【R-18】自称極悪非道な魔王様による冒険物語 ~俺様は好きにヤるだけだ~

秋刀魚妹子

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第306話 地獄絵図と弓使い

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 「すまん、戻った。 問題は無いか?」

 セムネイルは4次元での用事を手早く済ませ、セリス達がFクラスを鍛錬しているグラウンドへと帰って来ていた。

 「早かったな、兄ちゃん。 とりあえず……まだ死人は出てないな」

 扉の見張りを頼んでいたササガに指を差され、セムネイルはグラウンドを見渡す。

 「うむ、順調の様だな」

 グラウンドからは悲鳴が聞こえており、セムネイルは満足そうに頷いた。

 戦士職の班では、魔剣の魔王であるグラが権能で分裂し20名の生徒達それぞれに付いて指導している。

 直ぐ隣で叱咤される生徒達が半泣きになりながら、地竜の攻撃を真正面で回避する鍛錬をしていた。

 ノラは地竜の攻撃を回避出来なかった時の為に漆黒の大剣を盾代わりにしてグラのサポートをしているようだ。

 「ルイスは特に肝が据わってるな。 何度も自ら地竜の正面へと向かっている。 カイルは……ノラの真似か? お、グラに無理な体勢の回避をして後頭部をぶん殴られてるな」

 数の多い戦士職の班は実物の地竜を相手にしている事も有り、正に阿鼻叫喚の地獄絵図である。

 「兄ちゃん……俺達でも無理だぜ? あんな竜の攻撃を見極めて回避するなんざ」

 地獄絵図の班を眺めながら呟くセムネイルの感想に、ササガはドン引きしながら返す。

 「問題無い。 竜の中で最弱の地竜を選び、更に土魔法すら使えない成体を出してるからな」

 「……そ、そうか。 なら……大丈夫なのか」

 「おう。 じゃあ、見て回って来る。 またな」

 意味不明な回答にササガは考えるのを止め、結界の中に入るセムネイルを見送るのであった。

 ◆◇◆

 「リンの方は少し不安だったが、大丈夫そうだな。 ……ん?」

 弓使いの班を見に来たセムネイルは感心しながら頷いていたが、異変に気付き首を傾げる。

 リンは5名の生徒達に弓の絞り方、狙い方、そして実用的な戦技の指導を始めているようだ。

 女子生徒達はリンの教えを懸命に守りながら、鍛錬用の短弓で的に矢を射っている。

 だが、リーダーを任せたイザベラだけは紫髪を掻きむしりながら苛立っている様だった。

 何度も短弓を射っているが、近くの的にすらまともに当たっていない。 狩人の村出身にしては、明らかに下手だ。

 イザベラの動きを見たセムネイルは、直ぐに原因を突き止めリンの下へと向かった。

 「リン、待たせたな。 ほれ、コレが要るだろ」

 「セムネイル様! ふふ、流石です。 イザベラさん、コレを使ってみて下さい」

 セムネイルから渡された太く真っ黒な弓をリンは直ぐにイザベラへと手渡す。

 「どんな弓を使っても無理よ。 見たでしょ、私が何でFクラスなのか。 短弓ですら、当てれないの……」

 「……さて」

 受け取ろうとしないイザベラの様子に、セムネイルは口を出そうとした。 だが、黙ってリンの様子を窺う事にする。

 (リンは何故イザベラが短弓を使って的に当てる事すら出来ないのか、既に理解している。 ならば、導くべきはリンだ)

 この時間はまだリンが生徒を導く教官なのだ。 誰かを導くのはリンにとっても良い経験になるだろう。

 「イザベラさん。 狩人の村で暮らしている時は弓の腕はどうでしたか?」

 「何よ、急に。 ……村では、獲物に矢を外した事は無かったわ」

 目を伏せながら、イザベラは手に持つ短弓を握りしめる。

 「なのに、冒険者になろうとこの学園に入ってからどんどん弓の腕が落ちていった。 入学した時はAクラスだったのに……今では落ちこぼれのFクラスよ」

 イザベラの話を聞いたリンは確信し、太く真っ黒な弓を無理矢理手渡した。

 「リンを信じて下さい。 イザベラさんがこの弓を使えば、必ず的に当たります」

 「……コレが最後よ。 失敗したら、私はもう辞め……るっ?! 少し……重いわね」

 真剣なリンの瞳を見たイザベラは観念し、弓を受け取る。 そして、その重さに顔を顰めるが何とか矢を番えて構えた。

 「大丈夫です。 全力で、弦を引き絞って下さい!!」

 隣に立つリンに言われ、イザベラは本気で絞った。 

 「……え? コレって……」

 何かに気付いたイザベラの表情が明るくなり、的に目掛けてそのまま矢を射った。

 ズパァァァァァァァンッ!!!

 「「「「きゃぁぁぁっ?!」」」」

 突風が吹き荒れ、一番遠くの的に当たると同時に爆音が響き渡る。

 近くで鍛錬をしていた弓使いの女子生徒達から悲鳴が上がった。

 「命中ですよ! イザベラさん!」

 「はは……当たった。 近くの的にすら全然当てれなかったのに……当たった!」

 イザベラは拳を握り締め、久し振りの感覚に興奮する。 そのままリンとハイタッチしてから、イザベラは手渡された弓を見た。

 「コレ……凄い。 めちゃくちゃ重いけど、凄く使いやすかった。 ねぇ……その、リン教官。 何でなの」

 「え、えへへ……えっとですね。 それは」

 頬を赤くしたイザベラが敬意を持ってリンを教官と呼び、その事に気付き嬉しそうに微笑んだリンが説明を始めた所でセムネイルは黙ったまま離れた。

 (うむ、リンに任せて大丈夫だったな)

 妻の成長に満足したセムネイルはそのままセリスの下へと向かう。

 因みにイザベラが短弓で当たらなくなった理由は至極単純である。 弓使いとして鍛錬を続けたであろうイザベラは、弓の適性が大きく上がったのだ。 

 それは、直剣と円盾を装備する戦士が大剣や両手斧を使う重戦士に変わるのと同じである。

 短弓では軽すぎて、本気で使えば壊れる程の力が付いたイザベラは剛弓使いになっていたのだ。

 剛弓は短弓や長弓と違い、張りが強く重い。 故に、かなりの力が無いと矢を引き絞る事すら出来無いだろう。

 もし、狩人の村にずっと住んでいれば年長者から助言があっただろうが此処は冒険者学校だ。

 歴戦のセムネイルや弓の鍛錬を欠かさないリンは、イザベラの短弓を恐る恐る引く動作で直ぐに気付いたが、鍛錬の道具や武器が統一されている環境でイザベラがその事に気付く事は無理だったのだろう。

 「こ、こここ黒檀の剛弓?! 私、こんな高級な弓使ったの?! 無理無理無理無理無理!!」

 何やら後ろでイザベラが大声を出しているが、セムネイルは気にせずに魔法使いの班が鍛錬している場所へと向かうのであった。
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