彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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ちょっと不審者拾ってくるわ

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「おいリオ、お前ほんとどうしたんだよ。」

厨房に入ってリオに声をかける。

やっぱり様子はさっきとあまり変わらない。

少なくとも昨日まではやる気に満ち溢れてなんなら楽しそうにすらしてたのに...。

「だ、だから私は大丈夫ですから!」

そう言い捨てさっさと逃げようとするリオ。

「待てって。」

その腕を素早く掴む。

「は、離してください!」

必死に抵抗するリオ。

「悠君、そんな態度とる子なんてほっとけば良いじゃん。」

「...え?」

と、ここでそう言って口を挟んできたのは紗奈さんだ。

あまりのあっさりな物言いに、思わず面食らってしまう。

「あっ...!?」

それを好機とばかりに、リオはさっさと行ってしまう。

それを追おうとして...「待って。」

引き止められる。

「今は仕事だよ?

あの子はあっちを手伝いに行ったんだから、悠君はこっち。」

「でも!」

「気になるのは分かるよ。

でもさ、あんな取り付く島もないぐらい逃げられて追いかけてを繰り返すの?仕事中に?」

「うっ...。」

正直正論だ。

実際さっきまでだって普通に仕事中なのにハルミズと話し過ぎて神田さんに圧をかけられたばかりである。

「とりあえず、悠君はそこのお皿洗い。」

「わ、分かった。」

「心配しないで、彼女とは私が後で話てみるから。

ほら、女の子同士の方が分かる話もあるだろうし。」

「あぁ...。」

なんでだろう。

理屈ではそうだと分かってる。

でも素直にお願いしますと言えない。

「さ、仕事仕事!」

「あ、おう...。」

そんなこんなで休憩。

この店の休憩時間はその日と時間帯の状況によって人数も変わる交代制で、たまたま今日は...。

「悠君、お疲れ様!」

よりにもよって紗奈さんと休憩時間が被ってしまった。

「店長からお菓子貰ったの!沢山あるから今食べても持って帰ってもいいってさ!」

そう言って紗奈さんが大箱を持ってくる。

チョコレートか。

うぉ、本当にいっぱいあるな。

ならお言葉に甘えて日奈美にもお土産に持って帰ろうかな。 

「じゃ、適当にもらうね。」

「うん、後で店長にお礼を言っておいてね。」

「あぁ、それは勿論。」

さて...今日も日奈美お手製の弁当を広げる。

うん、本日も絶好調。

圧倒的食欲。

今この瞬間の為に俺は生きている!

「悠君のお弁当、いつも美味しそうだよね。

お母さんが作ったの?」

それを覗き込みながら紗奈さんが聞いてくる。

「まさか、あの人早起き超苦手なのに。」

「え、じゃあ悠君が自分で?」

「え、いやいや妹だよ。」

「あ、そう言えば妹さんいるよね。

妹さんとは部活でいつも関わらせてもらってるよ。」

「あぁ、どうも。」

「良いなぁ...。」

「え?」

「うぅん、なんでもない!」

そう言って照れ臭そうにそっぽを向く紗奈さん。

なんだぁ...?

兎にも角にも今日も大満足で弁当を食べながら、何気なくフロントが見える窓に目を向ける。

...ん?

そこでふと気になる物が目に入る。

入口近くに立つ電信柱の影にある人影。

あれは志麻...じゃないな。

...いや志麻はちゃんと別の場所にいるけど...。

とにかくものっそ怪しい。

サングラスにマスク、そして帽子。

その姿でこちらを覗いては...人が近付く度にサッと隠れてしまう。

どうしよう、変装してるつもりなんだろうけどめちゃくちゃ見覚えある...。

あぁ...ほらあんな怪しい格好してるからお巡りさんに声かけられてアワアワしてる。

「やれやれ...。」

まだ食べきれてない弁当が名残惜しいがこれは急いだ方が良さそうだ。

「え、悠君?」

「悪いちょっと不審者拾ってくるわ。」

「ダメだよ!?」

いや...ダメなのは分かってるけど...でもあんなのそれ以上に説明のしようがないだろ...。

「大丈夫、あれぐらいの不審者なら日常茶飯事だから。

ストーカーいるし。」

「全然大丈夫じゃないよ!?」

そんな訳で急いで休憩室を出て不審者、もとい...

「...何やってんの?美江。」

「っ!?」

声をかけると涙目でこちらを見る美江。

「あー...君知り合い?

いや、変な人が居るって通報あったから来て話聞いてたんだけど全然話にならなくてね...。」

前世の俺くらいの年代のお巡りさんが困り顔で声をかけてくる。

「あぁ、はい知り合いです。

こいつちょっと...いやだいぶ人見知りなんで。

格好はアレですけど全然悪いやつじゃないんで大丈夫ですよ。」

「そ、そうかい?気を付けてよ?

最近は危ない事件とかも多いからね。」

「気をつけまーす。」

「き、気をつけます...。」

お巡りさんが行ったのを確認して、改めて美江に目を向ける。

と言うかお巡りさん?全然気にしてないみたいだけど向こうにもっと怪しい人居ますよ?

