転生したら魔王のパートナーだったので、悪役令嬢にはなりません。

Y.ひまわり

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47. そういうことで

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「それで僕は、新しい情報や何か動きがあったら、すぐに魔族の誰かに教えればいいんですね?」

 レンは、協力者として動くと約束してくれた。

「ええ、そうです。こちらからも探りますが、情報は多いに越したことはありませんから。もしも、アリスが盗聴していたと証明されたら、レンはどうするつもりなのですか?」
 
 ノアからの質問に、レンは答えに詰まる。

「……正直、具体的な策はまだ無かったんです」
「けれど、動かずにはいられなかったと?」
「……はい。僕は、魔王討伐なんてどうでもよかったんですよ。本当の目的は妹を探すことで、他は出来たらやろうかなぁってくらいで。ただ、妹探しはベアトリーチェ嬢にも頼んでしまいましたから――もし、アリス嬢が盗聴していたら、ベアトリーチェ嬢が巻き込まれてしまうのではないかと思って」

 それほどまでに、アリスが私に憎悪を抱いているような感じを受けたのだと言う。
 レンがベアトリーチェわたしを、ここまで心配してくれていたとは思わなかった。
 ただ、召喚に巻き込まれた妹の――くだんの件については、変化がなかった。転生の可能性を臭わすことを、レンは一切言わなかったのだ。どうにもそこが引っかかる……。

「でも、皆さんがいたらベアトリーチェ嬢は大丈夫ですよね?」
「勿論、我々もベアトリーチェ嬢を守りますが、折角ですから盗聴の証拠は掴みましょう。勇者一行が出発するには、まだもう暫くかかりますから」

 意味深長な言い方をしたノアは、いつもの笑みを浮かべる。きっと、まだ出発できない何かが、宮廷内であるのだろう。

「それはそうと、あの聖剣はどうしましたか?」
「あー……あの剣、ちょっと嫌な感じなんですよね。だから、魔道具の空間収納に仕舞ってあります」
「そうですか……嫌な感じが」

 ノアは思うところがあったようで、レンを上から下まで眺めると、聖剣擬きについての詳しい説明を始めた。
 ――聞き終わったレンは、顔から血の気が引いている。
 そうよね。聖剣だと思っていた物が、曰く付き魔剣だったのだから。

「万が一にも僕が、魔王をあの剣で刺してしまったら?」

 青褪めたままのレンは、不安そうに尋ねた。

「魔王の魔力は膨大ですので。なおかつ、この世界を凌駕する程の力は、剣の許容量を軽く超えるでしょう。どの位の範囲かは想像もできませんが……辺り一帯は塵となるでしょうね」

 つまり、レンごと木っ端微塵……。怖っ!

「レン様、絶対に魔王にその剣は使わないでくださいね!」

 つい口を衝いて出てしまった。いくらなんでも、義兄が粉々になる姿は絶対に見たくないもの。

「……ベアトリーチェ嬢」
 
 感極まったのか、レンが私を見つめた途端……なぜか私は魔王の膝の上だった。

 ――は?
 
「あの……やはり、お二人は恋人なのでは?」

 ポソリと呟くレンに、誰も答えずに目を逸らした。
 いや、ちょっと誰か否定して! 私達はパートナーですからね!



 夜も更けてきたので――。

 今夜は解散となった。
 終わるや否や、レンは来た時同様に魔王に飛ばされ帰って行った。今頃、自分の腕の存在を確認し、安堵していることだろう。

 私とジゼルは、いつものようキーランと一緒に寮へ帰る。

「ロラン、明日からレンをお願いね」
「ああ、ヒナ任せておけ! 魔道具無しでも強くなるよう、しっかり鍛えてやるからな!」

 いざとなったら、レンの魔道具は魔王が外してくれるそうだ。

 だが、暫くは向こうの出方を見る為にそのままにする。その間、レンが魔道具を頼らなくていいようにしておかないといけない。
 魔王にまた左腕を離してもらい、その状態でロランが鍛えてくれることになった。ジゼルも片手で出来る護身術を教えてくれるそうだ。後はレン自身で、魔道具を発動させずに自主トレをすれば良い。

 やる気をみせる二人に、義兄がついていけるかは不安だが……。うん。ま、頑張ってもらいましょ。

「それにしても、今日は色々な事がありすぎて疲れたわ」

 ポロリとこぼしてしまう。
 アドレナリンが出すぎて、目が冴えてしまうのではないかと思ったが……。ベッドに入ると、すぐに眠りに落ちた。
 

 
 ◇◇◇



 翌日から早速、交換日記はスタートした。

 場所はノアの薦めで、以前エルネストとアリスと鉢合わせしてしまったベンチの座面の裏に決めた。
 エルネストとアリスが逢瀬に使おうとしていた、場所だ。

 一時期は、二人のイチャイチャが目に余っていたが、最近のエルネストとアリスの関係はだいぶ落ち着いている。
 正確には、エルネストが王子らしくなった。アリスだけにかまけることなく、本来この学園で学ぶべきことを理解したようだ。
 アリスはカルロスにばかり気を取られているのか、エルネストの変化には全く気づいてなさそうだけど。

 レンは手持ちの道具を使って、ノートが落ちないように固定するベルトをつけた。義兄は、昔から手先が器用だったと思い出す。

 暫くは、向こうに動きのバレているレンがノートを置き、ケリーがベンチを監視する予定だ。
 
 魔術師バスチアンからアリスに指示があるのか、アリスが独断で動くのか――。
 可能性は低いけれど……。アリスが無関係で、特に動かないかもしれない。そこをしっかり見極めたい。



 ◇◇◇



 交換日記を始めると、ある事が明確になった。

 レンは、日向の転生を疑っていると。

 これは、ベアトリーチェが日向ではないと信じきっているのか――。それとも逆に、私がどんな反応をするかを確認したくて、敢えてなのか?

 義兄であるレンが書いた日向の特徴が、過去の私とはまるで別人だったのだ。
 ヒナタ・モチズキは、私の全く知らない女の子だった。

 ちょっと……勘弁してよ。

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