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手紙
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――三年前のこと。
中学二年生の秋、夕方自室でヘッドフォンをしてDAWを操作していると突然肩が叩かれた。
「アヒャア!!」
「わぁ!!」
驚いて女子力皆無の悲鳴を上げてしまった。
振り返ると肩を叩いたのはマリだった。
「なに!? いつからいたの?」
「五分くらい前かな?」
「来てるなら言ってよ! 心臓止まるかと思ったじゃん!」
「言ったよ! ノックもしたし! 全然聞こえてないんだもん! 一回おばさんに『本当に部屋にいますか』って聞きに行ったよ! ドア開けたのもおばさんだよ!」
マリにまくし立てられる。これは私が悪かった。
「あー、そうなの。それはゴメン」
「もーユカの驚き方に驚いて倒れるところだった」
そういえばマリは私も悲鳴を上げてたな。
「ゴメンて」
「何してるの? ソレ」
マリがDAWが映し出されているモニターを覗き込んでいた。
趣味で作曲していることがバレたら恥ずかしいので誤魔化そう。
「内緒」
「なんでー? いいじゃん。貴様ご所望の宿題の答えがいらんのか」
「それは卑怯だぞ!」
まさかの人質作戦だった。マリには今日勉強を教えて欲しいとお願いしていた。
マリは右人差し指で椅子に座っている私を指さし、見下しながら言った。
「ガハハ! バカめ! もとより見せてやるつもりなど無いわ!」
「なんだってー!?」
「一から十まで教えてくれる!懇切丁寧にな!!」
マリは二人の間で流行っていた漫画の魔王のセリフをパロっていた。
「やっさしいこの魔王」
「だからいーじゃん、教えてよー」
急に素に戻って右手で肩を揺さぶられる。
「えー」
「誰にも言わないからさぁ」
「……うーん……ホント? 絶対内緒にしてくれる?」
「絶対。約束する」
まぁマリなら絶対バカにしたりしないし、内緒にしてくれる確信があった。
「じゃあ……これはDAWっていって、作曲するソフトみたいなもん。作曲してた」
「えぇー!? そんな必殺技持ってたの!? 凄いじゃん! 聞かせて!」
マリは目を見開いて、その中のワクワクを見せつけて来た。
けど聞かせるのは嫌だった。
「やだ恥ずかしい」
「せっかく作ったんなら聞いてもらわないと勿体ないじゃん!」
「私は無人島に行っても作曲を続けるよ」
「勇者よ、捻くれた賢者みたいなことを言うでない」
漫画の勇者のセリフをパロった訳ではないけど、勇者役にされた。
マリはグイグイ迫りながら続けた。
「誰にも聞かせたこと無いの?」
「無いよ」
「じゃあ私が一番だ!」
喜びのニコニコ顔を向けられる。「聞かせる」なんて言ってないのに。
「いや、恥ずかしいからイヤだって」
「作曲してることは聞いたんだからもうよくない? 毒を食らわば皿までだよ」
「それ使い方あってる?」
「多分」
マリは頭がいいけどたまに抜けている。
いや、なんとなく使い方はあってるような気はするけど。
溜め息をつく。
「はぁー、まぁいいや。魔王様にはお世話になるし」
「やったぁ!」
マリは軽いガッツボーズをして喜ぶ。
宿題料以上にご満足いただけそうだ。
そう思いながら一番最近作った曲のインストを再生する。
すぐに反応された。マリは目を見開いて驚いていた。
「これユカが作ったの!?」
「うん……」
「プロじゃんプロ!」
「言い過ぎ、こんなの全然だよ」
「そんなことないって! ホントに凄いよ!」
ハイテンションで褒められてメチャメチャ恥ずかしくなってきた。
その後はニコニコしながら聞き入ってくれた。
曲が終わるとハイテンションのまま言われた。
「いやホント凄い! 大好きだよこの曲! CD売って!」
「褒めすぎ」
「そんなことないって!そうだクラスの皆に聞いてもらおうよ!」
「絶対ヤダ」
「ぶー!!」
唇を尖らせたブーイングを受けたが冗談じゃない。
「こんなことバレたら村八分にされる」
「いやされないし。世界の作曲者さんに謝って」
早くこの話題を終わらせるべく頭を下げた。
「すいませんでした」
「素直。でも村八分にされても大丈夫だよ」
「いや大丈夫じゃないでしょ」
そう言うと、マリは満面の笑顔で言った。
