便秘でトイレに篭っていたら、第十四柱として異世界に召喚されました

駄犬

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第四部

繋がりを求めて

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「全くもって異論はないですよ」

 確かに俺は、取っ掛かりを見つけて話し出す器用さに欠け、往々にして不首尾に終わる。だからこそ、受け身に回るのが常となり、顔色を窺わせる立場になりがちだ。俺が相手の機嫌に阿る際、それはいつだって、有事に遭遇したことを物語り、苦虫を潰すはめになる。今のように。

「話が逸れたな」

 不出来な愚息に話の腰が折られた親の苦労を白々しく滲ませるバエルは、不意を突かれて伸びた背筋を腰掛けたソファーの背もたれへ深く座り直し、咳払いを一つする。

「この国の主要都市として数えられ、都市経済の先達を行くウォードという街で、なかなか奇妙な事件が起きているようでね」

 その語り口から連想させられるアイの顔は、巧まずして浮かび上がった訳ではなく、よもや確信めいたものとして像を結んだ。

「どのような?」

 俺は半ば前のめりになりながら、バエルの口から聞き出そうとする。誘蛾灯に群がる蛾の習性をほくそ笑む、イヤらしい口端の緩みが嫌悪感を抱かせるものの、なりふり構っていられない。

「また“アレ”を切り取られる事件が立て続けに起きているみたいだ。ウォードでね」

 俺は思わず息を飲んだ。バエルの見通しと合致する、手ぐすね引いて待つ思惑が透けて見え、おいそれと食い付いていいものか。疑問は尽きないが、トラバサミが潜む森の中に飛び込むつもりで、その街に赴くしかないだろう。

「本当に俺達を罠に掛けるつもりなんですね」

「ベレトからすれば絶好の機会だろう?」

 尋常ならざる問題の解決に奔走する魔術師の願いなどそっちのけで、異世界に召喚された者同士が互いを天敵と見なし、排斥の為に動く。悪魔の召喚は事態を好転させる一手とはなり得ず、禍根を引き起こす存在を新たに増やしただけであった。人口が密集する都市を舞台に、ベレトは大立ち回りを演じるつもりだろう。俺はベレトの打倒を目指す気はさらさらない。アイと日浦を無事に保護することだけが、至上命題だ。

「絶対に二人を連れ戻します」

 甲斐性がない俺の唯一にして無二の関係に水を差されたのだ。全くもって度し難いベレトの所業に対して、一心不乱に取り組む所存であり、一期一会の出会いをこよなく愛する博愛主義を標榜するつもりはない為、その過程で出る犠牲者諸君には覚悟してもらいたい。

「いや、三人だ」

 バエルの本分からすれば、ベレトもまた貴重な駒であることには変わりない。蜂起に身を投じる者を抱きこむことで、より強固な結束を結ぼうとしているのだ。それは、信頼という名のストックホルム症候群に違いなく、抜け目ないバエルの目論みは英雄的思想から乖離し、利己的な欲求が全面に出ている。

「ベレトが素直に従ってくれるとは思いませんけど」

「信じてあげることさ。そうすれば、誰とだって分かり合える」
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