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第237話 太古の記憶と暴食に相応しい娘
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「鑑定さん……? いや、誰? あがっ……お腹が暴れて……でも、ダメだ。 食べちゃダメ!」
クウは一瞬聞こえた声に反応し、理由も分からずに肉人形から身体を離した。
心の奥から何かが叫ぶ。
どんなに飢えても、絶対に食べてはダメだと。
「うぐ……あ、あぐぅ?!」
ゴギュルルルルルルルルルルルルル!!
クウは腹を抱えて苦しみのたうち回り、吐血した。
やっと肉を喰えると確信していた暴食が怒り暴れているのだ。
「ダメ、絶対に……ダメ!」
クウが必死に腹を抑え、暴食と戦うのを暴食の邪神は祈るように見守っていた。
(ごめんなさい、クウちゃん。 酷いお母さんでごめんなさい……でも、貴女が本当に此処から出て暴食の権能と生きていくなら必要な事なの。 私と同じ事をさせる訳にはいかない。 それぐらいなら、恨まれても憎まれても一緒にこの世界に暮らした方が幸せだから……)
娘の勝利を願う一方、永遠に娘を自分だけの物にしたい。 そんな母と邪神の間を行き来する暴食の邪神は古い記憶を思い起こし始めた。
◆◇◆
太古の昔、銀河系が生まれ様々な星々が誕生を待っていた時代。
創造神育成学校の1期生が卒業した。
その内の一柱である創造の女神は、食を好み様々な食べ物があるグルメと云う惑星を創造したのだ。
幾星霜もの月日が流れ、グルメでは多くの人類が食を探求していた。
創造の女神グルメは、生み出した人類達と共に歩み様々な料理を分け合い幸せに暮らす日々を送る。
だが、そんな幸せは長くは続かなかった。
同期から邪神が出たと神界で大騒動になったのだ。
「あ! アース! ねぇ、何が起きてるの?」
グルメは神界に赴き、同期であるアースを見つけ問い掛けた。
「む? おぉ、グルメ。 久し振りじゃな。 儂も聞いたばかりじゃ。 他の者達も来るじゃろ、創造の館に行こうぞ」
同期の中でも、爺臭く堅物だったアースと近況を話しながら創造神や創造の女神が交流する創造の館へと向かう。
「誰が邪神に堕ちたんだろ……アースは聞いてる?」
「……楽園の馬鹿じゃ」
グルメは目を見開き驚いた。
同期の神達は創造神や創造の女神となる際に、創り出す世界の名前を己の名とするのが決まりである。
故に、世界の名前が体を表すのだ。
特に楽園は、創る世界の生き物全てが幸せで楽しい世界にするのだと創造神育成学校で語っていたのを思い出す。
「そんな……あの楽園が?」
「事実じゃ。 ほれ、着いたぞ」
「あ、皆久し振りね」
グルメは館で待っていた他の同期の下へと走った。
◆◇◆
次の瞬間。
何故かグルメは自身の世界にある自室のベットで目を覚ました。
「え……? あれ、夢だったのかしら? でも、あれは……」
自分の手を眺め、確かにあれは現実だった筈とグルメは思考に耽る。
だが、直ぐにその考えは掻き消える事になった。
ゴギュルルルルルルルルル……。
「あがっ……?! 何、これ……お腹が」
身に覚えのない空腹に突如襲われ、グルメは急いで家にある食べ物を食い散らし始める。
しかし、幾ら食べても空腹は止まらない。
「何で……?! あぁ……お腹、お腹が空いた」
本来、神は不滅であり食事は不要だった。 グルメは娯楽として食事を好み、趣味として眷属である人類が作る料理を美味しく食べていたに過ぎない。
その筈なのに、食べても食べてもグルメの飢えは増すばかりだった。
ゴギュルルルルルルルルル!
「ひっ……何これ、痛い、痛い痛い痛い!」
腹の虫は早く喰えと喚き散らし、グルメは恐怖する。
「グルメ様~? 何時の間にお帰りになられたのですか~??」
すると、グルメの家を最強の眷属であり親友の田所が訪れ玄関を開けた。
「あっ、ダメよ田所さん! 今来ちゃ……あ」
ゴギュルルルルルルルルル!
エプロン姿の田所を見たグルメは思ってしまったのだ。
とても美味しそうだと。
◆◇◆
「……はっ?! いけない、クウちゃんは……?」
暴食の邪神は意識を記憶から呼び戻し、未だに暴食の飢餓に耐えるクウを見た。
「くぎぎぎ……が、ま、んーーー!!!」
クウは歯を食いしばり、口からは血が滴り落ちる。
「クウちゃん……貴女は、私とは違うのね。 分かったわ……私の負けよ」
暴食の邪神は肉人形を消し去り、自分の胃袋から取り出したステーキをクウの目の前に差し出す。
「……お母さん?」
「合格よ。 クウちゃんはお母さんよりも、暴食に相応しいわ。 ほら、これ食べて――いったぁぁぁぁぁい!!」
自らの手ごとステーキに齧り付かれた母の絶叫が暴食の胃袋内に木霊するのであった。
クウは一瞬聞こえた声に反応し、理由も分からずに肉人形から身体を離した。
心の奥から何かが叫ぶ。
どんなに飢えても、絶対に食べてはダメだと。
「うぐ……あ、あぐぅ?!」
ゴギュルルルルルルルルルルルルル!!
