商工会の経営指導員

志水

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滝本、村上、川崎の反撃

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その翌日——



悠斗たちが手にした証拠の情報が、一部メディアにリークされた。

地元ニュースサイトには、以下のような記事が掲載された。



『桜川市の都市開発事業に不正疑惑——商工会、市議会、ディベロッパーの癒着か?』

『開発の裏で動いていた資金の流れが発覚』



ニュースが拡散され、SNSでも次第に話題になり始めた。

しかし——



情報が地元メディアに流出した翌朝——



 川崎市役所の秘書課では、未明から異様な緊張感が漂っていた。

 「……あの件、どうするおつもりですか」



 副市長の声に、市長・川崎誠一はゆっくりと眼鏡を外し、冷ややかな口調で返した。



「火消しは既に手配済みだ。市の広報課には“記事内容の裏付けなし”と発表させた。

 それに——商工会の滝本会長とは、もう話がついている」



その頃、桜川商工会の理事室では、滝本章一会長が、書類の山を前に秘書と密談していた。



「まったく……なぜこんなタイミングで古いデータが漏れる。

 だが、藤嶋とかいう記者……まだうろちょろしてたとはな」



滝本は、机の上の内線電話をとり、市役所の川崎市長へと直通をつないだ。



 「川崎さん、例の“定例記者会見”——予定通り進めます。

 こっちは“事実無根”の声明を出す。そちらは“市は関与していない”という体で押し通してくれればいい」



電話の向こう、川崎は笑った。



「問題ない。記者クラブには先に“非公式の注意喚起”を流しておいた。

 “名誉毀損の恐れがある情報について報道は慎重に”とな。

 マスコミなんて、行政と広告費の顔色をうかがうものだ。潰れる」



「ありがたい。こちらも“地域振興費”の一部を使って、ネット上の書き込み監視を外注しておく。炎上は、抑え込める」





同日午後——



 地方新聞社「桜川日報」の編集部では、ある異常が起きていた。



 内部リーク記事を担当していた若手記者が、編集長に呼び出され、険しい表情で言い渡された。



「この件、今後は“保留”にする。掲載記事はトップから削除する」



「……なぜですか!? 反論文は出ても、まだ裏が取れてないってだけで——」



「市から“強い申し入れ”があった。

 それに、商工会からも正式な抗議文が届いている。今、スポンサーの大手地銀も“静観”の構えだ。 分かるな? 我々の立場も、微妙なんだよ」





その頃、滝本と川崎は、密かに“情報統制リスト”を共有していた。

 ・SNSの特定ハッシュタグを重点監視

 ・メディア各社の報道スタンス別に「協力的」「中立」「危険」とランク分け

 ・市広報が裏で運営する“市政応援ブログ”を用いた世論操作の実施





一方、東海ディベロップメントの村上達哉社長も、素早く反撃の手を打っていた。



彼の元にはすでに、「桜川市役所の保管データに不正侵入があった」との情報が、市幹部から極秘裏に届けられていた。



 村上は、静かに笑った。



「……そうか。データは“うち”からではなく、“市”から出たものか。

 それなら話は早い。責任の所在を、市に押し戻せる」



彼はすぐさま顧問弁護士を呼び出し、

情報漏洩ではなく「不法侵入および窃盗による証拠の不正取得」として

 刑事告訴と民事での損害賠償請求の準備に着手した。



「違法手段で得た証拠に正当性はない。それが法の建前だ。

 裁判で使えないデータを、正義だの真実だのと喚いたところで、マスコミは動かんよ」



さらに村上は、旧知の広告代理店を通じて、主要メディアの営業部門にプレッシャーをかけさせた。



「桜川再開発プロジェクトの広告出稿、全て一時停止。

 “特定の偏向報道が終息するまで”とな」



裏では、川崎市長とも接触を図っていた。



「市のデータ管理体制の不備を認めるような真似はしないでもらいたい。

 こちらも、市の名誉と安定を守るために尽力してきた。わかりますね?」



市長は無言で頷き、その背後で進められていた“記録ファイルの廃棄”が急がれた。

最後に、村上は報道関係者向けに「警告文書」を発行した。



 そこには、こう記されていた。



「現在拡散されている“証拠データ”は、違法に取得されたものであり、明白な不法行為によるものです。

 本件に関する報道や引用については、名誉毀損・業務妨害の可能性を含むため、法的措置を検討いたします。」



彼は、会議室のガラス越しに空を見上げ、つぶやいた。

「奴らは、こちらがルールを守って戦うとでも思ってるのか……」
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