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「では!次の競技は我らが会長、副会長も出場する二人三脚です!」
「今日の為に毎日コツコツと練習していた二人の活躍!
楽しみだね!」
「うんうん!
あ、今回会長は参加者だから解説は悠太にお願いしてるよー!」
そう言って絵美が俺を紹介する。
「そんなついでみたいに言われてもなぁ……。」
「悠たん、よろしくね!」
咲夜もニコやかに言ってくる。
「まぁ、やるけどさ……。」
そう二人から期待の眼差しを向けられたら邪険にもできないだろ……。
ちなみにじゃけんは広島弁でだからと言う意味だ。
「では早速!今回の二人三脚のポイントをお願いします!」
絵美がそう言って俺にマイクを向けてくる。
「うーん、そうだな。
二人三脚はなんと言っても二人の相性が大事だ。
これが悪いとどんなに個々の実力が良くても無駄になる。」
「そうだよね!
会長と瑞穂ちゃん、ここまで頑張って練習してたしきっと大丈夫だよね!」
「……どうかな……?」
さっと目をそらす。
「え!そこは肯定してくれなきゃ!」
以前練習に付き合った日以降あの二人の練習風景を見てないんだよなぁ、、
その時も盛大に転けていた二人。
一応俺と練習してた時は二人とも上手く走れるようになってたように感じたが……。
二人でってなると……。
「息ピッタリって言えばアイツらだよな。」
なんとも言えない気分になり、そんな気を紛らわす意味も込めて視線をコースに向ける。
「行くよ!ユリたん!」
「うん!ショーくん!」
「おぉ!早い早い!水野さん中森くん組!抜群のコンビネーションです!」
「そりゃまぁ……。」
ガッツリ腰に手を回し合い密着して息ピッタリに走る姿は誰が見てもカップル!いやカップルなんだった……。
「本当恋愛なんて滅べばいいのに……。」
「「悠太(たん)!?」」
おっといかんいかんつい本音が……。
そのまま見せ付けるかのようにイチャチャとゴール。
そうこうしてる間に二人三脚は終盤を迎え……遂にハルたん会長、瑞穂の番となった。
「さぁ!皆さんお待ちかね!
次は遂に会長と瑞穂ちゃんの出番だよ!」
絵美が高らかに宣言する。
その宣言に一斉に視線が二人に向けられる。
アイツら大丈夫か……。
「ハルたん、注目されて緊張してない?」
「は?私を誰だと思ってるのよ?
生徒会長よ?
注目されるのは慣れっこよ。」
「あたしも。
曲がりなりにも副会長だからね。」
「いや曲がりなりにもって……。
まぁ良いわ。
やるわよ。」
「そうだね。」
言いながら顔を見合せるハルたん会長と瑞穂。
なんだかんだ仲良い、よな。
ほんと、最初の頃の険悪な感じとかちょっと危ない雰囲気とか……。
多分そう言うのを乗り越えての今、なんだろうな。
そして実行委員が撃つスターターピストルの音に合わせて走り出す二人。
「ちょ、ハルたん、ちょっと早いってば!」
「大丈夫よ!」
「もぉ……しょうがないなぁ……。」
それに瑞穂が何とか合わせる。
瞬時に相手に合わせて動ける器用さは流石である。
それにしても……。
「ハルたん会長、焦ってるな。」
「そうだね、大丈夫かな?」
俺の言葉に、絵美が心配そうに目を伏せる。
一方で。
「ちっ、俺らは会長副会長コンビの当て馬かよ。」
「なんかやる気出ないよねー。
どうせ私達が頑張って結果出してもあの二人が主役だもんね。」
「まぁ仕方ないよ、あの二人だし……。」
「でもさぁ……。」
そんなヒソヒソ話とため息も他の参加者から盛れ始めていたのだが、放送席に居た俺は知らない。
でも二人には聞こえていたんじゃないだろうか。
やがて、瑞穂が合わせる形で走るのが安定してくると。
「やっぱ完璧だよね……。」
「ほんと、何やらせても完璧にやるんだろうなぁ。」
「私達とは住む世界が違うよね。」
その声は瑞穂にも勿論聞こえていた。
※瑞穂目線
好き勝手言ってくれちゃってさ……。
あたしだって必死に合わせてんだっての……。
そして当然ハルたん会長にも。
「私は完璧にやらないといけない。
それが生徒会長の私の役目だから……!」
