85 / 85
第十五章 春が来たりて
第十五章ー②
しおりを挟む
雪解けが始まった。
ということは、もうすぐこの街を出てシノの捜索に出かけるということだ。
現状を考えると、自分達の戦力は明らかに以前とは比べ物にならないほどに大きくなっていると言える。
だが、こちらは<王>であるユウヤを加えても五人しか戦力がいない。
客観的に考えて、潜在型が多く、かなり珍しく汎用性が高いスキルもある。ゆえに、それぞれの単騎の潜在能力も他の能力者と見劣りしているとは思えない。
だが、飽くまでも潜在能力だ。現有戦力ではない。
ユウヤも三ヶ月前とは別人のように能力を仕えるようになっているが、いかんせん実戦経験がないのがネックだ。
そして、心根の優しすぎる彼が、敵とはいえ人間を殺せるのか?
それを仕方のないことだと割り切ることができるだろうか?
悩みは尽きない。
「レミアさん。よければ少し休憩にしませんか?」
今後の事を考えて、居間のテーブルで作戦を練っていたレミアに、ティーカップとティーポットをトレーで手に持っている、リナが声をかけて来る。
「ああ、もう三時になろうとしているのだな」
「はい。もうすぐユウヤさん達も家に戻ってくるはずですし、ティータイムにしましょう。お茶請けのお菓子も作りましたので」
根を詰めていたレミアは、リナの満面の笑顔に、頬を緩める。
リナが笑顔で紅茶を淹れてくれたので、レミアはそれをありがたく頂くことにし、リナ特性の焼き菓子も味あわせてもらう。
昼食が終わってから、ずっと頭を使い続けて、脳が糖分を欲していたのだろう。レミアはいつも以上に、甘い焼き菓子が美味しく思えた。
「そうだ、リナ。一つ訊いておきたいことが有るのだが、いいかな?」
「はい。なんですか?」
自分の分の紅茶を淹れ終えたリナが笑顔で応じてくれたので、レミアは質問を口にする。
「リナ。君の攻撃魔法というものは、ファリアのそれと比較すると、どの程度のものなのだろうか?」
「えっ、私の攻撃魔法ですか? ええと、そうですね、ファリアさんと比較すると……。きっと、十分の一にも満たないと思います」
「それほどまでの差があるのか? 君の魔法は素晴らしいと、よくファリアが褒めているが……」
レミアの言葉に、リナは申し訳無さそうに首を横に振る。
「それは、私の得意な癒やしの魔法などに限定するのであればの話です。もともと攻撃魔法が苦手なので、<僧侶>としての力が加わっても、<女王>の力に目覚めていなかった頃のファリアさんにも敵わないです」
リナは申し訳無さそうな表情で言うが、レミアは「そんな顔はしないで欲しい」と、彼女に笑顔を向ける。
「君は十分すぎるほどの戦力だ。魔法というものが使える<僧侶>は何人もいるだろうが、君には他の者よりも圧倒的なアドバンテージがある。
魔法にはどのような種類があるのかという知識があり、自分の力がどの程度のもので、どの分野ならばそれを最大限に発揮できるかを知っている。これは、何物にも代えがたい利点だ」
レミアの言葉に嘘はない。彼女は心からリナが味方で良かったと思っている。
「……その、ファリアさんが暴走する可能性を、また考えているのですか?」
リナが遠慮がちに尋ねてくるのを聞き、レミアは「それもそうだが、もっと最悪の事態を考えているよ」と答え、紅茶で喉を潤す。
リナが真剣な目でこちらを見つめてくるので、レミアは静かに口を開く。
「私はね、シノの捜索の途中で、誰が死んでしまう可能性が高いのかを考えているんだよ。そして、戦力を失った場合に、どのような行動を取るべきか、作戦を練っている」
レミアはそう言って嘆息する。
「死んでしまう可能性……」
リナが青い顔をするのが分かったが、レミアは構わず話を続ける。
「私が思うに、命を落とす可能性が一番高いのはコリィだ。彼女は<騎士>だから、当然情報収集などの役目をしてもらう事が多くなるだろう。
私の能力でその可能性は下げるつもりだが、単騎で行動して貰うことになる彼女には、どうしても事故の可能性がある」
「……」
リナはティーカップをテーブルに置き、レミアに話を続けるように目で訴えてくるので、話を続けることにする。