クウは腹を抱えて苦しみのたうち回り、吐血した。
やっと肉を喰えると確信していた暴食が怒り暴れているのだ。
「ダメ、絶対に……ダメ!」
クウが必死に腹を抑え、暴食と戦うのを暴食の邪神は祈るように見守っていた。
(ごめんなさい、クウちゃん。 酷いお母さんでごめんなさい……でも、貴女が本当に此処から出て暴食の権能と生きていくなら必要な事なの。 私と同じ事をさせる訳にはいかない。 それぐらいなら、恨まれても憎まれても一緒にこの世界に暮らした方が幸せだから……)
娘の勝利を願う一方、永遠に娘を自分だけの物にしたい。 そんな母と邪神の間を行き来する暴食の邪神は古い記憶を思い起こし始めた。
◆◇◆
太古の昔、銀河系が生まれ様々な星々が誕生を待っていた時代。
創造神育成学校の1期生が卒業した。
その内の一柱である創造の女神は、食を好み様々な食べ物があるグルメと云う惑星を創造したのだ。
幾星霜もの月日が流れ、グルメでは多くの人類が食を探求していた。
創造の女神グルメは、生み出した人類達と共に歩み様々な料理を分け合い幸せに暮らす日々を送る。
だが、そんな幸せは長くは続かなかった。
同期から邪神が出たと神界で大騒動になったのだ。
「あ! アース! ねぇ、何が起きてるの?」
グルメは神界に赴き、同期であるアースを見つけ問い掛けた。
「む? おぉ、グルメ。 久し振りじゃな。 儂も聞いたばかりじゃ。 他の者達も来るじゃろ、創造の館に行こうぞ」
同期の中でも、爺臭く堅物だったアースと近況を話しながら創造神や創造の女神が交流する創造の館へと向かう。
「誰が邪神に堕ちたんだろ……アースは聞いてる?」
「……楽園の馬鹿じゃ」
グルメは目を見開き驚いた。
同期の神達は創造神や創造の女神となる際に、創り出す世界の名前を己の名とするのが決まりである。
故に、世界の名前が体を表すのだ。
特に楽園は、創る世界の生き物全てが幸せで楽しい世界にするのだと創造神育成学校で語っていたのを思い出す。
「そんな……あの楽園が?」
「事実じゃ。 ほれ、着いたぞ」
「あ、皆久し振りね」
グルメは館で待っていた他の同期の下へと走った。
◆◇◆
次の瞬間。
何故かグルメは自身の世界にある自室のベットで目を覚ました。
「え……? あれ、夢だったのかしら? でも、あれは……」
自分の手を眺め、確かにあれは現実だった筈とグルメは思考に耽る。
だが、直ぐにその考えは掻き消える事になった。
ゴギュルルルルルルルルル……。
「あがっ……?! 何、これ……お腹が」
身に覚えのない空腹に突如襲われ、グルメは急いで家にある食べ物を食い散らし始める。
しかし、幾ら食べても空腹は止まらない。
「何で……?! あぁ……お腹、お腹が空いた」
本来、神は不滅であり食事は不要だった。 グルメは娯楽として食事を好み、趣味として眷属である人類が作る料理を美味しく食べていたに過ぎない。
その筈なのに、食べても食べてもグルメの飢えは増すばかりだった。
ゴギュルルルルルルルルル!
「ひっ……何これ、痛い、痛い痛い痛い!」
腹の虫は早く喰えと喚き散らし、グルメは恐怖する。
「グルメ様~? 何時の間にお帰りになられたのですか~??」
すると、グルメの家を最強の眷属であり親友の田所が訪れ玄関を開けた。
「あっ、ダメよ田所さん! 今来ちゃ……あ」
ゴギュルルルルルルルルル!
エプロン姿の田所を見たグルメは思ってしまったのだ。
とても美味しそうだと。
◆◇◆
「……はっ?! いけない、クウちゃんは……?」
暴食の邪神は意識を記憶から呼び戻し、未だに暴食の飢餓に耐えるクウを見た。
「くぎぎぎ……が、ま、んーーー!!!」
クウは歯を食いしばり、口からは血が滴り落ちる。
「クウちゃん……貴女は、私とは違うのね。 分かったわ……私の負けよ」
暴食の邪神は肉人形を消し去り、自分の胃袋から取り出したステーキをクウの目の前に差し出す。
「……お母さん?」
「合格よ。 クウちゃんはお母さんよりも、暴食に相応しいわ。 ほら、これ食べて――いったぁぁぁぁぁい!!」
自らの手ごとステーキに齧り付かれた母の絶叫が暴食の胃袋内に木霊するのであった。
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