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作戦と敬語
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翌日のお昼休み、先生に部活を続けることを報告しに行った。
夏休み明けまで、と期限を切ってもらったにも拘らず、夏休みに入る前に結論を変えたことは恥ずかしかったけど、先生はにこやかに聞いてくれた。
そして放課後、皆で部室のコタツを囲んでいた。
チハルが切り出す。
「ユカリさんも復帰しましたし、今日から本格的にリコルリエ再始動します!」
「その節は大変ご迷惑をお掛け致しました」
「腰低っ」
コタツに額を付けて謝るとマリにツッコまれた。
「もう少しで縛り上げて引きずり出すとこだったぞ」
ニヤついているサナエさんが言うと、シオリがツッコむ。
「短気」
「うっせ」
「気にしないで下さい! 復帰してくれたので問題ありません!」
チハルの言葉にシオリが強く頷いた。チハルは続ける。
「それで今後ですが、シオリの分析を基に、戦略を練っていきたいと思っています」
「分析って、シオリちゃんが言ってた『ガルテナはファンが多い方が有利』ってやつ?」
マリが問いかける。
お昼休みに中庭でシオリが伝えてくれた予選敗退の分析、皆にも報告してあるというのは本当だったらしい。別に疑っていた訳じゃないけど。
「そう。つまり、ファンを増やしていこうということです」
「具体的には?」
「九月から来年の六月まで毎月一日に動画を投稿するようにしましょう。ガルテナの予選登録は必ず一日開始なので、そちらにもいい影響が期待できます」
「曲は?」
「毎月新曲は無理だと思うので、既存の曲を使わせてもらおうと思います」
曲のこととなれば静かに聞いている訳にはいかない。
チハルに視線を向け提案する。
「用意できるから私の曲使って貰えないかな」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、今まで作った曲が十三曲あるからそれを使って欲しい」
「分かりました! 是非お願いします!」
「了解。ちょっと手直しして用意できたらすぐ渡す」
ネットに投稿している曲を使って貰おう。ユーザー情報にリコルメンバーであることを書いておけばいい。
公平な評価が欲しいならまたユーザーを作ればいいだけのこと。
そうだ、チハルこそ笑顔で了承してくれたけど、皆はどうだろう。
「っていうか毎月新曲を覚えなきゃいけない皆の方がキツイと思う。いいかな?」
「当然!」
マリが食い気味に即答してくれた。私が映る目には闘志の炎も映っていた。
それにシオリも強く頷いてくれた。
頬杖をつきながらニヤついていたサナエさんも私を見ていた。
「マシになったな」
「ども」
軽く頭を下げた。同じクリエイター同士、今までの私に足りなかった物を見抜かれていた気がする。
チハルが話を進める
「では曲に関しては決定ですね。次は一発物ですが文化祭です。文化祭でステージを借りて実戦経験を積みたいと思います」
「いいと思う! 楽しみだねー!」
「人前でやるのか……緊張するな……」
「それに慣れるためですよ」
「ガクブルしてる奴がなにを偉そうに」
ビビった私に言うシオリをサナエさんが笑った。
そうだそうだ。予選動画撮影の時も結果発表の時も、私はシオリ程震えていなかったぞ!
とは言わなかった。どんぐりの背比べになるから。
「なにか他にある人はいますか?」
「SNSやろう。ユカリとシオリに可愛い服着せてアップすればフォロワー爆上げ間違いなしだ」
「いいかも!!」
邪悪なニヤつきになったサナエさんの提案にマリが乗った。マリは完全に悪乗り。
「「嫌です」」
シオリとハモってしまった。二人でジロリとサナエさんを睨むと、とても嬉しそうな顔をされた。
しまった、忘れてたけどこの人変態だった。
「私も反対です。SNSよく分かりませんけど無用なトラブルが怖いっす」
「ちっ、お堅い連中だな」
サナエさんの舌打ちと同時に、多数決で否決が決まった。
「まとめますね。一つ目は毎月の動画投稿、二つ目は文化祭。他に何か案のある人はいますか?」
皆は沈黙で案が無いことを伝えると、チハルが言った。
「ではこの二つをやっていくことにします。なにか思いついたら遠慮なく言って下さい」
「あのよぉ、敬語止めよーぜ」
サナエさんが唐突に提案した。
さっきまでのニヤつきは消え、真面目な提案のように思えた。
チハルがサナエさんに視線を向ける。
「突然ですね」
「もう私等の間で遠慮も気遣いもいらんだろ」
今度は私が返す。
「サナエさん、遠慮や気遣いしてました?」
「私はしねーよ。お前らだよ」
問いかけるとアハハっと笑われた。頼むから少しはしてくれ。
サナエさんは続ける。
「よし、いっちょ多数決でもしてみるか。敬語反対派は挙手!」
サナエさんはピシッと挙げたが、他は誰も挙げなかった。
すると、サナエさんはキレた。
「あーそうですか!! お前ら一生敬語でいるんですねぇ!!」
「変なキレ方しないで下さいよ……」
「サナエさん初敬語だね」