「だがね。戦力的に考えると、コリィが死んだ場合が、一番リスクが少ないんだよ。<騎士>はいれば便利だが、私の能力でおおよその代用が効くからね」
「……そうですか……」
リナは絞り出すように言う。
「命を落とす危険性が高い順番は、コリィ、ファリア、私、リナの順だと考えている。これは、それぞれの役目から判断している」
「私が、一番リスクが低いのですか?」
「ああ。私と君は同じ後方支援だが、私には自衛の手段があまりないからね。魔法で戦える分、君の方が死んでしまうリスクは低いはずだ。
そして、ここからは場合の損害が大きい順番を説明させてもらうよ」
レミアは自分の言葉にリナが「はい」と頷いたのを確認し、話を続ける。
「それでは、次に死亡してしまった場合のリスクが高い順番だ。これは、ファリア、私、リナ、コリィの順番だな」
「……」
リナは何も言わなかったが、悲しそうな表情を浮かべる。
その姿に胸を打たれるが、リナにはこの話を聞いて置いてもらいたい。だから、レミアは話を続ける。
「ファリアは攻防の要であるし、魔法のスペシャリスト。そして、ユウヤ殿の現在の戦闘スタイルを維持するための最重要人物だ。そして、私よりも順位が上なのも、最悪私が殺されても、ファリアの魔法があればある程度の代用が効くだろうという判断からだよ。
私とリナは大差はない。だが、ファリアに対するストッパーという意味で、私の方を上にしているよ」
レミアは、静かに紅茶を飲み干す。
「ここまで言えば、君なら分かるはずだ。我々の中で、命を落としやすく、その上失った場合の戦力低下が著しいのが誰なのかは」
「……はい。ファリアさんですよね」
「そのとおりだ。まだ私も実戦経験がないのではっきりと断定はできないが、少数精鋭の編成であれば、私達に勝る精力はそうはいないだろうと考えている。だが、私達の強さは、その多くをファリアに依存してしまっている。それが私には恐ろしいのだよ」
レミアはそう言って、静かに窓の外を見る。
「リナ。この状況で、君ならばどのような戦い方が一番いいと思うだろうか? 少し考えてみてくれないか?」
「えっ? あっ、あの、その、はい……」
リナはレミアの言葉に頷いて、懸命に考える。
しばらくリナは妙案が浮かばないようで苦しんでいたが、やがて「あっ……」と呟き、顔を曇らせる。
「うん。私の結論も、おそらく君と同じだよ」
リナの表情で全てを察し、レミアは力なく笑う。
「ユウヤ殿自身が先頭に、矢面に立つことだ。相手の<王>の戦力がこちら以上の場合には、ユウヤ殿が殺されてしまい、即全滅という危険性は否定できないが、少数精鋭の我々には、それが最善の手段だ」
「ですが、それは!」
「ああ。だが、この方法を取ることを君達は良しとはしないだろう。
それに、これはユウヤ殿が躊躇なく相手を殺せる場合でなければ成り立たないからね。今のところは机上の空論に過ぎない方法なんだ」
リナを安心させるように、レミアは彼女に微笑みかける。
「こんな方法を取らないですむ事を、切に願うよ。だが、必要になるかもしれない。この事は頭の片隅でも良いから、覚えておいてくれないか?」
「……分かりました」
リナは、ユウヤと同様に、その性格上、戦いには向いていない。
だが、それでも彼女はレミアの言葉に頷いてくれた。
それは、リナが理解してくれているからだ。
もしもレミアが死んでしまった場合、その代わりを務められそうなのは、リナしかいないということを。
ということは、もうすぐこの街を出てシノの捜索に出かけるということだ。
現状を考えると、自分達の戦力は明らかに以前とは比べ物にならないほどに大きくなっていると言える。
だが、こちらは<王>であるユウヤを加えても五人しか戦力がいない。
客観的に考えて、潜在型が多く、かなり珍しく汎用性が高いスキルもある。ゆえに、それぞれの単騎の潜在能力も他の能力者と見劣りしているとは思えない。
だが、飽くまでも潜在能力だ。現有戦力ではない。
ユウヤも三ヶ月前とは別人のように能力を仕えるようになっているが、いかんせん実戦経験がないのがネックだ。
そして、心根の優しすぎる彼が、敵とはいえ人間を殺せるのか?
