真巨人転生~腹ペコ娘は美味しい物が食べたい~

秋刀魚妹子

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第235話 追う大群とうるさいオーク

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 「……カァー?」

 アタは理解不能なオークの登場に硬直した。

 「ブヒィィィ?! ちょぉっと、鳥! 早くこのうわたぁぁくしぃを空に運びなさぁぁい! じゃないと、追いつかれちゃうのよぉん!」

 硬直していると、派手なメスのオークはアタの羽に掴まりよじ登ろうとし始めた。

 「カァー!? おい、貴様! 触るな! 私は八咫烏王のアタ、気安く触れて良いのは主達だけだ!」

 しかし、派手なピンクのドレスを着たオークは振り落とされまいと凄まじい力でアタの羽を握り締める。

 「ブヒ! 離すもぉんですかぁぁ! うわたぁくしぃは、民達が少しでも逃げ落ちるまで奴等に加わる訳にはいかないのよぉぉん!」

 意味不明な事を話すオークにアタは困り果てるが、とりあえず助けが必要な事だけは理解した。

 「カァー! とりあえず落ち着け! 我が主の下に連れて行く。 それから主に助けを求めろ!!」

 アタからの提案にオークは唾を撒き散らしながら喚く。

 「ブヒィィィ! ほぉらぁぁぁ! 鳥が早くしないから、来たじゃないのぉぉぉ!」

 「カァー……? アレは、何だ?」

 オークが指差す方を見ると、森の中を向かってくる群れが見えた。

 その群れは、見た目だけはオーク達だ。 しかし、異様な事に全員が手足の欠損や損傷が見られ、どう考えても生きて動ける状態では無かった。

 「ブヒ! 早く、早く乗せてぇぇぇ! うわたぁくしぃの馬車を引いていたペットちゃんが逃げちゃって、絶体絶命なのよぉぉ!」

 「カァー! ちっ、仕方無い……しっかりと掴まれ!」 

 この異常な事態に、アタはネル達に報告する事を最優先とし仕方無く煩く喚くメスのオークを背中に乗せる。

 「「「「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙」」」」

 まるで、助けを求める様に手を突き出しながら向かって来るオーク達の目には生気は無く、普通の生き物なら殆ど見えないであろう暗闇の中を真っ直ぐアタの方へと歩いて来た。

 アタは直ぐ様に飛び立ち、急ぎネル達の方へと飛行を始める。

 「カァー! おい、貴様はオークと名乗ったな。 下のアレもオークなのだろ? 何が起きているんだ」

 「うわたぁくしぃには分からないわぁぁ! 急に、帝都で動く死体が現れてぇ! 噛まれた民がどんどん変になったのよぉぉん! って、ちょっと待ってぇぇぇ?! うわたぁくしぃの可愛いペットちゃんがぁぁぁ!」

 事情を聞いていると、突然オークは身を乗り出しアタが仕留めたビックボアに向かって泣き叫び始めた。

 「カァー……うるさい、うるさすぎる」

 あまりにも煩く、アタは一瞬振り落とそうかと云う思考が頭をよぎったが、主ならどうするかと考え何とか思い直す。

 「カァー! ダメだ、主はオーク帝国を目指していたのだ。 きっと、このオークからの情報は必要になる筈」

 「ブヒィィィィィィィィィィィィ! うわたぁぁくしぃのペット兼非常食ちゃんがぁぁぁぁ!」

 豚が豚を食べるのか? と、一瞬考えたアタだったが遠目にネルが見えた事で不必要な思考は放棄するのであった。

 ◆◇◆

 「え、待って、うるさ!」

 「ブヒィィィ?! 貴女、何?! トロール!? にしては、ブッッッサイクねぇぇぇ!」

 「カァー、主……このオーク殺しても良いですか?」

 アタはネル達と無事に合流したが、背中の派手なオークはネルを見た瞬間に悲鳴を上げた。 

 挙げ句に、ネルを侮辱した事でアタとキュウベイのこめかみに青筋が浮かぶ。

 「キューン……何やら命知らずなオークだね」

 「アタ、殺すなら俺に任せろ。 姉御を侮辱した罪、俺の全力で放った矢を額に受ける事で許してやりまさぁ!」

 「ブヒィィィィィィ?! なぁんで、このうわたぁぁくしぃがぁ殺されますのぉぉ!? 帝国民を少しでも逃がす為にぃぃ! 命を張りましたのにぃぃぃ! っいだぁぁ?!」

 ネルの肩に乗るキュウベイがゆっくりと弓を構え始めた。

 当然、キレたアタが何時までも背中に乗せる筈もなくそれなりの高さから問答無用でメスのオークは落とされる。

 「いや、それ許してないよキュウベイ。 でも……えへへ、ありがとう。 アタもありがとうね。 それで? 何がどうなってるのよ」

 ネルが問いかけるが、オークは痛みに悶えており話にならない。

 「カァー! この不届き者を、オークらしき大群が追ってました。 ですが……どのオークも生きている筈の無い重傷な者達ばかりで、生気も無く呻きながら行軍しております」

 アタの返答にネルやキュウベイ達は固まる。

 「……まさか、森狼みたいな動く死体って事?」

 ネルの一言にモロとキュウベイの表情に緊張が走った。

 「ブヒィィィィィィィィィ! 頭がぁぁぁ! うわたぁぁくしぃのキュートな頭がぁぁぁぁぁ!」

 「うっるさ!」
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