そうまるで自分を鼓舞する呪文のような言葉を脳内でブツブツと呟く。
やれやれ……二人三脚だってのに周りが全く見えてないじゃん。
確かに生徒会長だし、注目されるのには慣れているのだろう。
でも慣れてるからこそ、ハルたんは常に生徒会長として完璧な自分を見せる為に気を張って来たのだ。
まぁ確かに生徒会長である以上皆から尊敬され、慕われる人間でなければならないと言う気持ちは分からなくもない。
誰からも慕われない、尊敬も出来ない生徒会長なんて誰が支持するんだっていう話だ。
でも、である。
それが本来の姿ではない事を私は知ってる。
勉強だって毎日予習復習を欠かさず、分からない事はすぐ教師に聞く。
そんな陰ながらの弛まぬ努力こそが彼女がこれまで掴んできた学年1位の成績の裏にはあるのだ。
実際、料理だってあたしが教えるまでは全然出来なかったし、テスト前は夜更かしして勉強とかもする癖に朝が弱いから自分じゃ起きれないのも知ってる。
でもそれは周りから見た自分が生徒会長として完璧に見える様にする為の努力。
確かに器用と言えば器用だろう。
一度覚えてしまえば大体の事は形にしてしまうぐらいのセンスが彼女にはある。
でも私は知ってる。
彼女は才能で生徒会長になったんじゃない。
裏で必死に努力を続けて生徒会長になったんだと。
一方であたしは違う。
別に努力して副会長になった訳じゃない。
なったからには真面目にやってるつもりだけど、元々自分の評判が悪いのは自分が1番分かっていた。
極め付けはあの副会長選挙。
自分がいかに彼女と対極にいる存在なのかがよく分かる。
まぁ、だからってどうこうしようとも思わないけど。
それにしても……。
あぁもぉ……そんなにプライドとメンツが大事なのか。
何とか走りを合わせながら思う。
その間、やる気を無くしている他の生徒は誰一人真面目にやっていない。
なので必然的にあたし達が1位を独走している感じ。
はぁ……馬鹿らしい。
意地っ張りなハルたんも、勝手に勘違いして全く真面目にやらずに陰口ばっかり言ってるアイツらも。
……そうだ、良い事考えた。
※悠太目線
「おぉ!会長瑞穂組!早い早い!
他の走者をぐんぐん引き離していきます!」
絵美が誇張して実況するが、他の走者が明らかにやる気が無いのは目に見えて分かった。
どう見てもこの場で1番やる気出してんの……ハルたん会長だよな……。
それに合わせてる瑞穂もただ合わせてるだけって感じだし……。
これじゃあまるで……。
「一人相撲、だねぇ。」
「げっ!?リタ!?」
「え!誰!?」
突如現れたリタに絵美も咲夜も戸惑いの表情。
「え、あぁ、こいつはあれだ!リオの従姉妹っつーか……。」
「あはは、それ良いね!どうも従姉妹でーす!」
笑いながらそんな風に言うリタ。
せっかくフォローしたのに!!
「そ、そうなんだ。」
苦笑いの二人。
まぁ後でロリ天使には口裏合わせとくとして……。
「それより面白い事になってるね。」
「何処がだよ……。」
「確かに、生徒会長と副会長ペアが二人三脚は話題性としては充分だった。
でも同時にそれを引き立てる役を誰かが背負う結果にもなった。
方やその引き立て役を買わされ真面目にやる気が失せた生徒、方や完璧な生徒会長であるために、そして話題性としての期待に答えるために周りも見ないで走り続ける生徒会長。
相方の副会長は合わせてるだけ。
ほんと、誰の為の戦いなんだろうね?」
その通りだ。
これがただの徒競走で、純粋な競走であるならきっとこうはならなかった。
でもこれは二人三脚だ。
でも事前に二人のコンビが参加する、と言う話題性を広めてしまったが故に、参加者の注目は必然的に二人に向けられた。
その結果があの悪口である。
そして今のハルたん会長もまたそんな注目により気が張ってしまってあんな風に一人相撲状態になってる。
多分あのまま行けばハルたん会長はそのまま1位になるだろう。
でもそれを見て凄いだとか流石ハルたん会長!だなんて思う人がどれだけ居るだろう。
でもここまであからさまだと、手を抜いて貰えたからだろとか思われても仕方ない。
どうすんだよ、これ……。
「多分会長も分かってるんじゃない?