それを仕方のないことだと割り切ることができるだろうか?
悩みは尽きない。
「レミアさん。よければ少し休憩にしませんか?」
今後の事を考えて、居間のテーブルで作戦を練っていたレミアに、ティーカップとティーポットをトレーで手に持っている、リナが声をかけて来る。
「ああ、もう三時になろうとしているのだな」
「はい。もうすぐユウヤさん達も家に戻ってくるはずですし、ティータイムにしましょう。お茶請けのお菓子も作りましたので」
根を詰めていたレミアは、リナの満面の笑顔に、頬を緩める。
リナが笑顔で紅茶を淹れてくれたので、レミアはそれをありがたく頂くことにし、リナ特性の焼き菓子も味あわせてもらう。
昼食が終わってから、ずっと頭を使い続けて、脳が糖分を欲していたのだろう。レミアはいつも以上に、甘い焼き菓子が美味しく思えた。
「そうだ、リナ。一つ訊いておきたいことが有るのだが、いいかな?」
「はい。なんですか?」
自分の分の紅茶を淹れ終えたリナが笑顔で応じてくれたので、レミアは質問を口にする。
「リナ。君の攻撃魔法というものは、ファリアのそれと比較すると、どの程度のものなのだろうか?」
「えっ、私の攻撃魔法ですか? ええと、そうですね、ファリアさんと比較すると……。きっと、十分の一にも満たないと思います」
「それほどまでの差があるのか? 君の魔法は素晴らしいと、よくファリアが褒めているが……」
レミアの言葉に、リナは申し訳無さそうに首を横に振る。
「それは、私の得意な癒やしの魔法などに限定するのであればの話です。もともと攻撃魔法が苦手なので、<僧侶>としての力が加わっても、<女王>の力に目覚めていなかった頃のファリアさんにも敵わないです」
リナは申し訳無さそうな表情で言うが、レミアは「そんな顔はしないで欲しい」と、彼女に笑顔を向ける。
「君は十分すぎるほどの戦力だ。魔法というものが使える<僧侶>は何人もいるだろうが、君には他の者よりも圧倒的なアドバンテージがある。
魔法にはどのような種類があるのかという知識があり、自分の力がどの程度のもので、どの分野ならばそれを最大限に発揮できるかを知っている。これは、何物にも代えがたい利点だ」
レミアの言葉に嘘はない。彼女は心からリナが味方で良かったと思っている。
「……その、ファリアさんが暴走する可能性を、また考えているのですか?」
リナが遠慮がちに尋ねてくるのを聞き、レミアは「それもそうだが、もっと最悪の事態を考えているよ」と答え、紅茶で喉を潤す。
リナが真剣な目でこちらを見つめてくるので、レミアは静かに口を開く。
「私はね、シノの捜索の途中で、誰が死んでしまう可能性が高いのかを考えているんだよ。そして、戦力を失った場合に、どのような行動を取るべきか、作戦を練っている」
レミアはそう言って嘆息する。
「死んでしまう可能性……」
リナが青い顔をするのが分かったが、レミアは構わず話を続ける。
「私が思うに、命を落とす可能性が一番高いのはコリィだ。彼女は<騎士>だから、当然情報収集などの役目をしてもらう事が多くなるだろう。
私の能力でその可能性は下げるつもりだが、単騎で行動して貰うことになる彼女には、どうしても事故の可能性がある」
「……」
リナはティーカップをテーブルに置き、レミアに話を続けるように目で訴えてくるので、話を続けることにする。
「だがね。戦力的に考えると、コリィが死んだ場合が、一番リスクが少ないんだよ。<騎士>はいれば便利だが、私の能力でおおよその代用が効くからね」
