ガルテナ ~私の一番の音楽~

茂庭

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これからも

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 翌日の早朝、雲一つない晴天。不思議と寒さは気にならない。
今日は学校なので早めにシオリの家を出た。ギグバッグを背負うマリと二人でくだらない雑談をしながら帰路を辿る。トロフィーは部室に置くことになったので、シオリの家に置いて来た。なので私はリュック一つ。

 家に大分近づき、大事な場所に近づいてきた。自然に笑みがこぼれてしまう。

「丁度この辺だね」
「なにが?」

 マリが問いかけてくる。特別意識していなかった様子。
それはそうだろう。こんな住宅街のいくらでもありそうな路地、誰も特別に思わない。でも、私にはとても特別な場所。

「マリが私の曲を『歌わせて』って言ったの」
「あぁ、うん、そうだね」
「あれがなかったらあんな経験できなかったよ」

 喜びの興奮で一瞬の出来事のように思えたけど、ガルテナで優勝した瞬間は絶対に忘れない。
皆で抱きしめ合ったこと。ステージ上で視界がキラキラしたこと。

「私もこんなになるなんて思わなかった! ビックリだね!」

 マリはアハハっと笑った。
 私は少し前に出て、マリがあの時立っていた場所に立ち、振り返ってマリの目を見た。

「うん、だから、お礼言わせて」
「そんなのいいって。昨日も言ってたじゃん」

 お互い立ち止まって微笑あう。

「ううん、違う。昨日のお礼とは別のお礼」
「別のお礼?」

 マリは思い当たらなそうに不思議な顔をした。

「うん、『歌わせて』って言ってくれた後も、いや、ずっと前から、ずっと私を信じてくれてありがとう。私が私を信じられていなかった時も、マリが信じてくれたお陰で助かったよ」

 少し息を吸って、続けて言った。

「だから、もう数えきれないくらいいっぱい、ありがとう」

 素直な気持ちだった。昨日演奏に込めた想い。きちんと伝えておきたかった。
それを聞いたマリは青空を見上げた。

「……なにそれ、なんか泣かせようとしてない?」

 どうやら涙腺に訴えかけるものがあったようだ。そんなつもりは無かったけど。
冗談めかして言ってみる。

「いくらでも拭いてやるぜ」
「よせやい、ギリ泣かねーよ」

 マリは私に視線を戻し、ニコリとした。目には涙が溜まっていたけど流れることはなかった。
なんとなく気恥ずかしくなってきたので、視線を逸らして話を変える。

「ま、泣かれても困るか。これで終わりじゃないし」

 私がそう言うと、マリは近づき私の左手を右手で取って言った。

「だね! 夏テナリベンジがあるし!」
「うん」

 暖かい手をキュッと握り、頷いて返事をする。手を繋いだまま帰路を辿った。




 この一年、色々なことがあった。楽しい思い出ばかり。一生大事にしたい仲間も出来た。それらを作ってくれたのは音楽。
音楽を好きな理由がまた増えた。音楽は私達を繋いだキッカケであり、絆。
これからも沢山の素敵なことをもたらせてくれる予感がする。その確信めいた予感に心が震え、頬が緩んだ。

 私達の音楽はこれからも続いていく。
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