「大丈夫、ファン一号はなにが起きてもずっとファンなのだ」
中学二年生の秋、夕方自室でヘッドフォンをしてDAWを操作していると突然肩が叩かれた。
「アヒャア!!」
「わぁ!!」
驚いて女子力皆無の悲鳴を上げてしまった。
振り返ると肩を叩いたのはマリだった。
「なに!? いつからいたの?」
「五分くらい前かな?」
「来てるなら言ってよ! 心臓止まるかと思ったじゃん!」
「言ったよ! ノックもしたし! 全然聞こえてないんだもん! 一回おばさんに『本当に部屋にいますか』って聞きに行ったよ! ドア開けたのもおばさんだよ!」
マリにまくし立てられる。これは私が悪かった。
「あー、そうなの。それはゴメン」
「もーユカの驚き方に驚いて倒れるところだった」
そういえばマリは私も悲鳴を上げてたな。
「ゴメンて」
「何してるの? ソレ」
マリがDAWが映し出されているモニターを覗き込んでいた。
趣味で作曲していることがバレたら恥ずかしいので誤魔化そう。
「内緒」
「なんでー? いいじゃん。貴様ご所望の宿題の答えがいらんのか」
「それは卑怯だぞ!」
まさかの人質作戦だった。マリには今日勉強を教えて欲しいとお願いしていた。
マリは右人差し指で椅子に座っている私を指さし、見下しながら言った。
「ガハハ! バカめ! もとより見せてやるつもりなど無いわ!」
「なんだってー!?」
「一から十まで教えてくれる!懇切丁寧にな!!」
マリは二人の間で流行っていた漫画の魔王のセリフをパロっていた。
「やっさしいこの魔王」
「だからいーじゃん、教えてよー」
急に素に戻って右手で肩を揺さぶられる。
「えー」
「誰にも言わないからさぁ」
「……うーん……ホント? 絶対内緒にしてくれる?」
「絶対。約束する」
まぁマリなら絶対バカにしたりしないし、内緒にしてくれる確信があった。
「じゃあ……これはDAWっていって、作曲するソフトみたいなもん。作曲してた」
「えぇー!? そんな必殺技持ってたの!? 凄いじゃん! 聞かせて!」
マリは目を見開いて、その中のワクワクを見せつけて来た。
けど聞かせるのは嫌だった。
「やだ恥ずかしい」
「せっかく作ったんなら聞いてもらわないと勿体ないじゃん!」
「私は無人島に行っても作曲を続けるよ」
「勇者よ、捻くれた賢者みたいなことを言うでない」
漫画の勇者のセリフをパロった訳ではないけど、勇者役にされた。
マリはグイグイ迫りながら続けた。
「誰にも聞かせたこと無いの?」
「無いよ」
「じゃあ私が一番だ!」
喜びのニコニコ顔を向けられる。「聞かせる」なんて言ってないのに。
「いや、恥ずかしいからイヤだって」
「作曲してることは聞いたんだからもうよくない? 毒を食らわば皿までだよ」
「それ使い方あってる?」
「多分」
マリは頭がいいけどたまに抜けている。
いや、なんとなく使い方はあってるような気はするけど。
溜め息をつく。
「はぁー、まぁいいや。魔王様にはお世話になるし」
「やったぁ!」
マリは軽いガッツボーズをして喜ぶ。
宿題料以上にご満足いただけそうだ。
そう思いながら一番最近作った曲のインストを再生する。
すぐに反応された。マリは目を見開いて驚いていた。
「これユカが作ったの!?」
「うん……」
「プロじゃんプロ!」
「言い過ぎ、こんなの全然だよ」
「そんなことないって! ホントに凄いよ!」
ハイテンションで褒められてメチャメチャ恥ずかしくなってきた。
その後はニコニコしながら聞き入ってくれた。
曲が終わるとハイテンションのまま言われた。
「いやホント凄い! 大好きだよこの曲! CD売って!」
「褒めすぎ」
「そんなことないって!そうだクラスの皆に聞いてもらおうよ!」
「絶対ヤダ」
「ぶー!!」
唇を尖らせたブーイングを受けたが冗談じゃない。
「こんなことバレたら村八分にされる」
「いやされないし。世界の作曲者さんに謝って」
早くこの話題を終わらせるべく頭を下げた。
「すいませんでした」
「素直。でも村八分にされても大丈夫だよ」
「いや大丈夫じゃないでしょ」
そう言うと、マリは満面の笑顔で言った。
「大丈夫、ファン一号はなにが起きてもずっとファンなのだ」
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