「……そうですか……」
リナは絞り出すように言う。
「命を落とす危険性が高い順番は、コリィ、ファリア、私、リナの順だと考えている。これは、それぞれの役目から判断している」
「私が、一番リスクが低いのですか?」
「ああ。私と君は同じ後方支援だが、私には自衛の手段があまりないからね。魔法で戦える分、君の方が死んでしまうリスクは低いはずだ。
そして、ここからは場合の損害が大きい順番を説明させてもらうよ」
レミアは自分の言葉にリナが「はい」と頷いたのを確認し、話を続ける。
「それでは、次に死亡してしまった場合のリスクが高い順番だ。これは、ファリア、私、リナ、コリィの順番だな」
「……」
リナは何も言わなかったが、悲しそうな表情を浮かべる。
その姿に胸を打たれるが、リナにはこの話を聞いて置いてもらいたい。だから、レミアは話を続ける。
「ファリアは攻防の要であるし、魔法のスペシャリスト。そして、ユウヤ殿の現在の戦闘スタイルを維持するための最重要人物だ。そして、私よりも順位が上なのも、最悪私が殺されても、ファリアの魔法があればある程度の代用が効くだろうという判断からだよ。
私とリナは大差はない。だが、ファリアに対するストッパーという意味で、私の方を上にしているよ」
レミアは、静かに紅茶を飲み干す。
「ここまで言えば、君なら分かるはずだ。我々の中で、命を落としやすく、その上失った場合の戦力低下が著しいのが誰なのかは」
「……はい。ファリアさんですよね」
「そのとおりだ。まだ私も実戦経験がないのではっきりと断定はできないが、少数精鋭の編成であれば、私達に勝る精力はそうはいないだろうと考えている。だが、私達の強さは、その多くをファリアに依存してしまっている。それが私には恐ろしいのだよ」
レミアはそう言って、静かに窓の外を見る。
「リナ。この状況で、君ならばどのような戦い方が一番いいと思うだろうか? 少し考えてみてくれないか?」
「えっ? あっ、あの、その、はい……」
リナはレミアの言葉に頷いて、懸命に考える。
しばらくリナは妙案が浮かばないようで苦しんでいたが、やがて「あっ……」と呟き、顔を曇らせる。
「うん。私の結論も、おそらく君と同じだよ」
リナの表情で全てを察し、レミアは力なく笑う。
「ユウヤ殿自身が先頭に、矢面に立つことだ。相手の<王>の戦力がこちら以上の場合には、ユウヤ殿が殺されてしまい、即全滅という危険性は否定できないが、少数精鋭の我々には、それが最善の手段だ」
「ですが、それは!」
「ああ。だが、この方法を取ることを君達は良しとはしないだろう。
それに、これはユウヤ殿が躊躇なく相手を殺せる場合でなければ成り立たないからね。今のところは机上の空論に過ぎない方法なんだ」
リナを安心させるように、レミアは彼女に微笑みかける。
「こんな方法を取らないですむ事を、切に願うよ。だが、必要になるかもしれない。この事は頭の片隅でも良いから、覚えておいてくれないか?」
「……分かりました」
リナは、ユウヤと同様に、その性格上、戦いには向いていない。
だが、それでも彼女はレミアの言葉に頷いてくれた。
それは、リナが理解してくれているからだ。
もしもレミアが死んでしまった場合、その代わりを務められそうなのは、リナしかいないということを。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる