ガルテナ ~私の一番の音楽~

茂庭

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夢の淵で

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 それから皆とお喋りをした。たった九日のサボりでも喋るネタは積もっていた。
下校時刻になり、暗くなって来たので名残惜しいが解散になる。

 それでもマリとは同じ帰り道。
手を繋いできてちょっと恥ずかしかったけど、今日は離す気になれなかった。
強く握り返して歩いた。

 家の分かれ道である、いつもの待ち合わせ場所に着く。
マリと歩くとあっという間。もっと家が遠くてもよかった。
手を離したくなかった。マリも同じだったと思う。繋いだままその場で話し込んでいると、あっという間に暗くなってしまった。
それでも流石に帰らなければいけないので提案した。

「あのさ、今日うち泊まりに来ない?」
「うん! 行く行く! ご飯食べてお風呂入ったらすぐ行くね!」

 マリは二つ返事で答えてくれた。
二年生になってからは部活が忙しくて少なくなっていたけど、泊りに来ることはよくあるので親も了承してくれる確信があった。
翌日が学校でも家が近いからどうとでもなる。
離れるのは寂しいけど、我慢して手を離した。

 帰った後、急いで夕飯を食べてお風呂から上がると、マリが来た。丁度いいタイミング。

 部屋に上がってもらう。
いつもはジャンケンで負けた方が床に来客用、と言ってもほぼマリが来た時専用になっている布団を敷いて寝る。
けど、今日は二人でベットに向かい合って寝て、手を繋ぎながら話をしていた。
シャンプーのいい匂いがするマリが言った。

「私ね、ユカに嫌われちゃったかと思った」
「あんなに怒鳴りつけちゃったらね……反省します……」

 部室で手を振り払った時のことを思い出す。アレは酷かった。

「ううん、アレは私が悪かったと思う。それよりも『休む』ってメッセージ」
「え」
「あれ凄いショックだった。泣いちゃうところだった」
「あー、そっか、先に距離を取るようなメッセージを送ったのは私か。でも私も『先に行く』って凄いショックだったよ」
「ごめんね。でもアレ徹夜で考えた苦肉の策だったんだよ」
「苦肉の策?」
「うん、これ以上嫌われないように、仲直りのいい方法が思いつくまでの時間稼ぎ」
「そうなの?」
「なんか謝って済む問題じゃなかったでしょ?」
「だね」
「結局いい方法は思いつかなくて、ユカ頼みになっちゃったけど」
「アハハ」
「なんで笑うの?」
「いや、なんか同じようなこと考えてたから。嫌われちゃったと思ってたのも同じだし」
「私がユカのこと嫌う訳ないじゃん」
「私がマリのこと嫌う訳ないじゃん」
「このシンクロ率、やっぱり親友だな」

 そう言ってマリは額を押し付けてきて笑った。
夢でマリに励まされたことは黙ってよう。なんか恥ずかしいし。

 そんな会話をしながら時間は過ぎて、まだ十時にもなっていないけど、瞼が重くなってきた。
マリが握る手を少しだけ強めた。

「眠そうだね」
「最近寝不足だったから、急に来ちゃった……」
「もう寝よっか」
「うん……おやすみ……」
「おやすみ」

 微笑みながら優しく言われた。
その微笑と、声と、手の温もりに安心して、意識が遠のいていく。

 夢の淵で、笑顔で演奏している皆が浮かんできた。
今度は、私が皆の力になりたい。

 そう思って、眠りに落ちた。久しぶりにとても気持ちよく眠れた。
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