真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第236話 アンデット包囲網とクウ最後の試練

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 「つまり、話を要約すると……オーク帝国は滅んだって事?」

 「ンゴッ?! んまぁぁぁ! 何を仰っしゃるのかしら、大きいお方。 このうわたぁくしぃが生き残り、帝国民達が霞程でも生き残れば復興等、簡単! 単純! 超容易!! です事よー!」

 ネルの要約にオークは怒りながら抗議する。

 「クゥン? 因みに、何匹の帝国民が生き残ってるんだい?」

 「フゴ、わかりませんわぁぁぁ!」

 モロからの問いにもピンクのドレスを着た派手なオークは自信たっぷりに答えるが、結局は何も分からず全く対処のしようが無い。

 「はぁ……頭痛い。 ねぇ、モロどうする? オーク帝国に行こうにも、ゾンビだらけなら行っても仕方無くない?」

 「ワフ、そのゾンビとやらは歩く屍の事だね。 でも、このままにも出来ないよ。 生き残りがいるなら助けないと」

 「そうですよ、姉御。 第1皇女殿の話を聞く限り、そのゾンビに噛まれると死んで同じ様になるなら食い止めないとトロールの集落やゴブリン王国が危険です」

 ネルは唸りながら鑑定に問い掛けた。

 (う~~ん……ねぇ、鑑定。 確かアンデットって、土魔法で生き埋めはダメなんだってけ?)

 «――肯定。 その土地が汚染される可能性大です。 頭部を破壊し、燃やす方法を推奨»

 (やっぱりダメか……因みにゾンビ達の場所って探知できそう? さっきは教えてくれたよね)

 «――否定。 探知できる訳ではありません。 逆に探知しようとしたら、其処だけ何も無い空間として違和感が分かるだけです»

 (OK、それでも充分よ。 その何も無い空間は此方に来てる?)

 «――肯定。 後、数十分もすれば森から現れるでしょう»

 「……仕方無い。 ゴブリンやトロール達の為だもんね。 よし、皆やるよー! 後、数十分でアタが見たゾンビの群れが来るから対処の方法を話し合うから集合ー!」

 ゴブリンやトロール達を守る為、ゾンビ達に対処すべくネルは仲間達と話し始めるのであった。

 ◆◇◆

 ――どれだけ時間が経過したかも不明な胃袋の中で、クウは倒れていた。

 「おぉぉ……お腹減ったなぁ」

 暴食の胃袋内で修行をしていたクウは、母からの最終試練を受けている所だ。

 それは、ひたすらに空腹に耐え続けると云う内容である。

 一見簡単に思えるが、生まれてから常に空腹と戦ってきたクウにとってはこの最終試練が一番過酷だった。

 「やばいよぉ……もう、指を動かす元気も無い。 ねぇ、これいつ終わるのさ……」

 ゴギュルルルルルルルルル!

 腹からは凄まじい音が鳴り響き、クウは何も無い空間で朧気な意識を保っている。

 もし、意識を断てば自分をコントロール出来ない状況になると本能で理解しているからだ。

 「耐えなきゃ、耐えて……あの部屋に入る……ん? あれ……何で、あの空き部屋に入らないといけないんだっけ……?」

 思考も出来ず、身体の全てが早く何かを喰らえを叫びだす。

 ゴギュルル、ゴギュルルルルルル!

 「うるさ……。 早く……向こうに戻らないと。 皆が心配……ん? 皆って誰だ……? 向こう……?」

 身体を動かせない中で、霞がかった記憶が引っかかる。

 何故、強くならないといけないのか。

 何故、自分は祖父の事を探しに行かないといけないのか。

 何処に探しに行くのか。

 何故、此処に居るのか。

 誰が心配するのか。

 自分には祖父と母しか家族は居ない。

 自分には友と呼べる者は居ない。

 クウは頭の中で反芻するが、何も思い出せずにいた。

 「分かんない……。 頭痛いし……お腹減った~」

 クウはもう思い出せないのだ。

 何時の間にか消えた記憶と思い出を。

 巨人として転生した事、相棒となったスキル鑑定、殺された家族、できた友、慕ってくれる者達、大切な弟分、赤髪のもう1人の事。

 この異次元に来てから、クウの記憶は食われ続けていた。

 母と慕う暴食の邪神に。

 「あら♪ クウちゃん、順調そうね~♪ それじゃあ、これから出す物を食べずに我慢できたら合格よ~♪」

 突如として、暴食邪神が現れ優しそうに微笑んだ。

 そして、クウの目の前に色とりどりの肉で出来た人形を何処からともなく取り出し始める。

 「お母さん……? コレ、何……?」

 果てしなく広く高い空間に多くの肉人形が立ち並ぶ。

 見上げる程に巨大な巨人と大きめの巨人達。

 犬の様な見た目の肉人形達も並び、隣には小鬼の様な歪な肉人形達が並ぶ。

 そして、小鬼よりも大きな肉人形とクウに良く似た肉人形が立っておりクウは肉の匂いに思わず喉を鳴らした。

 特に先頭に立つ肉人形は見た目も美しく、端麗な見た目の肉人形が食欲を駆り立てる。

 当然クウには、この並ぶ肉人形達が何かは分からない。 誰かも分からない。

 だが、ひたすらに空腹なのだ。

 「あ……お腹減った。 お母さん、これ食べちゃダメなの? 何で? どうして?」

 ゴギュルルルルルルルルル…………。

 クウは身体を無理矢理起こし、ふらふらと肉人形の方へと歩みを進める。

 「ふふ……♪ コレが、お母さんがクウちゃんにしたげれる、本当に最後の試練だから。 もし、失敗したなら……クウちゃんはずっとず~~~っとお母さんと一緒に暮らすの♪ お母さんとしては、失敗しても良いと思ってる。 ぜ~んぶ忘れて、2人で仲良く暮らしましょうよ。 ほら……どうする?」

 暴食の邪神は嗤いながら様子を見守る。

 「お肉……お肉、お肉、お肉」

 ゴギュルル……ゴギュルルルルルルルルル!

 クウの口からは涎が滴り落ち、一歩一歩と肉人形の方へと足が動く。

 そして、容姿端麗な肉人形に手を掛けようとしたその時。

 «――クウネル»

 誰かの声が聞こえた。

 「………………鑑定さん?」
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