彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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つまり大事なところで締まらない

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さて、散々な思いをする羽目になった水曜日が終わり、今日は木曜日。

どう言う訳だか今週はやたらと元カノと縁があるようで、しかも今日の相手はよりにもよって昨日の瑞穂と同等...いや、それ以上の相手なまである志麻なのである。

今から既に嫌な予感しかしない。

そんな志麻だが、昨日の夜に今日の待ち合わせ場所や、時間なんかを細かにメールで連絡してきた。

ついでに合流したら待った?と聞いてほしいと言う謎の要望まで。

これはあれか。

「遅くなってごめん!待った?」

「ううん、今来たとこ!」

と言うデートの定番シチュエーションをやりたい感じか。

なるほど、確かに一度はやってみたいシチュエーションである。

でも考えてもみてほしい。

なんと言っても相手はあの志麻なのである。

待ち合わせなんかしなくても常に周辺に潜んで見ているあの志麻なのである。

なのにそんな志麻がわざわざ律儀に時間まで指定して待った?と聞いてほしいとのたまっている。

その為だけに待ち合わせ時間の一時間前、どころかなんならもう既に連絡を送って来た地点で待ってる、なんて事も普通に有り得る……。

何それ怖い、でもあいつならやりかねん...。

だってストーカーだし...。

なんて思って朝を迎えた訳だが、そんな予想はあっさりと裏切られた。

相手が志麻とは言えあまり待たせ過ぎるのも悪いと思い、余裕を持って家を出る。

そして待ち合わせ場所に向かう訳だがで。

おかしいなぁ……。

なんで普通に後ろに居るのかなぁ...?

そう...先に来て待っているのかと思いきや、普通に後ろからこっそり付いてきているのである。

いやその発想は無かったわぁ...。

しかも俺と一定の距離を保ちながら付いてくる志麻は、どう言う訳だかこの暑い中全身が足元まで隠れるサイズのロングコートを着ている。

え、その下何も着てないとかないよね...?

そう言うのほんと求めてないよ?僕。

フリじゃないからね?

てかそもそも本人も暑そうじゃないかww

まぁでもこのまま帰る訳にもいかず、待ち合わせ場所に向かう。

市内中心部に位置する駅前の噴水広場前に11:00と言う予定だったが、30分早い10:30には到着出来た。

別に今日この日が楽しみ過ぎて早く来たわけじゃないぞ?

早く来てたら志麻でも待たせるのは悪いと思ったからだ。

他意はない。(断言)

さて噴水広場の前にゆっくり歩いて向かっていると突然後ろに居た志麻は全速力で俺の横を走り抜け、待ち合わせ場所である噴水広場前に立った。

「...待った?」

「う...ううん、い...今来たとこ...。」

「でしょうね!?」

ただでさえこの暑い中コートを着てるのに全速力で走って背後から俺より先に待ち合わせ場所に着いたんだからそりゃ汗だくにもなるし、息切れもするだろう...。

ほんと、なんだこの茶番...。

まさかこのやり取りをほんとに言葉通りにする日が来るなんて思わなんだ、、、

「てかお前...そのコートはなんだよ...?」

「よくぞ...聞いてくれました!」

「あ、それ待ってた感じか...。」

なんかごめんね……?

いやでもこれ俺悪くないよな...?

すると志麻はコートを脱ぎ始める。

それに俺は目を閉じる!

「待て!早まるな!」

「どう言う反応!?」

「いくらちょっとアレだからって露出系は駄目だから!マジで事案だから!」

「そんな事しないよ!?」

「え、しないの...?」

「なんでちょっとガッカリそうにしてんの...?」

え、それはそれとして健全な男子高校生ならやっぱりちょっと気になるじゃない...。

「それよりちゃんと見てよ。」

「お、おう。」

恐る恐る目を開けると、あんな暑そうなコートの下に着ていたとは思えない程涼し気で、清楚な雰囲気漂う白の半袖膝丈ワンピースに身を包んだ志麻が居た。

「ど...どう?」

「すげぇ似合ってる...。」

元々見た目は普通に悪くない志麻だ。

それに合わせてすらっと長く艶やかな黒髪は清楚な雰囲気にバッチリ合っていて、一つの芸術の様でさえある。

「ほんと!?」

「あぁ、残念ながらな。」

「残念ながらって何!?」

ほんと、これで性格がちょっとアレじゃなくて現世では自分を酷いやり方で捨てた上に無理心中までしようとした元カノじゃなければ...。

うん、言葉にしたらほんと酷いな...。

でもそんな前提が無かったら冷静でいられなかったかもしれないと思う程には、今の彼女は魅力的に見えた。

実際、コートを脱いだ後の彼女は一瞬で分かり易く周りの人間から注目を集めていた。

さっきまでは別の意味で注目を集めていたけど...。

主に奇異的な意味で...。

「お前...なんでそんなめちゃくちゃ似合ってる服着てる癖にコートなんか着てんだよ...?」

「だって。」

そこで言葉を切り、彼女は薄く微笑む。

「一番は悠太に見せたかったんだもん。」

「っ...。」

言葉を失う。

あぁもう...ほんとにあんな前提が無ければ...。

「わ、悠太顔赤い!」

「うっせ、調子のいい事ばっかり言いやがって……。」

「だってほんとだもん!

今日この服装は悠太に見て貰いたくて選んだんだよ?」

「そうだろうな。」

確かにそんな気はするんだ。

実際方向性がアレなだけで、こいつは基本純粋で、好きな事には誰よりもひたむきで。

そんな等身大の女の子なんだ。

方向性がアレなだけで。(2回目)

「今日のデート、凄く凄く楽しみにしてたんだもん。」

「そうだろうな。(2回目)」

それはほんとそう思う。

楽しみ過ぎてストーカーしちゃうくらいだし...。

いや、自分で言っといてなんだけど楽しみ過ぎてストーカーしちゃうくらいってほんとなんなのかしらん...。

言葉にしたら本当酷いな、、

「だからさ。」

そしてまた彼女はあざとく言葉を切る。

そしておずおずと手を差し出してくる。

「だからちゃんと、エスコートしてね?」

そう少し照れくさそうに言ってくる。

やれやれ...。

まぁ、今日くらいは良いか……。

「...分かりましたよ、お姫様。」

言いながら手を取る。

言っておいて鳥肌が立ちそうなセリフだが、志麻は大満足らしく、惚けた顔で俺を見る。

まぁ良いか...ちょっとだけ俺の黒歴史が増えるだけで一人の女子を喜ばせられるなら...。

うーん...それはそれとして......やっぱ手汗凄いな...。

だってあの格好だしなぁ...。

大事なところで締まらないのが志麻である。

志麻だけに...。
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