ここで勝っても皆に認められる訳じゃない。
でも自分も手を抜いて負ける事になればこれまで作ってきた完璧な仮面が崩れる。
だから走らない訳にもいかない。」
「行くも地獄行かぬも地獄じゃねぇか……。」
「ね?面白いでしょ?」
「相変わらず性格が悪い奴……。」
「あはは、褒め言葉として受け取っとこうかな。」
そう言ってヘラヘラと笑うリタ。
「ちょっと!幾らなんでもそれは酷いんじゃないかな!?」
これには絵美もムッとする。
「この状況が面白いなんて!おかしいよ!」
咲夜もそれに同調する。
放送席にもピリついた空気が伝播する。
ただ一人リタだけは二人に責められてなおニヤニヤと不適に笑っている。
「ちょ……なんで笑って!」
「え、瑞穂ちゃん?」
咲夜がリタに文句を言う声と絵美の驚きの声が重なる。
なんと、瑞穂。
急にその場で足を止めたのである。
「ちょ!?瑞穂!?」
これはハルたん会長も予想外だったらしく……。
まずハルたん会長が盛大に転けて地面に顔面を強打。
瑞穂も一緒に転け、同じく地面に顔面を強打。
周りはその状況を見て、うわぁと言う感じ。
「瑞穂……!あんた何を……!」
起き上がり、恨めしそうに瑞穂を睨むハルたん会長。
「ふは!ハルたん酷い顔!」
「あ、あんたこそ!」
お互い顔は砂まみれだし鼻血まみれ。
髪もボサボサになって目も当てられない。
「それじゃ完璧生徒会長になんて見えないね。」
「んなっ……!?」
瑞穂の奴急に何言って!?
「あ、あんたが急に止まるからでしょうが!?」
「えぇ?だってハルたんペース早過ぎなんだもんー。」
「っ、それは……だって……。」
瑞穂がそう言って口を尖らせると、ハルたん会長も自覚があったのか口ごもる。
「別に良いじゃん無理して完璧になんてならなくて。」
そんなハルたん会長を見て一度ため息を吐くと、瑞穂はそう実にあっさりと言ってのけた。
「っ!?」
「そこでのんびり走ってる皆もさ、なんか勘違いしてるみたいだけど。
ハルたんは全然完璧なんかじゃないんだよ?」
今度は後ろに居た他の走者達に目を向ける。
「え?」
「いやいや……幾ら転けたからって……。」
「それだってあいつのせいっぽいし……。」
「普段あんなに完璧生徒会長って感じなのにそんな訳……。」
「ま、ハルたん見栄っ張りだからね。
でも知ってた?ハルたんがそう見られる為に裏でめちゃくちゃ努力してんの。」
瑞穂の言葉に、周りは更に何か言おうとするも、何も言えずに口ごもる。
「一緒だよ、ハルたんだって。
ただ人一倍見栄っ張りで、でも実際はポンコツで、今も今日までの練習でもこんな風に転けて酷い顔になったりしてそ。
めちゃくちゃ器用だけどその分めちゃくちゃ不器用なとこもあるし普通にミスもする、そんな普通の女の子なんだよ、ハルたんも。」
「あ、あんた……まさかそれを言う為にわざと!」
「だってハルたん強情だしさ。
このままやっててもつまんないし。」
「っ……!?」
「そういう訳だからさ。
完璧生徒会長として、じゃなくて一人の普通の生徒として楽しまない?
