真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第238話 殲滅と救出作戦

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 「じゃあ、この作戦でいいわね?」

 「了解でさぁ!」

 「アォーン! 任せてくれ」

 「カァー! お任せ下さい、主よ!!」

 ネルは仲間達とどうすべきか話し合い、アンデットになったオークを殲滅する班とまだ無事なオーク達を探し安全な場所に誘導する班に別れる事を決めた。

 「じゃあ、モロは私と行くよ! 土魔法で落とし穴を作って殲滅。 それと、念の為にオーク帝国付近を囲まないと」

 「ガウッ! 移動は頼むよ」

 ネルは土魔法で、オーク達が避難出来る囲いを作るとハルバートを手に立ち上がる。

 同行するモロもネルの肩に飛び乗り、出発した。

 「アタ、よろしく頼みまさぁ!」

 「カァー! 我が翼にかけて、必ずや任務を達成してみせましょう!」

 キュウベイを背に乗せたアタは飛び上がり、生き残りを空から探しに飛び去る。

 「ブヒィィィ?! 何故、終始うわぁたくしぃを無視しますのぉぉぉ!?」

 分厚い壁で囲まれる避難所に残された第一皇女が暗い夜に叫ぶ。

 だが、目印としてネルが作った巨大な焚き火が爆ぜる音のみが響き、派手なピンクのドレスを着たうるさいオークに応える者は誰も居なかった。

 ◆◇◆

 「出来た! さっさと始末して、次を作りに行くよモロ!」

 「ガルルル! ウィンドカッター!」

 「「「「ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!」」」」

 ネルは鑑定からの指示に従いながら、高い土壁を作り始めていた。 
 
 当然、その間にアンデットになったオーク達は接近し、生きているネル達を同胞に変えようと襲い掛かってきた。

 腕や足がもげ、様々な箇所を欠損したオーク達の歩みは遅く、余裕を持って数百のアンデットオーク達を落とし穴に全て落とす事に成功した。

 後は殲滅するのみだ。

 落とし穴の中でアンデットオーク達は、蠢き呻く事しか出来ない。

 モロの風魔法による刃やネルの投石により、次々に数を減らし始めた。

 (ねぇ、鑑定。 順調だけど、こんな簡単で大丈夫なの?)

 ネルは投石を続けながら、鑑定に確認をとる。

 «――問題無しです。 以前、初めて遭遇した際は巨木の森の中で視界も悪かったです。 ですが、此処は平原でネルの作った焚き火で視界も確保出来ています。 前回の様な油断もありません»

 (……耳の痛い事言わないでよ。 それで? アンデットになったオークの鑑定結果は? 急がないといけないから、任せてくれって言ったのは鑑定でしょ?)

 «――肯定。 既に鑑定を行っております。 ですが、モロの案内から推測し帝国を囲む土壁を計算していますのでゆっくり確認している時間はありません» 

 (分かってるわよ。 聞きたいのは知っておくべき事は無いのかってことよ!)

 ネルは力任せに土魔法で作り出した硬い岩を投石し、複数のアンデットオーク達をミンチに変える。

 «――以前に出会ったアンデットと同様です。 噛まれれば、死体化の呪いにより死んだ後アンデットになります»

 (ちっ……やっぱりか。 了解よ。 確か、マンドラゴラと聖木の葉を混ぜたら治せるのよね? 近くに無いの?)

 «――検索中。 残念ながら、この近辺は魔力が少なくマンドラゴラも聖木も自生していません。 噛まれれば……終わりです»

 鑑定からの報告を聞いたネルに緊張が走る。

 簡単等と言っている場合では無いのだ。

 もし、仲間の誰かがアンデットに噛まれ死体化の呪いを受けたら一巻の終わりと云う事である。

 「ふぅ……ねぇ、モロ。 このゾンビ達に噛まれたら、死体化の呪いってヤツで死んで……ゾンビになるから気を付けてね。 キュウベイもゾンビ達の事は知ってるから大丈夫だと思うけど……次は治せないから」

 「ガウッ! 了解さ! 大丈夫、今の友なら油断はしないだろ?」

 肩に乗るモロからの問いに、ネルは笑って答える。

 「当たり前でしょ! よし、向かって来てたのはこれで全部ね。 今なら燃やせる筈だから、さっさと終わらして次に行くわよ! ガァァァァァ!」

 ネル達はアンデットオーク達の処理を済ませ、土壁を作りながら次に向かうのであった。

 ◆◇◆

 「アタ! あそこに松明の明かりが見える!」

 「カァー! 了解!」

 キュウベイとアタは漆黒の闇を飛び、高速で移動していた。

 そして、長い明かりの列を見つけその場に飛来する。 明かりの数を見るに、1000匹近いオーク達が帝国から脱出できたようだ。

 「ブヒィィィ?! ま、魔物だぁぁぁ!」

 「フゴ、戦闘準備! 帝国民を守るのだ!」

 先頭には兵士らしきオーク達が武器を手にしており、突如として現れたキュウベイ達に槍を向けた。

 「待て! 俺達は敵じゃない! オーク帝国第一皇女殿下より、帝国の危機を知り避難民を救出に来た!! 俺はゴブリン王国出身のキュウベイ、此方は八咫烏王のアタだ。 俺達の主が作った避難所がある、案内するから付いてきてくれ!」

 「ブヒッ?! ゴブリンだと? お前の何処がゴブリンだ!!」

 「フゴッ! 信じられるものか! それに、第一皇女殿下は我等を逃がす為に囮になられたのだ! きっと今頃……くっ!」

 キュウベイは両手を上げ、オーク兵を説得するが聞く耳を持たない。

 どうしたものかとキュウベイが悩んでいると、アタがオーク兵達に近寄る。

 「ブヒッ?! な、何だ! やるのか!?」

 「アタ、あまり刺激したらダメだ!」

 「カァーーーー! おい、貴様等に問うぞ。 あのピンクで派手な服を身に纏い、己の容姿すらまともに判断出来ずに煩く喚き散らすオークは貴様等の主なのか? もし違うならそう言ってくれ。 あの煩いオークは、我が主をブサイクと愚弄した! 利用価値が無いのなら、直ぐにでも八つ裂きにしてやる!!」

 アタの怒りの叫びに、オーク兵達は目を見開き驚いた。

 「ブヒッ……派手なピンクの服に煩く喚き散らすオーク……? 間違い無い、殿下だ!!」

 「「「「「ブヒィィィ! 殿下がご無事なのか!」」」」」

 オーク兵達は喝采を上げ、後ろの帝国民達も泣いて喜ぶ。

 「カァー? 何だ、やはり八つ裂きか?」

 何を喜んでいるのか分からないアタは首を傾げるが、隊長らしきオーク兵が進み出てキュウベイとアタに頭を下げた。

 「ブヒッ! 度重なる無礼、どうかお許し下さい。 キュウベイ殿、アタ殿。 我等を殿下の下に! お願いします!」

 「カァー……八つ裂きはダメなのか? キュウベイ殿」

 「アタ、お手柄だな。 さぁ、早く避難所に案内しよう! 俺は避難民達の後ろを守りに行く。 アタは道案内を頼みまさぁ!」

 「ブヒッ、ならば我も同行し後方の仲間に説明します」

 キュウベイは弓を構え、隊長らしきオーク兵と後方に向かった。

 「カァー! 仕方無い、主の命令を優先させねば。 行くぞ、付いてこい!」

 こうして、無事に避難民と合流出来たキュウベイ達は暗い闇の空を照らす巨大な焚き火の光を目指して移動を開始するのであった。
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