彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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努力と涙のカレーパン

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さて、そんなこんなで…。

もうそろそろ美江の出番だ。

「大丈夫か…?」

とぼとぼと一人入場門に歩いていく美江に声をかける。

するとそれに驚いたのか美江は一度ビクリと大袈裟な程肩を震わせる。

「だ、大丈夫じゃし!た、沢山練習したもん!」

もしかしてあれからも俺が知らないだけで度々バーガーゴッドに通ったのかしらん…?

あれ二つの意味で高いからなぁ…。

金額的にもカロリー的にも…。

「な、なんなん、その目は…。」

「いや、まさか毎日バーガーゴッドに通ったとかじゃ…。」

「そ、そんな訳ないじゃろ!」

「お、おう。」

流石にそんなジャンキーな食生活送ってないか…。

「あ、あんな所一人で行ったら居心地悪過ぎて耐えられんし…。」

いや、そんな理由かい…!

「いや…無理してその場で食べなくてもテイクアウトして家なり近くの公園なりで食べれば…。」

はっ…!ついツッコミついでにジャンキー生活を推奨してしまった…。

これは良くない…そう思って軌道修正の為の手段を考えるも、一方の美江はさもその手があったかみたいな顔して黙っていた。

「いや…流石にそれは不健康まっしぐらだからやめとけ…。」

「わ、分かっとるし!そ、それに私一人じゃ店員にちゃんと注文出来るかも…その…。」

うーん……問題はそこからかぁ…。

「それに公園で一人で食べるんは…その…やっぱなんか違うと言うか…。

負けた気分になると言うか…。」

「うん…俺が悪かった…。」

「ほ、ほんまによ!

そ、そもそも!」

「ん?」

「ゆ、悠君が一緒に来てくれたら良かったのに(小声)。」

真っ赤な顔でぽそりと呟く美江。

「美江…?」

「なんでもないし!」

「って!?」

思いっきり背中を叩かれた。

「ふんっ…!」

そう言ってそっぽを向き、そのまま行こうとする美江。

その背中に俺は叫ぶ。

「頑張れよ!美江!」

その言葉に美江は一度足を止め…。

また「ふんっ!」とそっぽを向いて行ってしまった。

えぇ……2回もふんっ!されたんだけど……。

「それでは!次は皆大好きパン食い競走です!」

絵美が高らかに宣言する。

まぁ走るのはノーサンキューだが、参加したらパンが貰えるお得な競技と言う意味では確かに皆大好きと言うのも頷ける。

「今年もパンのラインナップは購買で大人気の商品を販売員のおばちゃん監修のもとで揃えました!」

いや監修て、結構ガチな感じで草。

走行コースの中間地点には、結構高めに調節されたポールと物干し竿。

そこから洗濯バサミが付いた紐がぶら下がっており、そこにパンが挟まれている、と言う感じだ。

実行委員が一つ一つの洗濯バサミにパンの袋を挟んでいく。

それは確かに普段だとすぐに売り切れになって買えない人気商品ばかりだ。

ガッツリ食べたい人におすすめなたまごカレーパンやビックコロッケパン、甘い物好きに人気なチョコクロワッサン、ホイップあんぱん等々……。

次々とパンが吊るされていく。

そして準備が終わると、パン食い競走が始まった。

一応ルールを説明しておこう。

走者はパンが吊るされている場所まで走り、付いたら口のみを使ってそのパンを取らなければならない。

もし口以外を使った場合、そして走り切るまでに落としてしまった場合は失格となる。

この勝負において大事なのは単純な足の早さだけでなく、いかに早く、確実にパンを咥えたままゴールに迎えるかだ。

これが簡単なようで意外と難しい。

実際、走る順番になった美江も出だしは悪くなかったのにパンを咥えるのに随分苦戦しているようだった。

本人曰く沢山練習したらしいが、口はあまり開いておらず、何度ジャンプしても中々パンを咥えられずにいる。

ヤバい…あんまりにも上手くいかなすぎて美江のヤツちょっと泣きそうになってる…。

それもその筈で、美江がそうして悪戦苦闘している間に他の奴らは着々とパンを咥えて走り去っていく。

焦りと、惨めさと、色んな感情が美江をどんどん追い込んでいく。

見てられない……!