絶対その方が楽しいって!」
そう言って瑞穂はズタボロの顔でとても可愛いらしく微笑む。
「あ、あんたねぇ……。」
それに頭を抱えるハルたん会長。
「皆もそうでしょ?」
そしてまた瑞穂は他の走者達に目を向ける。
「会長ってそうなんだ……。」
「でも確かにそうだよな。
プレッシャーとか凄そうだし。」
「だから頑張って来たって事でしょ?凄すぎじゃん。」
「流石会長だよね!」
「その、なんかごめん。
勝手に引き立て役とか思っていじけてたわ。」
さっきまでの悪口が、肯定的な言葉や謝罪の言葉に変わる。
「案外鼻血まみれでポンコツな会長も悪くないかもな! 」
「ちょ!?あんまり見ないでちょうだい!?」
慌てて鼻を抑えるハルたん会長。
「良いじゃん。
ほら、走ろ。」
言いながら立ち上がる瑞穂。
「はぁ……。
ほんと最悪……。」
片手で鼻を抑えながら頭を抱えるハルたん会長。
「え?最高の間違いじゃない?」
「そんな訳あるか!!」
「あだァ!?」
出た!ハルたんチョップ!
「まぁ……どっちみちこんな姿を皆に見られちゃったし……。
今更だけど……。」
「あいたた……分かってんでじゃん。」
「うるさいわね!こうなったらヤケクソよ!」
「そう来なくっちゃ。」
そうして再び走り出した2人は今度こそ息ピッタリで。
周りの空気も気がつくと和らいでいた。
本当、すげぇな……。
やり方はどうあれ、一瞬でこの場の雰囲気を変えてしまうのだから。
改めてあいつが副会長で良かったと思った。
そしてそんな状況に興味を無くしたのかリタは気が付いたら居なくなっていた。
その後、無事一着になったハルたん会長と瑞穂の顔は酷い顔だったが何処か晴れやかで……。
ただ完璧だった彼女の姿は何処にもない。
なのに祝福の言葉や歓声、そして割れんばかりの拍手を沢山の生徒から受けたのだった。
それはきっと本来の彼女の姿が受け入れられた証なのだろう。
遂に明日!
フラれろう1周年!ウオオオオアアアア\( 'ω')/アアアアアッッッッ!!!!!
いやぁ、ほんとあっという間。
また明日改めて描くけどほんとに。
ちなみにサプライズもあります!お楽しみに!
200話行かせたかった、、くぅ、喉風邪にさえならなければ、、!
「今日の為に毎日コツコツと練習していた二人の活躍!
楽しみだね!」
「うんうん!
あ、今回会長は参加者だから解説は悠太にお願いしてるよー!」
そう言って絵美が俺を紹介する。
「そんなついでみたいに言われてもなぁ……。」
「悠たん、よろしくね!」
咲夜もニコやかに言ってくる。
「まぁ、やるけどさ……。」
そう二人から期待の眼差しを向けられたら邪険にもできないだろ……。
ちなみにじゃけんは広島弁でだからと言う意味だ。
「では早速!今回の二人三脚のポイントをお願いします!」
絵美がそう言って俺にマイクを向けてくる。
「うーん、そうだな。
二人三脚はなんと言っても二人の相性が大事だ。
これが悪いとどんなに個々の実力が良くても無駄になる。」
「そうだよね!
会長と瑞穂ちゃん、ここまで頑張って練習してたしきっと大丈夫だよね!」
「……どうかな……?」
さっと目をそらす。
「え!そこは肯定してくれなきゃ!」
以前練習に付き合った日以降あの二人の練習風景を見てないんだよなぁ、、
その時も盛大に転けていた二人。
一応俺と練習してた時は二人とも上手く走れるようになってたように感じたが……。
二人でってなると……。
「息ピッタリって言えばアイツらだよな。」
なんとも言えない気分になり、そんな気を紛らわす意味も込めて視線をコースに向ける。
「行くよ!ユリたん!」
「うん!ショーくん!」
「おぉ!早い早い!水野さん中森くん組!抜群のコンビネーションです!」
「そりゃまぁ……。」
ガッツリ腰に手を回し合い密着して息ピッタリに走る姿は誰が見てもカップル!いやカップルなんだった……。
「本当恋愛なんて滅べばいいのに……。」
「「悠太(たん)!?」」
おっといかんいかんつい本音が……。
そのまま見せ付けるかのようにイチャチャとゴール。
そうこうしてる間に二人三脚は終盤を迎え……遂にハルたん会長、瑞穂の番となった。
「さぁ!皆さんお待ちかね!
