予想通り楓の乗って来る電車の五分前。駅の中は直射日光が防げるのでわりかし涼しい。

 駅のホームで待っているといろんな人を見かける。額の汗をハンカチで拭いている半袖カッターに黒のズボンの営業マン、水泳バックを肩にかけた女の子グループ、これからデートであろうと思われる手を繋いだ男女、みんながそれぞれの夏を過ごしている。

「遥華!」

 声がしてホームの方に振り返る。電車から降りた人たちの中で手を挙げているのが見えた。その手は徐々にこちらの方へと出て来る。

「お待たせ、待った?」

 人混みから抜けた楓が少し駆け足でやって来た。紺色のショートパンツに白の柄入りTシャツ、短い靴下にスニーカー。腰には赤と黒のチェック柄のネル・シャツを巻いている。初めて見る楓の私服は新鮮だった。

「ううん、今来たところ」

「ふふ、遥華彼氏みたいなこと言ってる」

 楓に言われてそうだと思った。デートで待っている人は皆こんなことを言っている。ほとんどが今来たなんて嘘を言っている。私もそうだ。

「そうだね。それでどこで食べる?」

「この付近でお手軽なやつがいい」

「マック・・・は遠いから、ジョイフル?」

「それでいっか。早速行こう、外暑い」

 楓は手を団扇がわりに仰ぐ。ホームからはまた電車を降りた人達が出来た。その中に紛れて私達も外に出た。


「いらっしゃいませ!」

 ジョイフルに入ると店員の声が店内の響いた。

「何名様でしょうか?」

「二人で」

 楓がVサインを作りながら店員と話している。すぐに楓は店員に案内されて喫煙席の方に歩いていく。私も二人を追うように着いていった。

 席に着くと「お決めになったらお呼び下さい」とだけ言い残して下がっていった。

 私は横に立て掛けてあるメニュー表を二つ取って片方を楓に渡した。

「喉が渇いたからドリンクバーは確定として・・・」

 楓は独り言を口にしながらメニュー表をめくっていく。私の方はおおよそ決まっている。ジョイフルに来た時は決まって同じメニューを頼んでいる。だから決めるのは早かった。

「私は決めたよ、楓は?」

「う~、もう少し待って」

 楓はステーキとハンバーグに迷っているようで同じページをパタパタと見比べている。待つのも疲れたわけではないが、私はそっと席を立った。

「水持って来る」

「ありがとう」

 楓はメニュー表から目を離さずに礼を言った。眉間にシワがよるほど悩んでいる楓をよそに、私はドリンクバーの方へと足を向けた。




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