「ここまで品性を感じない敬語もあるんですね」
シオリは敬語で遠慮の無いツッコミを入れた。
「あの、私としては先輩方がよければ、という感じなんですが……」
「私もー」
チハルが控えめに言うとマリも同意した。
「お、勝ちの目が出てきたな。じゃあニ、三年限定で多数決だ。下級生のタメ口が許せない奴は挙手!」
ニ、三年と言っても三年はサナエさんだけで、実質二年のマリと私に対する意思確認だった。
私は別に気にしない。むしろチハルとシオリであればタメ口は嬉しいかもしれない。
そう思って手を挙げなかった。マリも挙げない。
それを見てサナエさんはまたニヤついた。
「よし! 勝勢だ! じゃあ次は一、ニ年限定だ! 上級生がいいと言うならタメ口でいいという奴は挙手!」
全員挙げた。なぜか三年のサナエさんまで。サナエさんはガハハと笑った。
「決まりだな! 今日から敬語は禁止だ!」
「禁止になるんですか?」
「そうだ。チハルは今ので罰。あとでコブラツイスト」
「えぇ……罰ありなの……」
チハルは問いかけたら罰を受けることになり唖然としていた。
しかし、今までずっとサナエさんには敬語だったのでいきなり言われても違和感がある。
「なんか慣れない……」
「一週間もすれば慣れるって! はっはっは! 当然シオリもタメ口だからな!」
シオリは誰にでも敬語だった。なぜか同学年のチハルにまで。
「部の決定と方針であれば従うよ」
「お、即適用か」
シオリは満足そうなサナエさんを無視して皆に言った。
「でも皆、気を付けてね。そこの先生にまでタメ口な粗暴な人みたいにならないように」
「「はーい」」
マリは笑顔で、チハルは目を丸くして答えた。シオリが最上級生のようだ。
ちなみにサナエさんは先生に対してもタメ口だ。私もそれはどうかと思っていた。
「言ってくれんじゃねーの、チビッ子」
サナエさんはニヤニヤしながら右手をシオリの頭に伸ばし、それをシオリの両手が防ぐ。
いつもの右手対左手が始まり、久しぶりに参加した軽音部会議は幕を閉じた。
夏休み明けまで、と期限を切ってもらったにも拘らず、夏休みに入る前に結論を変えたことは恥ずかしかったけど、先生はにこやかに聞いてくれた。
そして放課後、皆で部室のコタツを囲んでいた。
チハルが切り出す。
「ユカリさんも復帰しましたし、今日から本格的にリコルリエ再始動します!」
「その節は大変ご迷惑をお掛け致しました」
「腰低っ」
コタツに額を付けて謝るとマリにツッコまれた。
「もう少しで縛り上げて引きずり出すとこだったぞ」
ニヤついているサナエさんが言うと、シオリがツッコむ。
「短気」
「うっせ」
「気にしないで下さい! 復帰してくれたので問題ありません!」
チハルの言葉にシオリが強く頷いた。チハルは続ける。
「それで今後ですが、シオリの分析を基に、戦略を練っていきたいと思っています」
「分析って、シオリちゃんが言ってた『ガルテナはファンが多い方が有利』ってやつ?」
マリが問いかける。
お昼休みに中庭でシオリが伝えてくれた予選敗退の分析、皆にも報告してあるというのは本当だったらしい。別に疑っていた訳じゃないけど。
「そう。つまり、ファンを増やしていこうということです」
「具体的には?」
「九月から来年の六月まで毎月一日に動画を投稿するようにしましょう。ガルテナの予選登録は必ず一日開始なので、そちらにもいい影響が期待できます」
「曲は?」
「毎月新曲は無理だと思うので、既存の曲を使わせてもらおうと思います」
曲のこととなれば静かに聞いている訳にはいかない。
チハルに視線を向け提案する。
「用意できるから私の曲使って貰えないかな」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、今まで作った曲が十三曲あるからそれを使って欲しい」
「分かりました! 是非お願いします!」
「了解。ちょっと手直しして用意できたらすぐ渡す」
ネットに投稿している曲を使って貰おう。ユーザー情報にリコルメンバーであることを書いておけばいい。
公平な評価が欲しいならまたユーザーを作ればいいだけのこと。
そうだ、チハルこそ笑顔で了承してくれたけど、皆はどうだろう。
「っていうか毎月新曲を覚えなきゃいけない皆の方がキツイと思う。いいかな?」
「当然!」
マリが食い気味に即答してくれた。私が映る目には闘志の炎も映っていた。
それにシオリも強く頷いてくれた。
頬杖をつきながらニヤついていたサナエさんも私を見ていた。
「マシになったな」
「ども」
軽く頭を下げた。同じクリエイター同士、今までの私に足りなかった物を見抜かれていた気がする。
チハルが話を進める
「では曲に関しては決定ですね。次は一発物ですが文化祭です。文化祭でステージを借りて実戦経験を積みたいと思います」
「いいと思う! 楽しみだねー!」
「人前でやるのか……緊張するな……」
「それに慣れるためですよ」
「ガクブルしてる奴がなにを偉そうに」
ビビった私に言うシオリをサナエさんが笑った。
そうだそうだ。予選動画撮影の時も結果発表の時も、私はシオリ程震えていなかったぞ!