次は遂に会長と瑞穂ちゃんの出番だよ!」
絵美が高らかに宣言する。
その宣言に一斉に視線が二人に向けられる。
アイツら大丈夫か……。
「ハルたん、注目されて緊張してない?」
「は?私を誰だと思ってるのよ?
生徒会長よ?
注目されるのは慣れっこよ。」
「あたしも。
曲がりなりにも副会長だからね。」
「いや曲がりなりにもって……。
まぁ良いわ。
やるわよ。」
「そうだね。」
言いながら顔を見合せるハルたん会長と瑞穂。
なんだかんだ仲良い、よな。
ほんと、最初の頃の険悪な感じとかちょっと危ない雰囲気とか……。
多分そう言うのを乗り越えての今、なんだろうな。
そして実行委員が撃つスターターピストルの音に合わせて走り出す二人。
「ちょ、ハルたん、ちょっと早いってば!」
「大丈夫よ!」
「もぉ……しょうがないなぁ……。」
それに瑞穂が何とか合わせる。
瞬時に相手に合わせて動ける器用さは流石である。
それにしても……。
「ハルたん会長、焦ってるな。」
「そうだね、大丈夫かな?」
俺の言葉に、絵美が心配そうに目を伏せる。
一方で。
「ちっ、俺らは会長副会長コンビの当て馬かよ。」
「なんかやる気出ないよねー。
どうせ私達が頑張って結果出してもあの二人が主役だもんね。」
「まぁ仕方ないよ、あの二人だし……。」
「でもさぁ……。」
そんなヒソヒソ話とため息も他の参加者から盛れ始めていたのだが、放送席に居た俺は知らない。
でも二人には聞こえていたんじゃないだろうか。
やがて、瑞穂が合わせる形で走るのが安定してくると。
「やっぱ完璧だよね……。」
「ほんと、何やらせても完璧にやるんだろうなぁ。」
「私達とは住む世界が違うよね。」
その声は瑞穂にも勿論聞こえていた。
※瑞穂目線
好き勝手言ってくれちゃってさ……。
あたしだって必死に合わせてんだっての……。
そして当然ハルたん会長にも。
「私は完璧にやらないといけない。
それが生徒会長の私の役目だから……!」
そうまるで自分を鼓舞する呪文のような言葉を脳内でブツブツと呟く。
やれやれ……二人三脚だってのに周りが全く見えてないじゃん。
確かに生徒会長だし、注目されるのには慣れているのだろう。
でも慣れてるからこそ、ハルたんは常に生徒会長として完璧な自分を見せる為に気を張って来たのだ。
まぁ確かに生徒会長である以上皆から尊敬され、慕われる人間でなければならないと言う気持ちは分からなくもない。
誰からも慕われない、尊敬も出来ない生徒会長なんて誰が支持するんだっていう話だ。
でも、である。
それが本来の姿ではない事を私は知ってる。
勉強だって毎日予習復習を欠かさず、分からない事はすぐ教師に聞く。
そんな陰ながらの弛まぬ努力こそが彼女がこれまで掴んできた学年1位の成績の裏にはあるのだ。
実際、料理だってあたしが教えるまでは全然出来なかったし、テスト前は夜更かしして勉強とかもする癖に朝が弱いから自分じゃ起きれないのも知ってる。
でもそれは周りから見た自分が生徒会長として完璧に見える様にする為の努力。
確かに器用と言えば器用だろう。
一度覚えてしまえば大体の事は形にしてしまうぐらいのセンスが彼女にはある。
でも私は知ってる。
彼女は才能で生徒会長になったんじゃない。
裏で必死に努力を続けて生徒会長になったんだと。
一方であたしは違う。
別に努力して副会長になった訳じゃない。
なったからには真面目にやってるつもりだけど、元々自分の評判が悪いのは自分が1番分かっていた。
極め付けはあの副会長選挙。
自分がいかに彼女と対極にいる存在なのかがよく分かる。
まぁ、だからってどうこうしようとも思わないけど。
それにしても……。
あぁもぉ……そんなにプライドとメンツが大事なのか。
何とか走りを合わせながら思う。
その間、やる気を無くしている他の生徒は誰一人真面目にやっていない。
なので必然的にあたし達が1位を独走している感じ。
はぁ……馬鹿らしい。
意地っ張りなハルたんも、勝手に勘違いして全く真面目にやらずに陰口ばっかり言ってるアイツらも。
……そうだ、良い事考えた。
※悠太目線
「おぉ!会長瑞穂組!早い早い!
他の走者をぐんぐん引き離していきます!」
絵美が誇張して実況するが、他の走者が明らかにやる気が無いのは目に見えて分かった。
どう見てもこの場で1番やる気出してんの……ハルたん会長だよな……。
それに合わせてる瑞穂もただ合わせてるだけって感じだし……。
これじゃあまるで……。
「一人相撲、だねぇ。」
「げっ!?リタ!?」
「え!誰!?」
突如現れたリタに絵美も咲夜も戸惑いの表情。
「え、あぁ、こいつはあれだ!リオの従姉妹っつーか……。」
「あはは、それ良いね!どうも従姉妹でーす!」
笑いながらそんな風に言うリタ。
せっかくフォローしたのに!!
「そ、そうなんだ。」
苦笑いの二人。
まぁ後でロリ天使には口裏合わせとくとして……。
「それより面白い事になってるね。」
「何処がだよ……。」
「確かに、生徒会長と副会長ペアが二人三脚は話題性としては充分だった。
でも同時にそれを引き立てる役を誰かが背負う結果にもなった。
方やその引き立て役を買わされ真面目にやる気が失せた生徒、方や完璧な生徒会長であるために、そして話題性としての期待に答えるために周りも見ないで走り続ける生徒会長。
相方の副会長は合わせてるだけ。
ほんと、誰の為の戦いなんだろうね?」
その通りだ。
これがただの徒競走で、純粋な競走であるならきっとこうはならなかった。
でもこれは二人三脚だ。
でも事前に二人のコンビが参加する、と言う話題性を広めてしまったが故に、参加者の注目は必然的に二人に向けられた。
その結果があの悪口である。
そして今のハルたん会長もまたそんな注目により気が張ってしまってあんな風に一人相撲状態になってる。
多分あのまま行けばハルたん会長はそのまま1位になるだろう。
でもそれを見て凄いだとか流石ハルたん会長!だなんて思う人がどれだけ居るだろう。
でもここまであからさまだと、手を抜いて貰えたからだろとか思われても仕方ない。
どうすんだよ、これ……。
「多分会長も分かってるんじゃない?
ここで勝っても皆に認められる訳じゃない。
でも自分も手を抜いて負ける事になればこれまで作ってきた完璧な仮面が崩れる。
だから走らない訳にもいかない。」
「行くも地獄行かぬも地獄じゃねぇか……。」
「ね?面白いでしょ?」
「相変わらず性格が悪い奴……。」
「あはは、褒め言葉として受け取っとこうかな。」
そう言ってヘラヘラと笑うリタ。
「ちょっと!幾らなんでもそれは酷いんじゃないかな!?」
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放送席にもピリついた空気が伝播する。
ただ一人リタだけは二人に責められてなおニヤニヤと不適に笑っている。
「ちょ……なんで笑って!」
「え、瑞穂ちゃん?」
咲夜がリタに文句を言う声と絵美の驚きの声が重なる。
なんと、瑞穂。
急にその場で足を止めたのである。
「ちょ!?瑞穂!?」
これはハルたん会長も予想外だったらしく……。
まずハルたん会長が盛大に転けて地面に顔面を強打。
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周りはその状況を見て、うわぁと言う感じ。
「瑞穂……!あんた何を……!」
起き上がり、恨めしそうに瑞穂を睨むハルたん会長。
「ふは!ハルたん酷い顔!」
「あ、あんたこそ!」
お互い顔は砂まみれだし鼻血まみれ。
髪もボサボサになって目も当てられない。
「それじゃ完璧生徒会長になんて見えないね。」
「んなっ……!?」
瑞穂の奴急に何言って!?