「頑張れ!」

叫ぶ。

出来るだけ大きな声で。

近くに居た奴がギョッとした目で見てくるが構わない。

「美江!諦めるな!頑張れ!」
 
精一杯叫ぶ。

こんなの気休めかもしれないし、下手したら余計に追い込んでしまうだけかもしれない。

でも沢山練習した……らしい彼女の努力が報われずに終わるなんて嫌だ。

そんな結末見たくないし味わわせたくもない。

「頑張れ!」

何度も叫ぶ。

それに気付いた美江は意を決したように飛び、そして。

パンの、袋の端を遂に咥えた。

「やった!」

俺のその言葉に呼応する様に、美江は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「走れ!」

そう叫ぶと、美江はハッとした様な表情をしたあと必死に走る。

そのままなんとかゴール!

「よしっ!」

結果は5人中4位だったものの、あの状況でなんとかパンを咥え、1人を抜いた美江を誰が責められるだろう……。

「頑張ったな。」

「……ん。」

競技が終わって戻ってきた美江に声をかける。

「こ、これ半分あげる。」

そう言って差し出して来たのはさっき咥えていたたまごカレーパンだ。

「え?良いのかよ?

せっかく頑張ってとったのに。」

「悠くんがその……応援してくれて嬉しかったけぇ……その……お礼。」

「そ、そうか。」

「わ、私一人だったら無理じゃったと思うし……。

じぇけぇ……半分こ。」

「お、おう、そう言う事なら……。」

「べ、別に深い意味はないけぇ……!

た、ただ辛いやつじゃけぇ一人で食べきれんかもじゃし……。」

「俺が辛いの苦手なの知ってて言ってるよな!?」

「知っとるけど……。」

そう言ってそっぽを向く美江。

クソっ!一瞬でも照れ屋なのに素直な所あるんだと思った俺が馬鹿だった……!

「そ、それとも私が頑張ってとったカレーパン、食べてくれんのん……?」

あぁ……もぉ……。

そんな風に言われたら受け取らない訳にいかないだろうが……。

「食べさせていただきますよ、おひめさ……ふぐっ!?」

高速で横腹にパンチを入れられた。

「そ、そうやってすぐ調子に乗るとこ!ほんまダメ……!ほんま馬鹿!」

「へいへい……。

ま、でもよく頑張ったよ、お疲れさん。」

「うん……ありがとう。」

そう言う顔はほんとに嬉しそうで。

あぁ、俺は彼女のこんな顔が好きで、何度だって見たくて、あの時一緒に居たんだなと思った。

その日常を壊したのは他でもない自分だって言うのにな……。

「悠君……?」

急に黙った俺に心配そうな視線を向けてくる美江。

「いや……。」

あの後散々後悔しただろ。

諦めたくなくても無理やり諦めて、自業自得だって自分を追い込んで気持ちを押さえつけて。

遥か遠くに離れていく彼女の幸せを願っただろう。

でも今は違う。

再び近くに居られる今だからこそ出来る事がある。

きっと今こうしてカレーパンの辛さを分け合えたのは、良くも悪くもそうして二人で乗り越えてきた時間があるからだと思うから。

こうして辛さを分け合えた事実を、大事に噛み締める。

もう忘れないようにと、願いを込めて。

そうして食べたカレーパンは確かにちょっと辛くて辛かったです、、(言いたかっただけ)

ちなみに……。

「そう言えば練習って何したんだ……?」

「うっ……お、お母さんに頼んでその間だけお弁当をサンドイッチに変えてもらった……。」

「あぁね……。

ちなみに結果は……?」

「た、食べる時間が倍になった……。」

「あー……。」

「しばらくサンドイッチは良い……かな……。」

「ですよねぇ……。」






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