彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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妹が可愛い過ぎて辛い

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「そっかー。

私、元の世界では結婚してるんだ。」

ファミレス会の後。

帰宅してお互い諸々を済ませた後、現在ひーちゃんが部屋に押し掛けてきて家族会議の真っ最中である。

ちなみに帰宅して早々志麻から鬼メッセージが来たが、未読が100を超えた辺りで通知をOFFにした。

有無を言わさずブロックしなかっただけ褒めて欲しい。

「あぁ、高校の時から付き合ってる彼氏とな。」

「うーん……やっぱり実感湧かないなぁ。」

「そりゃ、まぁそうだろうな。」

実際この世界の日奈美はまだ高校生だし、実感が無いのは当然だ。

一時期は親の同意があれば16歳から結婚出来たりもしたようだが、それでも現実的な話ではないわけで。

日奈美から結婚を聞かされた時の複雑な気持ちは今も覚えている。

この世界では実の妹だし、もし、万が一にももしその時が来たらあの時以上に複雑な気持ちになるのだろうか……。

「お兄ちゃん?」

「い、いや……ちょっと目にゴミがな。」

「え、大丈夫?」

「あ、あぁ大丈夫。」

ファミレス会を経て、俺が転生している事、この世界が何者かによって作られた世界であると言う事が、会に参加したメンバーに知られる事となった。

急な話だし、聞かされる側からすれば何を言ってるんだと言う話だが、信じてくれたアイツらには感謝しかない。

それにしても…。

「ねぇ、ひーちゃん?俺椅子じゃないよ?」

一応、設定上では俺が転生してこの世界に生まれる前からこの世界はあった事になっているらしい。

だが当然その時の記憶なんて今の俺には無いのである。

つまりだ。

転生するまでいた俺Aは俺が転生する事で自動的に消滅し、今の俺ことBがこの世界での俺になった訳だが。

でも不便なのは、俺Bは入れ替わりの際の引き継ぎを一切されずに引き継いでいるから、Aしか知らない記憶は分からない、と言う訳である。

と、言うわけで、家に帰ってからこうして日奈美とその辺の情報共有をしようと言う事になって今に至るのだが…。

「だって最近のお兄ちゃん、色んな人に囲まれて独り占め出来ないんだもん。」

と、言う理由らしい。

今ひーちゃんは、ピンクの水玉模様のパジャマを着て、椅子に座っている俺の膝の上に座っている。

そんな状態だから、当然ひーちゃんの柔らかい身体の感触や、お風呂上がりのボディーソープやらシャンプーやらのフローラルな香りがダイレクトに伝わって来て、俺の精神をじわじわとすり減らしていく。

「ひーちゃん、とりあえずそこのベッドに座ろっか。」

「やだ、もうちょっとこうしてたい。」

えぇ…何この子可愛い。

抱きしめていいかな?え?ダメ?お金払っても?ダメかぁ……知ってた。

どうしよう、うっかり惚れるところだった。

 でも、残念ながらこの世界でのひーちゃんは実の妹なのである。

だがしかし!考えてもみてほしい。

俺とひーちゃんの関係は、普通の兄妹とは違うのだ。

確かに、ひーちゃんの中では俺は16年間を共に同じ家で過ごしてきた兄妹なのだろう。

でも俺は違う。 

確かに転生前の世界でも兄妹の様な関係であったものの、積み重ねてきた時間とか経験とかがまるで釣り合ってないのだ。

だから今の俺にとってのひーちゃんは、元の世界のひーちゃんの様な存在が、本当の妹になったと言う認識でしかないのである。

ましてひーちゃんは一度告白までした相手である。

そんな相手にこんな事をされたら…。

もうお分かりであろうか。

俺は今、必死に理性と戦っている。

例えば本当にひーちゃんが妹で、それだけ長い時間を共に過ごしていたなら、これくらいのスキンシップでも意識したりしないのかもしれない。

でも今の状況は全く違う!

しかも相手は高校生だぞ…!?

今は俺も高校生だけどもっ…!

断言しよう!こんなのもはや愛の暴力。

憎しみとは無縁な愛故の拷問である。

「駄目なの…?」

一般的に上目遣いと呼ばれる手法で、さも小動物のような弱々しさを感じる瞳で見つめてくる日奈美。

「駄目じゃない!全然駄目じゃない!!

むしろありがとうございます!」

こんなの駄目って言えるわけないだろうがぁぁぁぁぁぁ!!  

これで即答で拒否出来る男は男じゃないと思います! 

そんな天邪鬼は馬に蹴られて死んでしまえっ!

と、とにかく意識を他に逸らすしかないか…。

「ひ、ひーちゃん。

昨日までの俺ってどんな奴だった…?」

「え?うーん…そうだなぁ。」

一切その場から動く気配を見せずに小さく考え込む日奈美。

可愛い。

「まず、勉強が嫌いでー。

教科書忘れる事多くてー。」

だから筆記用具だけだったのか…。

「プリントとかゴミとかを机の下に溜めがちでー。」

うん、あれは汚かった。

「字は汚いし、めんどくさがり屋だし。」

あれ…?なんか悪口多くない?

「でもね。

優しくて面倒見が良くて、だから友達も多くて、駄目な時にはちゃんと叱ってくれるの。

私が寂しい時、泣いちゃった時はいつも駆けつけてくれて、そばに居てくれる。

私もそんなお兄ちゃんが大好きなの。」
 
少し照れ臭そうに、口に出せた事を喜んでいるかのように、日奈美は優しく微笑む。

「グハッ…!?」

もうやめて!とっくにお兄ちゃんのライフはゼロよ!?

「お、お兄ちゃん!?」

「ひ、ひーちゃん。

本当に悪い、今日はもう一人にしてくれないか…。」

「え…?一緒に寝ないの?」

「寝ないよ?」

「寝ないの?」

「寝ないよ?(2回目)」

そんな可愛いらしい顔してもダメな物はダメなんだからねっ!

この生活これからもやっていけるのかしら…。

その後、何とか説得して出て行ってもらった物の、全く眠れずに悶々としたまま朝を迎えたのは言うまでもない。
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