ラズベリー

加藤 忍

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思い出

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 大学三年の夏を控えたある日、俺は一年間交際していた彼女に別れを告げられた。大学のサークル同士の飲み会で出会った彼女。最初の印象は地味だった。黒い三つ編みに黒縁メガネ、いろんな意味で目立った。

 話をしたのはそれから数日後だった。廊下を歩いている彼女が何かを落としたのが見えた。彼女は気づくことなくそそくさと歩いて行く。周りには人はいなかった。気づいているのは俺だけ、そうわかると落としものを拾って彼女を追いかけた。

「あ、あの・・・」

 階段を上がろうとする彼女に追いついて声をかけた。彼女は立ち止まり振り返る。手には教材とノート、それと筆箱を抱えていた。俺を見たときの顔は冷たさを感じた。

「何ですか?」

 声のトーンも低くい。俺は彼女が落としたものを見せた。可愛いクマのストラップ。ストラップの紐が切れたのだろう。彼女は自分の筆箱を確認すると階段を降りて来た。

「ありがとうございます」

 まじかで見た彼女は可愛かった。ジーンズのズボンに柄の少ない長袖、春らしさは感じるがやはり地味だった。でもメガネ越しに見る彼女の目は大きく、肌はきめ細かい。顔のパーツも決して悪くない。

 俺はひとまず手に持っていてるストラップを渡した。彼女はそれを受け取るとまた階段を上がって行く。彼女の姿が見えなくなるまで階段の下で立ち尽くした。

 それから俺はどうしても彼女のことが気になった。なぜ地味な格好ばかりするのか、後々気づいたがなぜ伊達眼鏡をつけているのか・・・。気づけば俺は彼女を見かける度に声をかけるようになった。そんなことが一年続き、大学二年で彼女が出来た。

 彼女は俺と出かける時だけおしゃれをするようになった。俺の目に狂いはなく、彼女は誰が見ても美少女だった。街を歩けば男性の目を引き、女性はモデルさんかなって話をしだすほどだった。


「はぁ~」

 思い出すと自然とため息が出た。サークル内では俺らが付き合っていることを知る者はいなかったので別れたからと言ってどうこう言われることはなかった。

 休日の朝、ベットの上でただ天井を眺めているとテーブルに置いていたスマホ画がなった。ピロンと言う音はラインの着信だった。寝そべったまま手を伸ばしスマホを探り当てる。画面をつけて通知欄を見ると母親からだった。

(来週、お父さんが楽しみにしてるって)

 何を?と疑問符が浮かぶ。主語のないトークに思ったことをそのまま打ち込んだ。母親も見ていたようですぐに既録になった。

「何をって彼女連れてくるんでしょう?」

「は!?」

 そういえばと思い出す。冬に一度だけ戻ったときに彼女ができたみたいなことを親父と酒を飲みながら言った気がする。まだ未成年だったけど・・・。あのとき母親が彼女さんに会いたいわって言ってたような・・・。ひとまずスマホをテーブルに置いて頭を抱えた。

 どうする!?ちゃんと別れたって言うか?そうすると俺の親のことだ、それをネタに次の彼女ができるまでずっと笑われる・・・それだけは勘弁!

 頭をフル回転させているとサークル仲間の会話を思い出す。仮の彼女が欲しいとき、癒されたいときに使うサイトがあるって・・・あった!

 スマホを操作してレンタル彼女と検索する。検索すると数個のサイトにヒットした。その中で一番上にあったサイトをタッチする。

 サイトが開くとすぐにいろんな子の写真が出てきた。みんな顔面平均値が高い。下の方までいくと彼女を借りるのボタンがあったので迷うことなくタッチした。画面が変わり彼女を選ぶように指示される。どの子も可愛くて迷った結果、半数だけ見た後お任せを選択した。あとは場所の選択とそれにかかる料金、指名代は今回はないが人によって違うらしい。

 ひとまず契約が終わったので再度スマホをテーブルに置く。出会うのは来週の土曜日。待ち合わせは駅前の時計台。お互いがわかるように服装も書くようになっていたので選んで書いた。

 一息ついて目を閉じる。これでなんとかなるだろう。そう思うと心が少し軽くなった。



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