便秘でトイレに篭っていたら、第十四柱として異世界に召喚されました

駄犬

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第二部

疑問はこんこんと

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 イフラム国は速やかに対処へ動く。都市部に身を置く魔術師を迎撃の為に配置し、力の集約を図った。しかし、その足は止まることを知らず、皆一様に思い浮かべるのである。平らに踏み潰される地表の荒涼たる風景を。旗色の悪さを共有した魔術師は、それを囲むように手を広げ、前代未聞の巨大な結界を形成する。そんな中で、召喚士は悟るのであった。浮世離れした退廃的な気風が偶さか世界の理を破ったのではなく、朴訥とした確信が背中を押し、目を疑うような光景の源泉となったことを。

 夢見心地だと言われがちな魔術師の存在は、期せずして本来交わるはずがなかった謎の生物の謁見に繋がった。ならば、これを鎮めるのも魔術師でなければならない。逆立ちしても敵わない存在を前に、悪魔の「召喚」を決意する。閉塞した空気感に風穴を開けるはずだと、半ば自暴自棄な判断をもとに第一柱である「バエル」の召喚を敢行する。だがしかし、召喚に際してバエルの炎が牙を剥き、貴重な召喚士を五人も失うことに加え、城内の舵取り役でもあったことから、バエルの武力行使を前に平伏する他なかった。

「いやぁー、親しみを覚える顔をしているけど、俺にあらぬ容疑をかけて城での立場を台無しにした張本人なんだろう?」

 不敵な笑みを浮かべるバエルの態度に抵抗するように、俺は軽薄な口調で問い詰めた。

「もうあの城へは戻る必要はない」

 拠り所を奪い、新たに与える古典的な支配の図式をそう易々と受け入れられるはずがなかった。ただそれを撥ね付けるほどの力は有していないことも知っている。目の前にしているのは「第一柱」だ。

「バエル、どうして他の柱を召喚しないんだ?」

 今際の際に吐いたトラビスの一言で、点と点が繋がるような感覚が迸り、ベレトに齷齪と推測を披露した。その答え合わせをバエルの口から直接してもらい、現状を正確に把握したかった。

「召喚にとって求められる想像力と知見。これがなかなか厄介でね。はっきり言って人材不足なんだよ」

 俺が思っていた通り、バエルは自分の牙城をより強固にしたいと思っていながらも、「召喚」という稀有な事象に手をこまねいていたのだ。

「ただね、悪魔を呼び出すことは恐らく、それほど高いハードルではない。一見、彼方と此方の世界は似て非なるが、共通して存在する物もあった。それは遺物と呼ばれていて」

「ソロモン」

 ベレトが割って入り、バエルの講説の補助を担うと、互いに皮肉めいた微笑を交換した。

「悪魔とは、含蓄を含んだ物語に配置された人が創造する役者に過ぎない。だが、その想像力は召喚を成功させる大きな要因となっている。記述される悪魔に即した力を備えた身体に再構成され、召喚の陣から人は呼び出される」

 レラジェという悪魔の名を冠した存在として異世界に召喚されたカラクリを説明され、俺はふと疑問が湧く。ベレトはバエルから身を守る為に俺を召喚したと言った。そこに嘘偽りがないのならば、どうしてバエルは今この場で協力を求めてくる。友好的なバエルの態度に納得がいかなかった。

「そんな君達の力を望んで止まなかった」

「どうして?」
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