運命の人ではなかっただけ

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人の弱みにつけこむ

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 うっとうしい。

 結婚が破談となってから周囲の男性から誘われることがふえた。

 言葉だけきくとモテ期がきたのかと勘違いしそうだが、失恋、婚約解消、離婚といった、女性が弱っている時につけこもうとする男達からの誘いだ。うっとうしいの一言だ。

 休暇明けに同僚のマークに景気づけだとアリスはさそわれ、一緒にご飯を食べにいった。その時、「寂しいだろう。僕がなぐさめてあげるよ」マークに手を握られ鳥肌がたった。

 アリスは仕事が正確で期日もきっちり守るマークを、同僚として信頼していた。お互い同僚として良い関係をきずいてきたと思っていただけに、まさか彼が弱みにつけこみ体の関係をせまってくるとは思わなかった。

 そしてそれはマークだけで終わらず、「これまであなたと話したことあります?」といった人達からも誘いをうけるようになった。

 弱ってつけこめそうな女性の名簿でも出回っているのかと、アリスがうたがいたくなるほど男性から誘われることが多くなった。

 アリスの破談をしり心配してくれた女性陣が、自分自身や友人、親戚、知り合いなどが、弱みにつけこもうと近づく男性の餌食になった話をし、気をつけるようにいってくれていた。

 しかしアリスはまさかと思い話し半分に聞いていたが、アリスはその忠告が正しかったことに頭をかかえた。

 そのような中、学園時代の友人、ティムから久しぶりに会わないかと連絡があった。

「ブルータス、お前もか」
どこぞの偉い人が裏切り者にむかっていった言葉が口をつく。

 しかしティムは長期で王都に出張していたことを思い出す。男性からの誘いはことごとく断っていたが、久しぶりにティムに会いたかった。

「ショーンと別れたんだってな」

 ティムがアリスに会ったとたんに繰りだした第一声に、アリスは自分の甘さを悔いる。やはり「ブルータス、お前もか」だった。

「昔から無神経だと思っていたけど、久しぶりに会ってそれはないでしょう」

 アリスが嫌みをいうと、さすがにばつが悪かったようだ。

「ごめん。さっきアルに偶然あって話してたら、お前達のことが話題になった」

 どうやらブルータスではなかったようだ。アリスは一瞬、警戒をゆるめたが、破談をしったあとの男性達の変わり身をしっている。ティムに失望したくなかった。

「心配しないで。もう新しい婚約者がいるから」

 アリスはとっさに嘘をついた。ティムにまでちょろいと誘いをうけたら男性不信になりそうだ。

「えっ!? ということはアリスに好きな人ができてショーンをふったってこと? 結婚直前に思い切ったなあ」

 ティムが武勇伝でもきいたかのような反応をみせたので、アリスはあせった。

 何も考えず新しい婚約者がいるといってしまったが、完全に悪手だった。

 このまま勘違いさせておいてもよいのだろうが、この手のことは噂としてかけめぐるのがはやい。訂正しておかないと、あとで面倒になる。

「ごめん、嘘をついた。新しい婚約者なんていない」

 ティムが完全に混乱している。アリスとショーンの結婚が破談になったと聞いただけでも驚いただろうが、それにくわえアリスが嘘をついて新しい婚約者がいるといったのだ。当然だろう。

「アリス、大丈夫か? いろいろ事情があると思うし、人に言いたくないこともあると思うが、俺が口がかたいのはしってるよな。話を聞くぐらいはするぞ」

 むかしと変わらずアリスを心配してくれるティムの姿をみて、すこし素直になってもよいかとアリスは思えた。

 嘘をついたのは、婚約破棄後に遊び相手としてかんたんに落ちるだろうと誘いを多くうけたためで、ティムに対しての牽制だったといったところ「友人として傷ついた」といわれた。

「アリスがそう思って当然なのは分かるが、純粋に友達として心配してた。でもまあ、うん、破談だけでも大変だったが、そのあとも傷つくことがいっぱいあって大変だったな」

 ティムにそのようにいわれ、自分が周囲からの反応に傷ついていたことにアリスは気がついた。

 ティムや女友達のように本当に心配してくれる人達のありがたみが心にしみたが、自分をさらに傷つける人達がいることをしり、アリスはそのことに疲れていた。

「ありがとう。その気持ちだけもらっておく。

 私のことよりティムはどうしてたの? 仕事で長く王都へ行ってたようだけど」

 アリスはティムの話を聞きながら、久しぶりに男性と普通に話せていることに感謝した。

 自分に情欲をむける男性達に疲れていただけに、下心なく友達として話せること、そしてショーンや破談に関係ないことを話せることが嬉しかった。

 アリスは久しぶりにたくさん食べ、たくさん笑った。
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