とは言わなかった。どんぐりの背比べになるから。
「なにか他にある人はいますか?」
「SNSやろう。ユカリとシオリに可愛い服着せてアップすればフォロワー爆上げ間違いなしだ」
「いいかも!!」
邪悪なニヤつきになったサナエさんの提案にマリが乗った。マリは完全に悪乗り。
「「嫌です」」
シオリとハモってしまった。二人でジロリとサナエさんを睨むと、とても嬉しそうな顔をされた。
しまった、忘れてたけどこの人変態だった。
「私も反対です。SNSよく分かりませんけど無用なトラブルが怖いっす」
「ちっ、お堅い連中だな」
サナエさんの舌打ちと同時に、多数決で否決が決まった。
「まとめますね。一つ目は毎月の動画投稿、二つ目は文化祭。他に何か案のある人はいますか?」
皆は沈黙で案が無いことを伝えると、チハルが言った。
「ではこの二つをやっていくことにします。なにか思いついたら遠慮なく言って下さい」
「あのよぉ、敬語止めよーぜ」
サナエさんが唐突に提案した。
さっきまでのニヤつきは消え、真面目な提案のように思えた。
チハルがサナエさんに視線を向ける。
「突然ですね」
「もう私等の間で遠慮も気遣いもいらんだろ」
今度は私が返す。
「サナエさん、遠慮や気遣いしてました?」
「私はしねーよ。お前らだよ」
問いかけるとアハハっと笑われた。頼むから少しはしてくれ。
サナエさんは続ける。
「よし、いっちょ多数決でもしてみるか。敬語反対派は挙手!」
サナエさんはピシッと挙げたが、他は誰も挙げなかった。
すると、サナエさんはキレた。
「あーそうですか!! お前ら一生敬語でいるんですねぇ!!」
「変なキレ方しないで下さいよ……」
「サナエさん初敬語だね」
「ここまで品性を感じない敬語もあるんですね」
シオリは敬語で遠慮の無いツッコミを入れた。
「あの、私としては先輩方がよければ、という感じなんですが……」
「私もー」
チハルが控えめに言うとマリも同意した。
「お、勝ちの目が出てきたな。じゃあニ、三年限定で多数決だ。下級生のタメ口が許せない奴は挙手!」
ニ、三年と言っても三年はサナエさんだけで、実質二年のマリと私に対する意思確認だった。
私は別に気にしない。むしろチハルとシオリであればタメ口は嬉しいかもしれない。
そう思って手を挙げなかった。マリも挙げない。
それを見てサナエさんはまたニヤついた。
「よし! 勝勢だ! じゃあ次は一、ニ年限定だ! 上級生がいいと言うならタメ口でいいという奴は挙手!」
全員挙げた。なぜか三年のサナエさんまで。サナエさんはガハハと笑った。
「決まりだな! 今日から敬語は禁止だ!」
「禁止になるんですか?」
「そうだ。チハルは今ので罰。あとでコブラツイスト」
「えぇ……罰ありなの……」
チハルは問いかけたら罰を受けることになり唖然としていた。
しかし、今までずっとサナエさんには敬語だったのでいきなり言われても違和感がある。
「なんか慣れない……」
「一週間もすれば慣れるって! はっはっは! 当然シオリもタメ口だからな!」
シオリは誰にでも敬語だった。なぜか同学年のチハルにまで。
「部の決定と方針であれば従うよ」
「お、即適用か」
シオリは満足そうなサナエさんを無視して皆に言った。
「でも皆、気を付けてね。そこの先生にまでタメ口な粗暴な人みたいにならないように」
「「はーい」」
マリは笑顔で、チハルは目を丸くして答えた。シオリが最上級生のようだ。
ちなみにサナエさんは先生に対してもタメ口だ。私もそれはどうかと思っていた。
「言ってくれんじゃねーの、チビッ子」
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