「あ、あんたが急に止まるからでしょうが!?」
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「っ、それは……だって……。」
瑞穂がそう言って口を尖らせると、ハルたん会長も自覚があったのか口ごもる。
「別に良いじゃん無理して完璧になんてならなくて。」
そんなハルたん会長を見て一度ため息を吐くと、瑞穂はそう実にあっさりと言ってのけた。
「っ!?」
「そこでのんびり走ってる皆もさ、なんか勘違いしてるみたいだけど。
ハルたんは全然完璧なんかじゃないんだよ?」
今度は後ろに居た他の走者達に目を向ける。
「え?」
「いやいや……幾ら転けたからって……。」
「それだってあいつのせいっぽいし……。」
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でも知ってた?ハルたんがそう見られる為に裏でめちゃくちゃ努力してんの。」
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「一緒だよ、ハルたんだって。
ただ人一倍見栄っ張りで、でも実際はポンコツで、今も今日までの練習でもこんな風に転けて酷い顔になったりしてそ。
めちゃくちゃ器用だけどその分めちゃくちゃ不器用なとこもあるし普通にミスもする、そんな普通の女の子なんだよ、ハルたんも。」
「あ、あんた……まさかそれを言う為にわざと!」
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このままやっててもつまんないし。」
「っ……!?」
「そういう訳だからさ。
完璧生徒会長として、じゃなくて一人の普通の生徒として楽しまない?
絶対その方が楽しいって!」
そう言って瑞穂はズタボロの顔でとても可愛いらしく微笑む。
「あ、あんたねぇ……。」
それに頭を抱えるハルたん会長。
「皆もそうでしょ?」
そしてまた瑞穂は他の走者達に目を向ける。
「会長ってそうなんだ……。」
「でも確かにそうだよな。
プレッシャーとか凄そうだし。」
「だから頑張って来たって事でしょ?凄すぎじゃん。」
「流石会長だよね!」
「その、なんかごめん。
勝手に引き立て役とか思っていじけてたわ。」
さっきまでの悪口が、肯定的な言葉や謝罪の言葉に変わる。
「案外鼻血まみれでポンコツな会長も悪くないかもな! 」
「ちょ!?あんまり見ないでちょうだい!?」
慌てて鼻を抑えるハルたん会長。
「良いじゃん。
ほら、走ろ。」
言いながら立ち上がる瑞穂。
「はぁ……。
ほんと最悪……。」
片手で鼻を抑えながら頭を抱えるハルたん会長。
「え?最高の間違いじゃない?」
「そんな訳あるか!!」
「あだァ!?」
出た!ハルたんチョップ!
「まぁ……どっちみちこんな姿を皆に見られちゃったし……。
今更だけど……。」
「あいたた……分かってんでじゃん。」
「うるさいわね!こうなったらヤケクソよ!」
「そう来なくっちゃ。」
そうして再び走り出した2人は今度こそ息ピッタリで。
周りの空気も気がつくと和らいでいた。
本当、すげぇな……。
やり方はどうあれ、一瞬でこの場の雰囲気を変えてしまうのだから。
改めてあいつが副会長で良かったと思った。
そしてそんな状況に興味を無くしたのかリタは気が付いたら居なくなっていた。
その後、無事一着になったハルたん会長と瑞穂の顔は酷い顔だったが何処か晴れやかで……。
ただ完璧だった彼女の姿は何処にもない。
なのに祝福の言葉や歓声、そして割れんばかりの拍手を沢山の生徒から受けたのだった。
それはきっと本来の彼女の姿が受け入れられた証なのだろう。
遂に明日!
フラれろう1周年!ウオオオオアアアア\( 'ω')/アアアアアッッッッ!!!!!
いやぁ、ほんとあっという間。
また明日改めて描くけどほんとに。
ちなみにサプライズもあります!お楽しみに!
200話行かせたかった、、くぅ、喉風邪にさえならなければ、、!
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