「あ、あいつは私より先に聞かれとった...。」

顔を顰めている俺の視線の先に気付いたらしい美江が教えてくれた。

おぅ...まさかの既に捕まってたパターン、、。

「ひ、人を待ってるんでで追い払っとった...。」

「マジかよ、強すぎんだろ...。」

言い訳がこなれてるなと思ったのは気のせいじゃないと思います、、

「わ……私には無理じゃった...。 」

うーん……それであんな感じだったのか...。

まぁ美江の場合は格好が格好だしなぁ...。

一応志麻は今日は(強調)普通の格好だし。

「で?何してんの?美江。」

「よ、美江じゃないし...!」

「いや!この期に及んでそれは流石に苦しいだろ!?」

「う、うぅ...。」

呻きながらサッと電信柱に身を隠す美江。

どうしたもんか...。

あ、そうだ。

「ほれ。」

電信柱に向けてさっき貰ったチョコをヒラヒラと振る。

「な、何...?」

「やる。」

「あ、ありがとう。」

そう言って恐る恐る手を出しチョコを受け取ると、それをまるで小動物のように口に入れて可愛らしくはむはむする美江。

甘い物は正義である。

ほら、表情もあんな幸せそう。

うわこれめっちゃ和む...。

「ほれほれ、まだあるぞ。」

すると美江はまたパァっと嬉しそうな表情でそれを受け取る。

あぁ...!これ癖になりそう...!

「こ、こんなもんに騙されんもん!」

そんなやり取りを何度か繰り返した所でこの状況に気付いたのか声を上げる美江。

「いやそんだけ食べといて!?」

でも反応が一々可愛いし癒されるんだよなぁ..。

コホン...。

「いや……ほんとどうしたんだよ……?」

「うっ...ひ、ひなちゃんに悠君がここでバイトしとるって聞いて...。」

「で、様子を見に来たと?」

「く、苦しむ姿を見に...。」

「いや!?性格悪いな!?」

とんでもない奴に餌付けしてしまった...。

「ち、違っ...!?そう言う事が言いたかったんじゃなくて...。」

ははぁん?分かったぞ?

「あれだろ?お前も興味本位で来た口だろ?」

「うぅっ!?」

「でも混雑時は人で溢れるカフェに1人で入る勇気が無くて外から覗いてたと。」

「ううぅっ!?」

あ、これ図星だわ。

まぁ元来超が付く程人見知りでコミュ障な美江である。

そんな性格はよく知ってるから、大体の行動パターンは深く考えずとも分かる話だ。

「ち、違うし...。」

おっとぉ?

「い、今入ろうとしとったとこじゃし!

そこに運悪く警察が来ただけじゃし!」

「そうか、そうか。」

そう言って優しく肩に手を置く。

「な、何!?」

「良いか、世の中には明日やろうは馬鹿野郎って言葉があるんだが...「喧嘩売っとるん!?」
すいませんでした!?」

「それに...別にお店に用があった訳じゃないし...!」

「え?」

「そ、その...悠君に用があって...ひなちゃんに聞いたらバイトしとるって聞いたけぇ...。」

「あぁ、なるほど...。

って俺に用?」

「んっ!」

そう言って彼女は俺にハンドバッグから取り出した何かを突き付ける。

「これは...?」

「ライブのチケット...。

ひ、一人じゃ不安じゃし..。」

受け取って見てみると、彼女が大好きだったアーティストのライブチケットだった。。

「これを...俺と?」

そう聞くと、美江は小さく頷く。

「二人で...?」

「一応...。」

確かに日奈美と二人で行かせてよく分からん奴にナンパされたら溜まったもんじゃないしな!

ひーちゃんの笑顔は俺が守る!

「シスコンキモイ...。 」

「おうふ...。」

何この子も心読めるのかしらん...?

「そ...それで?ど、どうするん?」

「行くよ。

近い内にバイト代も入るしな。

幾らだ?」

「良い..悠君そろそろ誕生日じゃろ...?」

「覚えてたのか...。」

「ね、念の為。」

「でもそれにしたって良いのかよ?

結構するだろ?こう言うの..。」

「別に良い...私が行きたくて買ったんじゃし...。」

「ならその...ありがとう。」

「ん...じゃ...じゃあ用も済んだし私は帰るけぇ...。」

「え?せっかく来たんだから食べていけよ?

店長の作ったパフェ、美味いんだぜ?」

「そ、それはまたにする...。

今はその…一人じゃし...。」

あぁね...。

「じゃあその...た、楽しみに...しとるけぇ...。」

「おう。」

「あ、あと...バイト...が、頑張って...!」

そう言って照れ臭そうに走り去る美江。

「変装は解いてから行けよー。」

「わ、分かっとるし!」

そう言って変装を解いて急いで走っていく美江。

楽しみにしとる...か。

まだ友達にも満たない間柄らしいが...。

そんな風に思ってもらえる位には、心を許してくれてるって事なんだよな...。

それにしてもやっぱ美江と関わるとなんと言うかほっこりすると言うか癒されるんだよなぁ。

実際付き合ってた時もそうだった。

遠距離ではあったけど会えば疲れもストレスも気が付けば忘れているような安心感が彼女には確かにあった。

それを...俺は壊してしまったんだ。

あんなに優しかった彼女を、冷たく傷付けたのは他でも無い俺だ。

もう二度とあんな思いをさせたくない。

彼女にはいつだって笑っていてほしい。

このチャンスがそのきっかけになる事をただ願う。

「俺も楽しみだな...。」

そう一度呟いてから、俺はゆっくりと休憩室に戻るのだった。














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